認知症の方のご家庭での様子を記入する「相談ノート」をご用意しました。
限られた診療時間の中で、先生方が認知症の方の日頃のご家庭での様子を把握されることは、なかなか難しいことと存じます。ご家族や周囲の方々から、簡潔かつ具体的に先生にお伝えいただくことで、診療の一助となればとの思いから、この度「相談ノート」をつくりました。ぜひ先生方の日常診療にお役立ていただければ幸いです。
▼メマリーとは?
「メマリー」は、アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)を軽減する薬で、NMDA製剤という種類に分類されます。「アリセプト」(ドネペジル)とは全く別の作用機序を持つ薬として開発されました。
「メマリー」は脳神経へのグルタミン酸の悪影響を抑えるのが特徴で、“グルタミン酸仮説”という考えを基に造られた医薬品です。どちらかというと症状の重い患者向きで、中等度〜高度の患者に使用されています(軽度では使用しない)。
▼グルタミン酸仮説とは?
人の記憶には、脳内のグルタミン酸が深く関係していると言われています。“グルタミン酸仮説”とは、グルタミン酸が放出され続けることで神経伝達にノイズが混じり、記憶や習得能力が妨害されてしまう、という考えです。アルツハイマー型認知症の患者の脳内では、タンパク質が過剰に生産されています。この異常な量のタンパク質によってグルタミン酸が常に放出される状態となり、記憶することが困難になります。
グルタミン酸が記憶機能に関わっているのであれば、“グルタミン酸の放出”は悪いことのように思えませんが、実際にはグルタミン酸の放出が続くことで、記憶を創るのに必要な伝達信号も妨害してしまう、ということです。また、グルタミン酸飽和状態が続くと、グルタミン酸放出に関係する細胞が破壊されていきます。これが原因となって、アルツハイマー型認知症を発症すると考えられています。
▼メマリーの副作用
主な副作用として、ふらつき、よろめきなどの目まいがあります。高齢者は目まいによって転びやすくなりますので、特に注意が必要です。その他、便秘、傾眠(昼間眠くなる)、幻覚、妄想、幻視などが報告されています。パーキンソン病の症状がある患者や、精神科の治療でドパミン系の向精神薬を使ってる患者が、「メマリー」を併用すると、強い副作用が出ると言われています。
▼アリセプトとの違い
1999年に発売された「アリセプト」はコリンエステラーゼ阻害薬という種類の製剤で、軽度の認知症から使えます。2011年に発売された「メマリー」はNMDA受容体拮抗薬という製剤で、中等度〜高度の患者に使用されています。
「アリセプト」は“コリン仮説”を基に開発された薬で、「メマリー」は“グルタミン酸仮説”を基に開発された薬で、作用機序が異なります。
「アリセプト」の付加効果としては、認知症に伴って起こりやすい不安・抑うつ状態を和らげるという特徴があります。「メマリー」の付加効果としては、認知症に伴って起こりやすい興奮・攻撃性を和らげるという特徴があります。
アリセプト | 軽度の患者から使用可能 | コリン仮説 | 不安・抑うつ状態を和らげる |
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メマリー | 中等度〜高度の患者に使用 | グルタミン酸仮説 | 興奮・攻撃性を和らげる |
▼認知症治療のこれから
原因がはっきりとは分からず、完治が難しいとされるため、最近では認知症に罹る前の早期発見や認知症予防の研究が非常に活発です。
認知症は進行型の病気ですが、認知症が進行したとしても、過ごし方次第で自宅で生活する事はできますし、工夫すれば旅行へ行くことも出来るかもしれません。認知症は周囲が早期に気づいてあげることで、症状を軽くしたり、進行を遅らせたりすることができる可能性があります。薬での治療以外に、周囲の協力やアフターケアの方法によって、QOLを向上出来る疾患だと言われています。
認知症には根治をゴールとした治療法がないことから、診断後の患者への伝え方も難しい問題となっています。最近では、医師が患者会のようなサロンを勧めたり(参加者の方が、不参加者よりも要介護認定率が低いという研究論文あり)、スマートフォンを使った“認知症患者の見守り機器”の紹介といった“社会的処方箋”を出すことで、治療のゴールを改めて考え直す活動が見られています。
▼広告のキービジュアル
広告のキービジュアルは、認知症の専門医と向き合う母(樹木希林)と息子。「相談ノート」を使って、医師と相談しています。製品の広告というよりは、アルツハイマー型認知症に対する第一三共の姿勢を示した企業広告に近い内容です。
一般名:メマンチン塩酸塩
製品名:メマリー錠5mg,10mg,20mg、メマリーOD錠5mg,10mg,20mg、メマリードライシロップ2%
抗認知症薬/NMDA受容体拮抗薬/NMDA受容体拮抗 アルツハイマー型認知症治療剤
第一三共