エリキュース/新薬創出加算で明暗を分けたDOAC

私が私に選ぶなら

▼エリキュースとは?

「エリキュース」は、「リクシアナ」、「イグザレルト」に次ぐ国内3番目のFXa阻害剤です。

「エリキュース」は血液凝固阻止薬として、血液が固まるのを抑え、血管内で血が固まって起こる病気(脳卒中、血栓塞栓症)を予防します。主に、非弁膜症性心房細動患者の【虚血性脳卒中】【全身性塞栓症】【静脈血栓塞栓症】の治療および、再発防止として使用されています。

血液凝固阻止薬は、使用すると出血しやすくなることが課題となっており、重篤な出血の場合には死亡に至るケースもあります。出血しやすいかどうかは血液検査などでも正確にはわからないため、注意が必要です。

▼心房細動とは?

心房細動は、不整脈の一種です。心臓は4つの部屋に分かれています。そのうちの「心房」と呼ばれる上部2つの部屋で生じた異常によって起こる不整脈です。

心房細動が起こると、どきどきしたり胸が苦しくなったり、心臓が痙攣のように不規則に震え、結果として、脈が不規則(速くなったり遅くなったり)になってしまいます。心房細動は高齢になるほど発生率が高くなり、女性よりも男性の割合が多いのが特徴です。国内では約70万人が心房細動を抱えていると推測されています。

心房細動自体が命に関わることはほとんどありませんが、心拍数が高い状態が続くと、心臓の機能が低下し、心不全を引き起こす可能性もあります。また、心房細動が起こると、心房の中の血液の流れるスピードが低下し、血液が上手く流れなくなってしまいます(血液が心房の中で固まりやすく血栓ができやすい状態になる)。

そこで形成された血栓が流れて、脳の血管に達して脳で詰まってしまうと、脳梗塞を引き起こします。ちなみに、脳梗塞の15%が心房細動による血栓が原因と言われています。

▼エリキュースの副作用

主な副作用は、出血です。重篤な出血の場合には死亡に至るケースもあります。内訳は、頭蓋内出血(頻度不明)、消化管出血(0.6%)、眼内出血(0.3%)となっています。その他の重大な副作用としては、間質性肺疾患、肝機能障害が報告されています。

「エリキュース」などの経口抗凝固薬の服用を早期中止すると、治療完遂後の血栓発生率や治療中の出血率よりも高い頻度で血栓を生じます。しかし、これは抗凝固薬を用いない状態に戻っただけで、投与中止による反跳作用ではないとされています。このリスクを軽減させるためには、他の抗凝固薬を使用するしかありません。

▼その他の血液凝固阻止剤

FXa阻害剤としては、他にも「イグザレルト」「リクシアナ」などが出ています。同じ血液凝固阻止剤の「プラザキサ」とは作用機序が異なります。なお、「プラザキサ」「エリキュース」は1日2回の服用で、「イグザレルト」「リクシアナ」が1日1回の服用です。



▼DOAC4剤、新薬創出加算で明暗(追記:2018年3月)

経口抗凝固薬(DOAC)市場で、しのぎを削っている「リクシアナ」「プラザキサ」「イグザレルト」「エリキュース」ですが、「イグザレルト」と「エリキュース」が、新薬創出・適応外薬解消等促進加算の対象から外れることになりました。つまり、DOAC市場の売上トップ2製品が加算の対象外になったということです。

今回の見直しによって、「リクシアナ」と「プラザキサ」は、ジェネリック参入や収載後15年経過で資格を失わない限り、改定の都度、加算を受け続けることになります。一方、「イグザレルト」と「エリキュース」は、希少疾病の効能追加や有用性など、新たに条件を満たさない限り、加算を受けることが出来なくなりました。

DOACの売上トップ2が加算の対象外に

▼広告のキービジュアル

広告のビジュアルは、医師と対面している中年男性患者(医師自身)。同じ顔をしているので、一瞬「おや?」っと思わせる想定外の展開です。“私が私に選ぶなら”というキャッチコピーが秀逸で、写真もドッペルゲンガー的で面白く仕上がっています。

医師と患者の間で、信頼関係を構築していることが伝わってくるようなビジュアルです。“信頼”という言葉を綺麗事ではなく、実感させるように工夫されています。想定外の要素(ここではドッペルゲンガー風の写真)を取り入れることで、視る人の心理に
“信頼”というイメージを自然にすり込ませるテクニックです。

また、「私(医者)が自分に処方するなら、エリキュースを選ぶ」という“隠れメッセージ”としても機能しています。自主規制なのか、前回記載されていた「有効性と安全性の両立」というコピーが今回は削除されています。


一般名:アピキサバン
製品名:エリキュース錠2.5mg,5mg
血液凝固阻止剤/Fxa阻害薬/経口FXa阻害剤
ファイザー
ブリストル・マイヤーズ

関連記事

カテゴリー

スポンサードリンク