ケブザラ/在宅自己注射が保険適用に

めざしたのは、RAの進行抑制。
関節リウマチ治療に新しいヒト型抗ヒトIL-6受容体モノクローナル抗体。ケブザラ、誕生。

※RA:関節リウマチ(Rheumatoid Arthritis)

▼ケブザラとは?

「ケブザラ」は、関節滑膜での炎症に深く関わっていると考えられているインターロイキン6(IL-6)の作用を抑制する注射薬です。2017年9月、【既存治療で効果不十分な関節リウマチ】の適応症で承認を取得しました。通常、成人には1回200mgの注射を2週間隔で投与します。投与開始から12週以内に効果が得られるとのことです。

厚生労働省の中央社会保険医療協議会(中医協)の資料によれば、「ケブザラ」のピーク時(2028年)の予測販売額として、188億円を見込んでいます。

▼関節リウマチ(RA)とは?

関節リウマチ(Rheumatoid Arthritis:RA)は、自己免疫の異常によって起こる慢性の全身性炎症疾患です。自己免疫がおかしくなると、自分の身体の組織を敵と思い込み、自身の免疫機能が攻撃してしまうのです。関節リウマチの主な症状としては、深刻な痛みや腫れを伴います。国内には約70万人の関節リウマチ患者がいると言われています。

それまでの関節リウマチの治療には対症療法しかなく、痛みや腫れに対して、ステロイドや非ステロイド性抗炎症薬で痛みを和らげることしか出来ませんでした。抗リウマチ薬も開発されましたが、関節破壊の進行を抑制出来たのは一部の患者だけという結果でした。

しかし近年、「ケブザラ」のような“生物学的製剤”の登場で、既存の抗リウマチ薬が効かなかった患者に対して、寛解あるいは低疾患活動性の達成まで可能になりました。

関節リウマチは基本的に、免疫抑制薬の「リウマトレックス」や生物学的製剤の「レミケード」などでの早期寛解を目指す治療が行われていますが、既存の治療では十分な効果が得られない場合も多く、常に新たな治療選択肢が必要とされています。

▼ケブザラの副作用

主な副作用は、感染症、鼻咽頭炎、注射部位紅斑、口内炎、好中球減少症、などです。他の部位では細菌やウイルスから身を守るために使われているインターロイキン6(IL-6)を抑制してしまうので、感染症にかかりやすくなり、結果的に鼻咽頭炎や口内炎が現れてしまいます。

▼リウマチの治療

リウマチの治療方法は大きくふたつに分類できます。
【1】:痛みをとりのぞく薬(非ステロイド性鎮痛薬、ステロイド)
【2】:炎症をブロックしてリウマチ自体を抑える薬(抗リウマチ薬)

抗リウマチ薬は大きく3つに分類できます。
【1】免疫調整薬:リマチル、アザルフィジン、シオゾール他
【2】免疫抑制薬:ブレディニン、リウマトレックス他
【3】生物学的製剤:レミケード、エンブレル、ヒュミラ、アクテムラ、ケブザラ他

関節リウマチ治療薬は、売上の伸長が著しく、特に「ヒュミラ」、「アクテムラ」、「シンポニー」、「オレンシア皮下注」は二桁成長しています(2016年現在)。なお「ヒュミラ」は、世界での売上が5年連続の1位で、年商160億ドルを超えている驚異的なブロックバスターです。

▼関節リウマチに関連する薬



▼ケブザラとアクテムラの違い

「ケブザラ」と同じ作用機序の生物学的製剤として「アクテムラ」が販売されています。「アクテムラ」はIL-6が結合するIL-6受容体を阻害する薬なのに対し、「ケブザラ」はIL-6本体を阻害するので作用する点が少し違います。どちらも注射の間隔は、2週ごとで投与します。

アクテムラの作用点 IL-6受容体を阻害
ケブザラの作用点 IL-6本体を阻害

▼在宅自己注射が保険適用に(追記:2018年12月)

2018年12月より、 「ケブザラ」は在宅自己注射指導管理料対象薬剤となり、在宅自己注射が保険適用になりました。関節リウマチの治療は長期間に及ぶことがあり、患者の治療と生活の両立という点において、通院の負担がより少ない治療が望まれる場合があります。

在宅自己注射が保険適用を受けて、2018年12月11日、「ケブザラ」の新剤形“皮下注150mgオートインジェクター”“皮下注200mgオートインジェクター”が発売されました。関節のこわばりや痛み、変形を訴える患者にとって握りやすい形状をしているのが特徴です。User Centered Designと呼ばれるユーザー中心設計に基づいて造られました。

オートインジェクターもシリンジの「ケブザラ」と同じ、在宅自己注射指導管理料の対象薬剤です。オートインジェクターには、あらかじめ1回分の薬剤が充填されており、リング式のキャップを外し、本体を皮膚に押し当てるだけで、注射針が目に触れることなく自動的に皮膚に刺さり、薬液が注入されます。

また“薬液確認窓”がついているので薬の注入の状況が目視でき、さらに薬剤注入の始まりと終わりを音で知らせる機能がついています。患者自身が安心して自己注射できる設計となっています。薬価は150mgが1キット44,9454円、200mgが1キット59,509円(2018年12月時点)。

旭化成HPより

▼広告のキービジュアル

広告のキービジュアルは、リウマチを表現したドミノと階段を降りる女性。アルファベットの“Y”のようなシンボルは、モノクローナル抗体を表しています。モノクローナル抗体がドミノ(リウマチ)をブロックしている様子を描いています。モノクローナル抗体を用いた治療薬は大変高価なため、通常はガンやリウマチなどの難病に用いられることが一般的です。

医薬品には「導入期」→「成長期」→「成熟期」→「衰退期」という4つの段階があり、“製品ライフサイクル”が一般消費財よりも長いのが特徴です。医療用医薬品は、患者が自分で自分の薬を選ぶことが出来ない、という特殊な業界で成り立っています。つまり、一般的な製品のマーケティングは、医薬品にはそのまま通用しないということです。

そこで医薬広告の場合、製品ライフサイクルを考慮して、「予告編」→「発売準備中」→「新発売」→「投薬期間制限解除」→「発売1周年」→「適応追加」→「大規模臨床試験」→「発売○周年」・・・・というような流れで広告を打つのが通常の流れとなっています。

販売名:ケブザラ皮下注150mgシリンジ,200mgシリンジ、150mgオートインジェクター,200mgオートインジェクター
一般名:サリルマブ(遺伝子組換え)
関節リウマチ治療薬/ヒト型抗ヒトIL-6受容体モノクローナル抗体/サリルマブ製剤
新発売(2018年2月5日発売)
サノフィ
旭化成ファーマ

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