ビデュリオン/仕事に前向きな人の糖尿病治療に

週一回の注射で持続的な血糖コントロール
世界初の週一回投与2型糖尿病治療薬

▼ビデュリオンとは?

持続性エキセナチド注射剤「ビデュリオン」は、世界初の週一回投与の2型糖尿病治療薬です。GLP-1受容体作動薬と呼ばれる種類の注射剤ですが、インスリン代替薬ではありません。インスリン製剤とは違って細かな用量調節が不要のため、投与が簡便というメリットがあります。“食事療法・運動療法に加えてスルホニルウレア薬、ビグアナイド系薬及びチアゾリジン系薬による治療で十分な効果が得られない場合”に使用されています。

「ビデュリオン」の最大の特徴は“週一回投与”です。注射の必要回数が劇的に減るため、患者の負担を軽減できるとともに、特に投与開始初期は通院での注射も可能となることから、有用性が高いと期待されています。

▼糖尿病とは?

糖尿病には1型と2型が存在します。1型糖尿病は、膵臓に存在するβ細胞と呼ばれるインスリンを分泌する組織が、主に自己免疫によって壊れてしまっている状態の病気です。インスリンが分泌できないため、血糖が高くなってしまいます。基本的にインスリン注射を打って、治療します。「ビデュリオン」は注射剤ですがインスリン注射ではありません。1型糖尿病の患者には、インスリン製剤による速やかな治療が必須です。GLP-1受容体作動薬はインスリン分泌がなければ効きませんので、1型糖尿病には使用しません。

一方で2型糖尿病は、生活習慣や肥満などによってインスリンの効きが悪くこなることで発症する病気です。血糖値を下げる唯一のホルモンはインスリンですが、インスリン以外にも重要な物質として“インクレチン”と総称されるGLP-1があります。GLP-1は食事の摂取が合図となって分泌されるホルモンです。GLP-1は膵臓に作用することによってインスリンを分泌させる働きがあり、これによって血糖値を下げることができます。しかし、GLP-1は酵素DPP-4によってすぐに分解されてしまうという特性があります。「ビデュリオン」は“GLP-1と同じ作用だが、身体で分解されにくい物質”として開発された製剤で、簡単に云うと「ビデュリオン」には“インスリン分泌を間接的に増やす効果”があるということです。

▼治療の基本は、食事・運動療法

2型糖尿病治療では、食事療法、運動療法、薬事療法の3つが基本とされています。薬を使う前にまずは食事の改善や運動療法が試されます。そして、食事療法や運動療法を行っても血糖値の改善が見られない場合に、基礎インスリン製剤やインスリンの効果を高める薬を併用して、血糖をコントロールします。「ビデュリオン」は、長時間に渡ってインスリンの基礎分泌を補う持効型溶解インスリン製剤や、中間型インスリン製剤との併用が可能な医薬品です。つまり、空腹時血糖値を低下させる基礎インスリン製剤と、食後高血糖を改善する「ビデュリオン」を併用し、トータルで血糖値をコントロールするのです。

▼低血糖を起こしにくい

糖尿病治療薬の深刻な副作用として低血糖がありますが、GLP-1受容体作動薬である「ビデュリオン」(有効成分:エキセナチド)は血糖が低い時は機能せず、血糖が高い時のみに効果を発揮するため、低血糖を発症するリスクが比較的少ない薬です。難点は他のGLP-1アナログ製剤と同様、価格でしょうか。1本9千〜1万円程度するので、3割負担で約3千円。最高量で使用した場合、月に6千円程度費用がかかります。併用が基本ですので、これ以外にも費用がいろいろとかかってきます。

▼ビデュリオンとバイエッタの違い

「ビデュリオン」と同じエキセナチド注射剤「バイエッタ」は半減期が短いので1日2回注射が必要です。「ビデュリオン」の登場で「バイエッタ」の使用頻度は減っていますが、それでもそれぞれに特性があるので、上手く使い分けはされているようです。「バイエッタ」は食欲を抑えたいと思う時間帯に薬を効かせることが出来るので、例えば「夜中にラーメンを食べたくなるのを我慢したい」という人に適しています。一方「ビデュリオン」は持続性なので、「いつも漠然と食欲がない」という状況を維持したい人に向いています。

▼ビデュリオンとトルリシティの違い

同じ週1回投与のGLP-1製剤「トルリシティ」は、「ビデュリオン」より後に登場した注射剤です。後から出ただけあって、いろいろな工夫が施されており、デバイスの大きさ、針の取り付けに違いがあります。「ビデュリオン」は針の取り付けが必要で更に専用懸濁用液で用時懸濁(約80回振る)が必要ですが、「トルリシティ」は針があらかじめ装着されていて、薬を懸濁する必要もないので、そのまま簡単に使えます。また、「ビデュリオン」に比べて「トルリシティ」は針が細く、ほとんど痛みを感じないということです。
保存条件に関しては「ビデュリオン」の方が優秀です。「ビデュリオン」は“冷蔵庫に保管できない場合は4週間以内に使用すること”とされていますが、「トルリシティ」は“冷蔵庫に保管出来ない場合は2週間以内に使用すること”となっています。

▼GLP-1受容体作動薬市場の動向(2019年9月:追記)

国内のGLP-1製剤市場は、2018年度で380億円程度(薬価ベース)と試算されています。市場は、2017年度から25%ほど伸びています。

売上トップは「トルリシティ」で、市場の60%を占めています。2018年度の売上金額は約231億円で、2019年度は280億円まで伸びると予測されています。

2位の「ビクトーザ」は130億円で追いかけていますが、その差は年々広がっている状況です。3位以下の「リキスミア」「バイエッタ」「ビデュリオン」は、あまりぱっとしないという状況です。

GLP-1受容体作動薬はこれまで、“注射する”という煩わしさが障壁になり、売上は限定されたものでした。しかし、針に触れずに簡単に打てる「トルリシティ」が発売されると、糖尿病治療薬に占める割合は約7%まで上昇しました。GLP-1受容体作動薬は、心血管系のリスクを減らす作用なども評価されており、再び脚光を浴びつつあります。

▼広告のキービジュアル

広告のキービジュアルは、これから出張へ向かう男性。空港でタブレットを操作しながら、満面の笑みを浮かべています。“1週間で一度の注射”というコンセプトが具体的にイメージ出来る好感の持てるビジュアルです。“仕事に前向きな人の糖尿病治療に”というキャッチコピーも秀逸。

薬の特徴を、患者が体験するストーリーへ発展させた読み物風の広告に仕上げています。このようなタイプの広告は、製品や特徴を知ってもらうだけが狙いではありません。「使いたい!」と思わせるまでの道筋を作ることで、医療従事者や消費者に対して「ビデュリオン」の価値を伝え、行動を誘発していくという仕組みになっています。


製品名:ビデュリオン皮下注用2mg
一般名:エキセナチド
持続性エキセナチド注射剤/GLP-1受容体作動薬
アストラゼネカ

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