カナリア/14日処方制限の対象外に

服薬アドヒアランスの向上と、長期にわたる安定した血糖コントロールを目指して

国内初のDPP-4阻害剤/SGLT2阻害剤配合錠 新発売

▼カナリアとは?

「カナリア」は、選択的DPP-4阻害剤「テネリア」とSGLT2阻害剤「カナグル」を配合した2型糖尿病治療薬です。DPP-4とSGLT2の合剤は国内初。合剤となったことで、2型糖尿病の患者に対して、1日1回1錠で良好な血糖コントロールが期待出来ます。

「テネリア」と「カナグル」の併用療法に1年以上の臨床データがあるおかげで、新医薬品の処方日数制限(14日処方制限)の対象外となっています。算定薬価は、1錠/300.30円でした(2017年8月30日)。

「テネリア」は、食事に呼応して消化管から分泌されるGLP-1というホルモンを分解する酵素DPP-4の働きを阻害することでインスリン分泌を促進し、血糖値を下げる薬です。DPP-4阻害剤には、低血糖を起こしにくいという特徴があり、「テネリア」としては“効果が24時間と長い”というのが売りです。

「カナグル」は、腎臓の尿細管でSGLT2というトランスポーターを邪魔することで、糖の再吸収を抑制し、余分な糖を尿として排泄することによって血糖値を下げる薬です。どちらも田辺三菱製薬が研究・開発した日本発の薬剤です。

1日1回服用する経口剤「テネリア」と「カナグル」のふたつを配合してひとつの薬にすることで、服薬の負担を軽減し、長期に亘る血糖コントロールをより一層安定させるという狙いです。

「カナリア」は、日本で人気の“DPP-4阻害剤”と欧米で高評価を得ている“SGLT2阻害剤”の組み合わせということで、注目を集めています。インスリン分泌低下と肥満によるインスリン抵抗性が、糖尿病患者全体の増加につながっているという状況を考慮すると、配合の意義は十分あると考えられます。

DPP-4阻害薬のライバルは他社のDPP-4阻害剤ではなく、むしろSGLT2阻害剤になるのではとも言われていますし、“国内初のDPP-4阻害剤+SGLT2阻害剤合剤”「カナリア」への期待は非常に高いと思います。


▼広告のビジュアルについて

「カナリア」の広告のキービジュアルは、バトンリレーのように繋がってゆく布地です。赤い布が「テネリア」で青い布が「カナグル」のイメージです。ふたつが合わさって、黄色い布の「カナリア」となります。どうやら「カナリア」のイメージカラーは黄色に決まったようです。小鳥のカナリアが黄色いからでしょう。製品名同様、覚えやすい工夫が施されています。

全体的に、医薬品広告のトーン&マナーに合った誠実で上品な仕上りになっています。合剤というのが分かりやすいビジュアルですね。よ〜く見ると布の結び目が小鳥の“カナリア”になっています。面白いですね。今後、小鳥ちゃんのキャラクター展開などはあるのでしょうか。シンボルマークは有効成分の頭文字である「T」と「C」が合わさって出来たものです。

お分かりいただけただろうか・・・

▼DPP-4阻害薬の違い

・1日1回投与か、1日2回投与か、一週間に1回投与か
・排泄は何型か
・DPP-4を選択的に阻害できるか
・血糖を上昇させるグルカゴン(GLP-1)の分泌を抑制できるか
・薬価の違いはどうか

▼主なDPP-4治療薬の特徴

ジャヌビア】:腎排泄型、実績が豊富、75歳以上の高齢者向き
テネリア】:胆汁・腎排泄型、半減期が24時間と長い、日本発
トラゼンタ】:胆汁排泄型、腎機能に関係なく使用可
スイニー】:腎排泄型、中性脂肪やLDLコレステロールを下げる効果
オングリザ】:腎排泄型、解離半減期が長く、効果が持続する
マリゼブ】:腎排泄型、週1回で他のDPP-4阻害剤と同等の効果






▼糖尿病市場の配合錠への切替えは進む?

市場を拡大し続けているDPP-4阻害剤ですが、売上高を見るとやや頭打ちの状態です。DPP-4トップの「ジャヌビア」は、2014年の薬価改定から下降気味で、売上が伸びているのは「トラゼンタ」と「テネリア」の2製品となっています(2013〜2016年度)。

この状況を打破するために期待されているのが配合剤です。糖尿病治療薬市場では、DPP-4阻害剤と他の薬剤を合わせた配合剤が増えています。これまで、ビグアナイド系やチアゾリジン系を配合した製品が発売されてきましたが、ついにSGLT-2阻害剤を配合した「カナリア」も登場しました。生活習慣病領域という大きな市場に、単剤と配合剤が乱立している状態です。

この構図、何かに似ていませんか? そうです。降圧剤(高血圧治療薬)の市場に良く似ています。降圧剤はARB+他の薬剤という配合剤が流行り、出始めた当初はシェアを高めていましたが、数年経過した後の売上はピーク時予想の50%前後とあまり振るいませんでした。予想以上に売れているのは「アイミクス」くらいです。糖尿病治療薬の配合剤にも、厳しい道が待っているのかもしれません。

中医協(中央社会保険医療協議会)の資料によれば、「カナリア」発売後10年でピーク時の販売金額は【68億円】と予測されています。苦戦する降圧剤市場の配合剤を踏まえているのか、かなり控えめな数字です。「テネリア」とSGLT2阻害剤を併用している患者は国内で約45万人と言われていますが、この中のどのくらいの割合の患者が「カナリア」へ切り替えるのかは、今のところ専門家でも予測がつかないというのが実情のようです。

▼重大な副作用に急性膵炎が追加(追記:2018年4月)

2018年3月、厚労省は一部のDPP-4阻害薬について添付文書の改訂を指示しました。改訂の対象とされたDPP-4阻害薬は、「スイニー」、「テネリア」、「カナリア」、「トラゼンタ」で、重大な副作用に【急性膵炎】が追加されました。経口する糖尿病薬の中で、副作用に急性膵炎の記載があるのはDPP-4阻害薬だけで、注意が必要です。

2018年3月末現在で、重大な副作用に【急性膵炎】が記載されていないDPP-4阻害薬は、「マリゼブ」と「ザファテック」のみとなりました。


製品名:カナリア配合錠
一般名:テネリグリプチン/カナグリフロジン
DPP-4阻害剤/SGLT2阻害剤配合錠
田辺三菱
第一三共

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