グレースビット/クラビットとの違い

先発ローテーション、グレースビット

▼グレースビットとは?

「グレースビット」は、ニューキノロンと呼ばれる抗菌薬です。細菌によって起こるさまざまな感染症に使われています。主に、呼吸器感染症、尿路感染症、耳鼻科領域の感染症などに用いられています。また、淋病やクラミジアといった性病にも処方されることが多い抗菌薬です。感染症とは、細菌が人体に侵入して暴れる病気です。具体的には、腫れや発赤を生じたり、化膿したり発熱したり、悪影響をもたらします。

病原微生物には、細菌、ウイルス、真菌(カビ)などが含まれますが、「グレースビット」が有効なのは “細菌”による感染症です。グラム陽性菌や陰性菌をはじめ、クラミジアやマイコプラズマという細菌にも効果が期待できます。本来、一般的なウイルス性の風邪には無効なのですが、細菌による二次感染時やその予防のために「グレースビット」を処方されることがあるかもしれません(私も風邪でクラビットを処方されたことがあります)。

▼グレースビットの特徴

「グレースビット」は従来の抗菌薬に比べて抗菌力が強く、いろいろな細菌に有効なのが特徴です。飲み薬では治療の難しかった難治性の感染症にもよい効果を示します。副作用も少ないです。ニューキノロン系は、アレルギーを起こすことが少なく、他の抗生物質にアレルギーのある人にも使われます。抗菌力が強い反面、副作用の下痢や軟便の発現頻度が高いので、第2選択薬といったポジションです。

ニューキノロン系抗菌薬の作用機序は簡単に記すと「DNA合成阻害」です。すなわち、細菌が持つDNAジャイレースおよびトポイソメラーゼといったDNA合成に必要な酵素の作用を阻害し、その結果細菌のDNA複製が阻害されます。こうして細胞分裂ができなくなった細菌は死滅に至るというわけです。

▼淋病(淋菌感染症)とは?

淋菌感染症(淋病)は、江戸時代に吉原で流行した記録も残っているほど古くからある感染症で、昔は治療法も抗生物質もなかったため、不治の病として恐れられていました。しかし、現代では抗生物質を化学的に合成した強力な抗菌薬の登場によって、きちんと薬を飲めば治る病となりました。

淋菌は非常に弱い菌で、人の粘膜から離れると数時間で感染力を失い、日光や乾燥に弱く、高温や消毒液で簡単に死滅します。つまり、普段の生活では感染しにくい菌で、ほとんどの感染経路は性行為によるものです。

日本での感染者は二十代の若年層に多いのが特徴です。厚生労働省の調査では、女性の感染者が男性より極端に少ないのですが、これは女性は自覚症状が比較的少なく、感染に気が付かないからと考えられています。近年の疫学研究では、淋菌感染によってHIVの感染率が上がるという報告があり、治療せずに放って置くと危険な疾患だと言えます。

淋病の症状
(男性)
尿道や亀頭が痒くなり、排尿時に強い痛みを感じる。尿道口が赤く腫れる場合も。陰茎に恥垢(ちこう)が溜まり、尿道から濃黄白色の膿が出るので、下着に膿がつくようなら要注意(黒いブリーフを履くと判断しやすい)。
淋病の症状
(女性)
症状や徴候がない場合が多いので、感染女性の多くは無自覚。おりものが増えたり、匂いが強くなる場合あり。

▼クラミジアとは?

