▼ナルサス、ナルラピドとは?
「ナルサス」と「ナルラピド」とは、麻薬性の強オピオイド鎮痛剤です。成分はどちらも同じヒドロモルフォン塩酸塩。ヒドロモルフォンは、厚生労働省の“医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議”で日本での開発の重要性が指摘され、国が製薬会社の募集を行って、第一三共が開発を引き受けたという政府が求めて誕生した薬です。
ヒドロモルフォンは、歴史の長いアヘン系麻薬性鎮痛剤であり、WHO(世界保健機関)のがん疼痛治療のためのガイドラインにおいて、“疼痛管理の標準薬”に位置付けられています。適応は「中等度から高度の疼痛を伴う各種癌における鎮痛」となっています。
▼ナルサスの特徴
「ナルサス」の特徴は1日1回投与型の徐放錠で、「ナルラピド」は即放錠という違いがあります。厚生労働省から「定時投与では徐放製剤を使用し、用量調節や突出痛への対処には即放製剤を使用すること」とガイダンスがあったため、徐放製剤と即放製剤の2種類が発売されました。「ナルラピド」は「ナルサス」のより効果発現が速いということで、ラピッド(rapid:速い)から命名されました(特急電車を電光掲示板で、Rapidと記しますよね)。
2017年7月の時点で「新発売」となっていますが、海外では80年以上前から使われている古い薬です。継続的にがんの治療を行うと、鎮痛薬の効果が弱まったり、鎮痛薬による副作用が発生する場合があります。その為、他の鎮痛薬に変更するケースが多く、治療選択肢を広げる意味でも「ナルサス」と「ナルラピド」(ヒドロモルフォン)は、海外で欠かせない薬剤となっています。日本でも使用が増えてくるのでしょうか? 麻薬は管理が大変厳重なので、薬局にとっては在庫管理が頭の痛い問題です・・・。
製品名 | 発現までの時間 | 副作用 | 使い方 | 用法 4~24mg |
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ナルサス | ゆっくり長く効く | 61.2% | 定時 | 通常1日1回 |
ナルラピド | すぐに効く | 49.8% | 緊急 | 1日4〜6回 |
▼広告のキービジュアル
広告のキービジュアルは、笑顔で手を取り合う医師と患者のイラストです。1980年代に流行ったヘタウマっぽいタッチで、なんとなく目を惹かれる絵です。写実的で巧い絵にはない、親近感と独特の面白さを感じます。
▼主な副作用について
国内臨床試験において、副作用が「ナルサス」では61.2%、「ナルラピド」で49.8%に認められており、高い頻度で何かしらの副作用が起こることが判っています。「ナルサス」の主な副作用には悪心、嘔吐、傾眠、便秘などがあり、「ナルラピド」の主な副作用には傾眠、悪心、便秘、嘔吐などが報告されています。重大な副作用としては、「ナルサス」と「ナルラピド」ともに、依存性、呼吸抑制、意識障害、イレウス(腸閉塞のようなもの)や、炎症性腸疾患患者における中毒性巨大結腸などが報告されています。
▼徐放製剤(ナルサス)と即放製剤(ナルラピド)
投与から効果の発現までの時間が短い薬を「即放製剤」と言います(速効性とも呼びます)。投与から効果の発現までの時間が長い薬を「徐放製剤」と言います(遅効性、持効性とも呼びます)。徐放製剤は「SR錠:Slow Release」「LA錠:Long Acting」「CR錠:Controlled Release」など、商品名の後に英語の頭文字が付く製品が多いです。出来れば呼び方を統一して欲しいところですが、微妙にニュアンスが違うので分けているのでしょうね。
▼処方制限見直しへ:追記2017年10月
2017年10月、厚生労働省より「ナルサス」と「ナルラピド」(ヒドロモルフォン)の処方限度を30日にまで拡大する案が示されました。30日というのは、在宅での使用を想定した案です。医療用麻薬が継続的に必要な患者は、効果が薄れた場合や副作用の改善を目的に麻薬の種類を変更する必要があります(オピオイド・スイッチング)。今回の処方制限の見直しによって、「ナルサス」と「ナルラピド」が“オピオイド・スイッチング”の新たな選択肢になると期待されています。結論は、次期診療報酬改定の頃に報告される見通しです。
一般名:ヒドロモルフォン塩酸塩徐放錠
製品名:ナルサス錠2mg・6mg・12mg・24mg
持続性癌疼痛治療剤
第一三共
一般名:ヒドロモルフォン塩酸塩錠
製品名:ナルラピド錠1mg・2mg・4mg
癌疼痛治療剤
第一三共