ゾレア/抗IgE抗体治療が喘息予防・管理ガイドラインに

Capture IgE
重症気管支喘息治療に新たな選択肢

抗IgE抗体治療が喘息予防・管理ガイドライン2009に記載されました。

▼ゾレアとは?

「ゾレア」は、既存の治療薬でも治すことのできない患者に対して使用される気管支喘息の薬です。2009年に発売されました。抗IgEモノクローナル抗体と呼ばれる種類に分類されます。「ゾレア」は、喘息の原因となるIgEという抗体に先にくっつくことで、その働きを阻害してしまうという薬です。モノクローナル抗体を用いた治療薬は大変高価なため、通常はガンやリウマチなどの難病に用いられることが一般的です。

そのような中、世界初の抗IgEモノクローナル抗体として開発された薬が「ゾレア」です。つまり、基本的に高額療養費制度必須という治療薬です。

▼かぎられた患者にしか投与できない

高価な薬ということで適応条件が細かく設定されていて、症状が重い患者でもIgEと体重の値によっては投与できません。どこかで区切らないと国の医療費が嵩み過ぎてしまう、ということだと思います。

「ゾレア」の投与は、体重と血液中のIgE量によって計算されます。IgEが極端に少ない人や多い人には投与できません。ブロックするIgEが少ないと効果がないですし、多くても阻害しきれないためです。投与の量はIgE量と体重の換算表で算出しますが、体重が増えれば増えるほど投与できない可能性が高まります。

また、「ゾレア」は喘息の他にも花粉症やアトピー性皮膚炎などに効果が認められていますが、同じような理由で、深刻な病気の気管支喘息に対してのみ適応が認められているのが現状です。

※2013年、小児に対する難治性の気管支喘息の適応が追加となりました。

▼ゾレアの薬価

薬代は一番安くても月に1回7万円、一番高いと2週毎に3瓶使うので、一ヶ月の薬代は42万円(3割負担で約13万)です。高額医療制度を利用することである程度返ってきますが、それでもかなり高額です(制度利用で月額約17万円、患者3割負担は約5万円)。住んでいる場所によっては、喘息患者の治療費に対する補助を行っている市町村もあります。

▼再投与で有効性(2017年10月:追記)

「ゾレア」のはじめの投与が効果を示した“慢性特発性蕁麻疹患者”に対して、休薬後に「ゾレア」を再投与する試験を行われました。その結果、約90%の割合で症状が良好な状態に安定することが確認されました(OPTIMA試験)。なにかの事情で治療を一旦中断したとしても、「ゾレア」の服用をあらためて再開することで、3ヵ月以内に症状がコントロールされるということです。

▼慢性蕁麻疹治療の国際ガイドラインで推奨(2018年3月:追記)

2018年に改訂された「特発性の慢性蕁麻疹治療に関する国際ガイドライン」で、抗ヒスタミン薬で充分な効果が得られない患者に対して、抗IgE抗体製剤「ゾレア」(オマリズマブ)が推奨されました。

▼気管支喘息の原因解明、新治療薬に期待(2018年3月:追記)

2018年3月、東北大学の研究グループが気管支喘息の原因が“2型自然リンパ球”というリンパ球の活性化であることを発表しました(Journal of Allergy and Clinical Immunology 電子版:2018.2.7.)。気管支喘息を含むアレルギー疾患の新たな治療法開発につながると期待されています。

・気管支喘息(アレルギー性喘息)が起きる新たなメカニズムを発見。
・GITRタンパク質がリンパ球の活性化を介して、気管支喘息を引き起こすことを解明。
・GITRタンパク質を阻害する物質が気管支喘息の新しい治療薬となる

従来のアレルギー疾患の治療で注目されていたのは、アレルギー反応の制御や他の免疫細胞の活性化に関係する免疫細胞【T細胞】でしたが、東北大学はこの免疫細胞の表面に出現する“GITR”というタンパク質が、2型自然リンパ球を活性化することをマウスを使った実験で実証しました。

2型自然リンパ球は、気管支喘息が発生する時に最初に活性化する免疫細胞なので、この細胞が活性化しなければアレルギー反応は起こらないという理論です。

気管支喘息のメカニズムが解明されたことで、気管支喘息を含むアレルギー疾患の新しい治療薬誕生の可能性が高まっています。

▼効能変化再算定の【特例】が初適用(2020年1月:追記)

2020年度薬価制度改革で新設する効能変化再算定の【特例】が「ゾレア」に初めて適用されました。薬価の引き下げ率は、厚生労働省の薬価改定告示で明らかになる予定です。類似薬のない医薬品に新ルールが適用されるのは、これが初めてのケースです。

2019年12月、「ゾレア」は「季節性アレルギー性鼻炎」(花粉症)の適応追加を取得しました。花粉症は対象の患者数が多く、抗体医薬品である「ゾレア」は価格が高いので、財政に影響を与えると懸念されていましたが、今回初めて【特例】が適用されることとなりました。つまり、製薬メーカーの利益が減らされるというわけです。

なお、「ゾレア」は2014年度改定で【用法用量変化再算定】を受けており、2度目の薬価引き下げとなります。

効能変化再算定の【特例】とは?
効能変化再算定は、著しく1日薬価が高く、市場規模が非常に大きくなると予想される場合、類似薬の1日薬価を参考に同様の再算定を行うというものです。いままでは、「効能・効果」が変更された医薬品の薬価を“類似薬がある場合に限って”、類似薬の価格に近づくように算定する、というルールでした。しかし、2020年度の改革で“類似薬がない場合も可能にする”特例を設けることになりました。

▼効能変化再算定の【特例】が適用される要件

薬価 1日薬価が参照薬の10倍以上
市場規模 市場規模が最大で10倍以上に拡大する場合
患者数 対象患者が最大5万人以上と認められる

▼その他の気管支拡張剤

喘息治療のバイオ医薬品としては、「ゾレア」「ヌーカラ」「ファセンラ」「デュピクセント」などがあります。「ゾレア」は、唯一の抗IgE抗体製剤というのが特徴です。「ファセンラ」は好酸球をゼロに洗い流すというのが特徴で、「ヌーカラ」は逆に好酸球をゼロにしてはいけない、という切り口でプロモーションしています。

吸入型の気管支拡張剤としては、「スピリーバ」「オンブレス」「ウルティブロ」「シーブリ」などがありますが、処方数では外用剤の気管支拡張薬「ホクナリンテープ」(ツロブテロール)がトップです(2014年度)。1日1回貼るだけで済む手軽さと、小児の気管支炎にも使えるというメリットで処方が増えています。





▼広告のキービジュアル

広告のビジュアルは、瓶に入った蛍を抱えて微笑む女性。医薬品広告とは思えないロマンティックなトーンで、新鮮さを感じます。美しいビジュアルですね。

ここでのホタルは、抗体を表しています。よく見るとホタルが【Y】のようなカタチをしています。これは、“ゾレアが遊離IgE抗体のCε3に結合し、IgE抗体とFcεRⅠの結合を阻害する作用機序”を表現しています。

一般名:オマリズマブ(遺伝子組換え)
製品名:ゾレア皮下注用75mg/150mg
気管支喘息治療剤(ヒト化抗ヒトIgEモノクローナル抗体製剤)/慢性蕁麻疹治療剤(ヒト化抗ヒトIgEモノクローナル抗体製剤)
ノバルティスファーマ

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