クラビット/進化するニューキノロン系薬

進化する、ニューキノロン系薬クラビット

▼クラビットとは

「クラビット」は、細菌を殺菌する抗生物質です。細菌が原因のいろいろな感染症に用います。風邪を患っても処方されますが、風邪のウイルスに効くわけではありません。細菌による二次感染やその予防のためです。2015年度の時点で、抗生物質の中での売上が「ゾシン」に次いで第二位でした(184億円)。薬価が高いので、病院側が積極的に処方している傾向もあるのかなと思います。

「クラビット」はニューキノロンといわれる抗菌薬で、他の抗菌薬に比べ威力が強く、いろいろな細菌に有効です。クラミジアや淋病などの性病にも効果を発揮しています。現在ではジェネリック薬も数多く出ており、国内でもっとも使用される抗菌薬の一つとなっています。

ニューキノロン系の薬はマクロライド系(ジスロマックなど)で効果があまりみられなかった場合に使用される機会が多い薬です。経口薬なのに、注射薬と同じくらいの効果を発揮すると言われています。効果が強力な分、副作用も少なからず出てしまいます。昔は、100mgを1日3回に分けて服用していたのですが、1日1回の方が効果が高いことが判り、今では500mgを1日1回服用するのが一般的です。

「クラビット」の有効成分“レボフロキサシン”には細菌のDNA合成を阻害する効果があり、特にクラミジアや淋病に対して非常に高い効果を及ぼします。また、性病以外にも、膀胱炎や肺炎、腸炎にも効果があります。

▼淋病(淋菌感染症)とは?

淋菌感染症(淋病)は、江戸時代に吉原で流行した記録も残っているほど古くからある感染症で、昔は治療法も抗生物質もなかったため、不治の病として恐れられていました。しかし、現代では抗生物質を化学的に合成した強力な抗菌薬の登場によって、きちんと薬を飲めば治る病となりました。

淋菌は非常に弱い菌で、人の粘膜から離れると数時間で感染力を失い、日光や乾燥に弱く、高温や消毒液で簡単に死滅します。つまり、普段の生活では感染しにくい菌で、ほとんどの感染経路は性行為によるものです。

日本での感染者は二十代の若年層に多いのが特徴です。厚生労働省の調査では、女性の感染者が男性より極端に少ないのですが、これは女性は自覚症状が比較的少なく、感染に気が付かないからと考えられています。近年の疫学研究では、淋菌感染によってHIVの感染率が上がるという報告があり、治療せずに放って置くと危険な疾患だと言えます。

淋病の症状
(男性)
尿道や亀頭が痒くなり、排尿時に強い痛みを感じる。尿道口が赤く腫れる場合も。陰茎に恥垢(ちこう)が溜まり、尿道から濃黄白色の膿が出るので、下着に膿がつくようなら要注意(黒いブリーフを履くと判断しやすい)。
淋病の症状
(女性)
症状や徴候がない場合が多いので、感染女性の多くは無自覚。おりものが増えたり、匂いが強くなる場合あり。

▼クラミジアとは?

クラミジアは、国内で最も多い性感染症です。主に性行為で感染しますが、オーラルセックスによる咽頭への感染も少なくありません。クラミジアは若年層(29歳以下)の成人女性に多いのが特徴ですが、新生児は母親から産道感染する場合もあります。

近年は、10代女性の感染率の高さが将来の不妊につながるとして問題視されています。女性は感染を受けても自覚症状が乏しいため、無意識にパートナーや出産児へ感染させることがあるので、注意が必要です。

クラミジアの症状
(男性)
尿道が痒くなり、排尿時に痛みを感じる。睾丸に痛みや痒み。
クラミジアの症状
(女性)
基本的に症状を感じない。おりものが増えたり、黄色い濃いおりものがでる場合あり。

▼淋病・クラミジアの治療方法、対処法

淋病やクラミジアの治療においては、抗生物質を内服または注射投与し、原因菌を確実に除菌する療法が推奨されています。

しかし、淋病もクラミジアも耐性菌の出現が常に課題となっています。つまり、同じ抗菌薬を何度も使っていると、耐性が出来て薬が効かなくなってくるのです。

予防対策としては、感染が疑われる相手との性交渉は避け、コンドームを必ず使用することです。また、ふたりの間で行ったり来たり感染する“ピンポン感染”を防ぐため、独りだけではなく、お互い同時期に治療を行うことが重要です。

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▼クラビットとグレースビットの違い

グレースビット」と「クラビット」は、どちらもニューキノロン系抗菌薬に分類される薬です。この2剤は同様の作用機序なので、効果や副作用、使用上の注意もほぼ同じです。実は、「グレースビット」と「クラビット」はどちらも第一三共で開発された薬剤で、「グレースビット」は「クラビット」を改良して作った抗菌薬です。

「クラビット」は非常に効果的な抗菌薬で、多くの疾患に対し長年に亘って頻繁に使用されてきました。抗菌剤は長く使っていると“耐性菌”が現れることが判っていますが、次第に「クラビット」が効かないケースが報告されるようになってきたのです。そうした経緯から改良を重ね、新しく「グレースビット」が開発された訳です。

「グレースビット」はクラビット耐性菌に対しても、有効な抗菌作用が認められています。また、耐性菌の出現を防ぐために、適応疾患をあえて「クラビット」よりも絞り込んでいます。耐性菌の数の違いが「グレースビット」と「クラビット」の大きな違いと言えます。

感染症にはまず「クラビット」が処方される場合が多いですが、「グレースビット」の方が抗菌力が強いという特徴があります。「グレースビット」は、日本が独自に改良した成分のため、耐性菌対策として重宝されています。他の抗生物質が効かなかった場合の二次使用で選択されるケースが多い薬です。「クラビット」も「グレースビット」も、既に薬価の安い後発品(ジェネリック)が発売されています。

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▼広告のキービジュアル

広告のビジュアルは、記者会見の演台で指を指している外国人男性。この男性は“第一三共の重役”という話を聞いたことがあるのですが、デマですよね? モデルさんのように見えます。日本発の新薬ということで、日本地図にスポットが当たっています。名前の由来は「CRAVE(熱望する、切望する)IT」→【待ち望まれた薬剤】。重役が記者会見で待望のニュースを発表というイメージでしょうか。


一般名:レボフロキサシン水和物
製品名:クラビット錠250mg,500mg、クラビット細粒10%
合成抗菌剤/キノロン/広範囲経口抗菌製剤
第一三共

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