揺るぎなき進化
▼ジャヌビアとは?
「ジャヌビア」は血糖を下げる糖尿病の薬です。国内初の選択的DPP-4阻害薬です。効き目が穏やかなので、新しい患者や高齢者に向いているとのことです。また、日本人に多い非肥満型の糖尿病にも有効だと考えられています。
「ジャヌビア」は、SU系などの従来使われていたインスリン分泌促進薬とは作用機序が異なります。DPP-4阻害作用がHbA1c値を低下し、血糖値を改善します。単独では効果が弱いこともあり、すべての糖尿病治療薬との併用が可能となっています。
▼グラクティブとジャヌビアの違い
「ジャヌビア」と「グラクティブ」は製品名は違いますが、有効成分はどちらも“シタグリプチン”でまったく同じ薬です。降圧剤の「アムロジン」=「ノルバスク」や糖尿病治療薬の「デベルザ」=「アプルウェイ」と同様の1物2名称製品です。
1物2名称製品は、医療用医薬品の世界では良くあることで、“併売品”と呼ばれています。なぜ一物二名称の医薬品が多く存在するのかという理由は、患者にとってのメリットはほとんどなくて、各社のビジネス的な思惑が大きいと言えます(販売経路や領域の得意・不得意など)。
▼存在感が増すDPP-4、SGLT-2は苦戦
糖尿病治療薬の外来での処方数を見ると、ビグアナイド系の「メトグルコ」が約12億1,700万錠と圧倒的に多く、次にDPP-4阻害剤の「エクア」が約4億2,300万錠。僅差の「ジャヌビア」は約4億500万錠となっています(厚生労働省:2015年調査)。
SGLT-2阻害剤の「スーグラ」や「フォシーガ」は脱水などの副作用が懸念されて、75歳以上の高齢者の使用を避けるべきと日本老年医学会から勧告されたため、市場浸透へ勢いがつかない状態です。
売上高と処方数は必ずしも一致しませんが、それでも日本でのDPP-4阻害薬の評価は疑いようがありません。2015年の段階で9種類ものDPP-4阻害薬が発売されています。これだけ多くのDPP-4阻害薬が発売されているのは日本だけです。
DPP-4阻害薬は種類が多くなり(2015年発売のマリゼブで9つ目)、どの薬剤もきちんと服用すれば24時間のDPP-4阻害率は80%をクリアしているので、医師も選択に迷うのではないでしょうか。後から発売される薬は、それなりの個性がないと生き残っていくのが難しいのかな、と思います。
▼ジャヌビアの特徴
「ジャヌビア」は“国内初のDPP-4阻害薬”ということが売りです。新しい薬の方がいろいろと改良されていて利点があるように思えますが、先行して発売した薬には新しい薬にはない実績があります。特に後期高齢者(75歳以上)への処方数は、DPP-4阻害薬の中でもトップクラスです。
「ジャヌビア」は、効果がしっかりしていて、安心・安全に血糖を下げることが出来るので“糖尿病治療のファースト・チョイス”のひとつとして重宝されています。
▼主なDPP-4治療薬の特徴
【トラゼンタ】:胆汁排泄型、腎機能に関係なく使用可
【テネリア】:胆汁・腎排泄型、半減期が24時間と長い、日本発
【スイニー】:腎排泄型、中性脂肪やLDLコレステロールを下げる効果
【オングリザ】:腎排泄型、解離半減期が長く、効果が持続する
【マリゼブ】:腎排泄型、週1回で他のDPP-4阻害剤と同等の効果
▼DPP-4+SGLT2阻害配合剤「スージャヌ」発売(追記:2018年5月)
2018年5月22日、MSDとアステラスの2型糖尿病治療用配合剤「スージャヌ」が発売されました。国内でそれぞれ画期的医薬品(ファースト・インクラス)とされるDPP-4阻害剤「ジャヌビア」とSGLT2阻害剤「スーグラ」を組み合わた合剤です。DPP-4+SGLT2阻害配合剤は、「カナリア」に続いて2番目となります。
薬価は、1錠263.80円。中医協の試算ではピーク時(2024年度)の予測売上高は221億円で、予測患者数は27万人となっています。
▼広告のキービジュアル
広告のビジュアルは、光り輝く本。【TECOS】に焦点を当てたアカデミックなイメージです。ジャヌビアは、かなり頻繁に広告のマイナーチェンジを行っている印象です。【TECOS】とは、ジャヌビア錠(シタグリプチン)の心血管系での安全性を評価する臨床試験の名称です。
「ジャヌビア(Januvia)」という製品名は、ローマ神話の“JANUS(ヤヌス、二つの顔を持つ神)”がもとになって命名されました。ヤヌス神はふたつの顔で過去と未来を見ることができる出入口の神です。“ヤヌス神”は、January(1月)の語源にもなっています。
一般名:シタグリプチン リン酸塩水和物
製品名:ジャヌビア錠12.5mg,25mg,50mg,100mg
糖尿病用剤/選択的DPP-4阻害剤
MSD