どんな病気でも治せる?/遺伝子組換え医薬品

最近、医薬広告の世界にも、遺伝子組換え医薬品が増えてきました(当サイトでも遺伝子組換えというカテゴリーを作ったくらいです)。良く耳にする“遺伝子組換え製剤(組換えDNA製剤)”って、そもそも何でしょうか? 周辺情報をまとめてみました。

DNA遺伝コードの発見

1953年、ジェームズ・ワトソンとフランシス・クリックが遺伝子を扱う“分子生物学”という高度な研究によって、DNAが生命の遺伝コードであることを発見しました。その後、DNA遺伝コードの解析が続けられ、1970年代の始め頃に遺伝子組換え(組換えDNA)という技術が誕生します。それまでインスリンやホルモンなどの製剤は、多くの手間とコストを掛けて、豚や牛やトカゲといった生き物か人間の遺体から取り出していました。しかし、遺伝子組み換え技術が登場したことによって、割安で大量にインスリンやホルモン剤を製造できるようになったのです。

遺伝子組換え技術とは

遺伝子組換え技術は、遺伝子を細胞に導入し、その特性を発現させる技術のことです。ヒントになったのは、自然界で起こるウイルス感染です。ウイルスが細胞に感染すると、“自分の遺伝子を宿主の細胞に注入する”という現象が起こります。この現象を参考に、その生物が持っていない特性を持たせるため、別の生物から取り出した遺伝子を組み込むことに成功しました。現在、遺伝子組換え技術は有益な物質を大量に生産したり、作物や家畜の改良などにも用いられています。

増える遺伝子組換え医薬品(バイオ医薬品)

最初の遺伝子組み換え技術による医薬品は、ヒトのインスリンで、米国で1982年に承認されました。1986年には最初のワクチンである「B型肝炎ワクチン」が発売されていますが、それ以降、たくさんの遺伝子組み換え製剤が導入されています。糖尿病の治療に必要なインスリンは、これまで豚から取り出したインスリンを使うか、化学反応を駆使して異なる部分のアミノ酸をヒト型へ変換して作っていました。現在では、遺伝子工学によって、ヒトの遺伝子を大腸菌に組み込んで、人間本来のインスリンを安く大量に生産することが可能となっています。

注意したいのは、遺伝子組み換え技術も万能ではないということです。“DNAさえ解明できれば、将来どんな病気でも完治できるのでは”と楽観的な風潮もありましたが、遺伝子の謎が解明されて70年以上が経過しても、遺伝が原因とされる病気ですらまだ治すことが出来ないのが現状です。遺伝子組み換え技術の研究は、まだまだ道半ばといったところです。

バイオ後続品(BS:バイオシミラー)とは

バイオ後続品とは、遺伝子組み換え技術で創られるバイオ医薬品のことです。2009年3月、厚生労働省は“後発医薬品”いわゆるジェネリックとは区別して“バイオ後続品(BS:バイオシミラー)”という新たな分類を定めました。分かりやすく言うと、バイオ医薬品のジェネリックということです。日本国内では、2009年に成長ホルモンの「ソマトロピン」(先発品はファイザーの「ジェノトロピン」)が、初めて承認されたバイオ後続品となります。

バイオ後続品は、先発品とは別の製薬会社によって開発されるため、宿主や培養方法に違いがあり、完全に一致した製品は造れません。その複雑な分子構造と特殊な製造過程ゆえに、先発品と異なる部分が出る可能性が高くなります。一般的な後発品医薬品(ジェネリック)に較べて、かなりハードルが高い製剤です。そういうこともあって、一般的なジェネリックとは区別して“バイオシミラー”と呼んでいます。シミラーとは英語で“Similar:類似した”という意味で、やはり構造上の相違が懸念されているからだと思います。

苦戦する日本のバイオ後続品

安全性の違いはなく、効果も同等だと言われていますが、長期間の有用性については、まだデータが足りない状況です。バイオ後続品の薬価は、基本的に先発品の70%とされています(成績によって10%の上乗せ可)。先発品と同じ投与量で同じ効果が維持できれば、コストダウンに繋がるので大いに期待されているのですが、日本ではイマイチ盛り上がっていません。バイオ後続品は、開発すれば将来の売上が確実に見込めると言われる“ドル箱”のはずなのですが、コストの問題にぶつかったり、提携したベンチャー企業と上手くいかず開発中止となったり、どの製薬会社も苦戦を強いられています。

バイオシミラーへの普及が上手く運んでいない原因は他にもあります。一般人の認知度が低く、高額療養費制度によって先発品とバイオシミラーで患者の費用負担が変わらないことが挙げられます。国にとっては医療費を抑えられるというメリットがありますが、症状が安定している患者にとっては、先発品からバイオシミラーへ切り替えるメリットがないのです。高額療養費制度の見直しが当分見込めない現状では、業界全体で何らかの策を講じる必要がありそうです。

バイオシミラー協議会

バイオシミラー協議会

日本市場で苦戦が続く中、2016年4月に日医工、日本化薬、Meiji Seikaファルマ、持田製薬などの製薬企業が集まって「バイオシミラー協議会」という団体を発足しました。バイオシミラー協議会とは、バイオシミラーの問題について調査・研究に務め、業界の振興と発展を目指すという組織です。
バイオ医薬製剤の需要が広がるなか、日本ではその多くを海外からの輸入に依存し続けているのが現状です。バイオ医薬品は、低分子医薬品に比べて高価なため、医療費の高騰など国の財政に与える影響も大きいことも課題となっています。
協議会を発足することで、バイオシミラー業界と国が連携して国内の製造技術や分析技術を培い、バイオ医薬品の国内供給力の増強に繋げていこうという考えです。

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