クラミジアは、国内で最も多い性感染症です。主に性行為で感染しますが、オーラルセックスによる咽頭への感染も少なくありません。クラミジアは若年層(29歳以下)の成人女性に多いのが特徴ですが、新生児は母親から産道感染する場合もあります。

近年は、10代女性の感染率の高さが将来の不妊につながるとして問題視されています。女性は感染を受けても自覚症状が乏しいため、無意識にパートナーや出産児へ感染させることがあるので、注意が必要です。

クラミジアの症状
(男性)
尿道が痒くなり、排尿時に痛みを感じる。睾丸に痛みや痒み。
クラミジアの症状
(女性)
基本的に症状を感じない。おりものが増えたり、黄色い濃いおりものがでる場合あり。

▼淋病・クラミジアの治療方法、対処法

淋病やクラミジアの治療においては、抗生物質を内服または注射投与し、原因菌を確実に除菌する療法が推奨されています。

しかし、淋病もクラミジアも耐性菌の出現が常に課題となっています。つまり、同じ抗菌薬を何度も使っていると、耐性が出来て薬が効かなくなってくるのです。

予防対策としては、感染が疑われる相手との性交渉は避け、コンドームを必ず使用することです。また、ふたりの間で行ったり来たり感染する“ピンポン感染”を防ぐため、独りだけではなく、お互い同時期に治療を行うことが重要です。

▼グレースビットとクラビットの違い

「グレースビット」と「クラビット」は、どちらもニューキノロン系抗菌薬に分類される薬です。この2剤は同様の作用機序なので、効果や副作用、使用上の注意もほぼ同じです。実は、「グレースビット」と「クラビット」はどちらも第一三共で開発された薬剤で、「グレースビット」は「クラビット」を改良して作った抗菌薬です。

「クラビット」は非常に効果的な抗菌薬で、多くの疾患に対し長年に亘って頻繁に使用されてきました。抗菌剤は長く使っていると“耐性菌”が現れることが判っていますが、次第に「クラビット」が効かないケースが報告されるようになってきたのです。そうした経緯から改良を重ね、新しく「グレースビット」が開発された訳です。

「グレースビット」はクラビット耐性菌に対しても、有効な抗菌作用が認められています。また、耐性菌の出現を防ぐために、適応疾患をあえて「クラビット」よりも絞り込んでいます。耐性菌の数の違いが「グレースビット」と「クラビット」の大きな違いと言えます。

感染症にはまず「クラビット」が処方される場合が多いですが、「グレースビット」の方が抗菌力が強いという特徴があります。「グレースビット」は、日本が独自に改良した成分のため、耐性菌対策として重宝されています。他の抗生物質が効かなかった場合の二次使用で選択されるケースが多い薬です。「クラビット」も「グレースビット」も、既に薬価の安い後発品(ジェネリック)が発売されています。

クラビットジェネリック250mg
クラビットジェネリック500mg

▼広域抗菌薬の使用が全体の約80%

幅広く有効な第3世代セフェム系や、フルオロキノロン系、マクロライド系、カルバペネム系といった抗菌薬の使用割合が、日本では抗菌薬全使用量の約80%を占めており、この非常に高い割合を厚生労働省は問題視しています。抗菌薬は風邪に効かないばかりか、副作用が増えるという報告があるにも関わらず、風邪に抗生物質が効くと考えている患者が多いのが実情です。また、抗生物質を最後まで飲みきらない患者が37%も存在するという調査結果も報告されています。医療費圧迫の問題や、耐性が出来て肝心な時に抗菌薬が効かなくなるおそれなどを考えると、広域抗菌薬の使用を減らす施策が必要なのかもしれません。

▼広告のキービジュアル

広告のビジュアルは、野球の先発ピッチャー。どちらかと云うと、キャッチコピーありきのビジュアルイメージです。インパクトはありませんが、医薬品広告の「トーン&マナー」を守った好感の持てる絵柄です。“先発ローテーション”と言っていますが、現実は「クラビット」が効かない時の“中継ぎ投手”といった役割です。ただ、将来的に「クラビット」の球威が弱まった時には、先発エースに成る可能性を充分に秘めていると思います。


一般名:シタフロキサシン水和物
製品名:グレースビット錠50mg,細粒10%
キノロン/広範囲経口抗菌製剤
第一三共

関連記事

カテゴリー

スポンサードリンク