SPPARMα
▼パルモディアとは?
「パルモディア」は“SPPARMα”(スパームアルファ)と呼ばれる世界初の薬剤です。PPARαという核内受容体を活性化することで、中性脂肪を低下させる高脂血症治療剤です。フィブラート系としては、日本では二十数年振りの新薬。2019年6月で発売1周年となり、【投薬期間制限】が解除されました。
「パルモディア」は第2世代フィブラート系の高脂血症治療剤で、従来のフィブラート系(リピディルなど)と同様、主に肝臓で発現している核内受容体のペルオキシソーム増殖剤活性化レセプターα(PPARα)を活性化させます。
「パルモディア」は治療の標的遺伝子の転写を選択的に調整し、その他の遺伝子には出来るだけ影響しないという【選択的PPARαモジュレーター】を目指して開発されました。脂質代謝に関与する遺伝子をターゲットに絞るというコンセプトは、合併症や併用薬による処方制限を考えると有益です。
他のフェノフィブラート系薬と仕組みは同じですが、今までの薬剤とは違い選択的にPPARαに結合したあとで、特異的なPPARαの立体構造変化をもたらすことが解明されています。この立体構造の変化によって、肝臓などの脂質代謝に関わる遺伝子の発現を調節し、脂質代謝を改善していきます。
フェノフィブラート(リピディル)やベザフィブラートなど、他のフィブラート系に比べて、かなりの低用量で高い効果(中性脂肪の低下作用とHDL-コレステロールの増加作用)が期待でき、副作用が少ないというのが特徴です。従来のフィブラート系薬剤と比べて“効果が大きく、リスクが小さい”ということです。
フィブラート系は、中性脂肪を低下させる作用が強いので、高脂血症の中でも中性脂肪が多いタイプ(高トリグリセリド血症)に向いている薬剤とされています。「パルモディア」はフィブラート系で課題だった“スタチン系との併用”においても高い忍容性を示すとされており(腎機能が正常ならスタチンとの併用可)、製造販売元の興和としては、将来的には海外展開も視野に入れ、主力製品の「リバロ」に替わる次世代の主力品として育てていくということです。
今後の適応症の追加なども見込んで、ピーク時の国内売上は700億円以上を目標としています。中性脂肪低下のニーズがある患者への第一選択薬へ育てていく狙いです。
▼肝機能を悪化させにくいフィブラート系
「パルモディア」は、安全性にかかわる腎臓や肝臓の遺伝子には作用しないというコンセプトで創薬されました。中性脂肪低下作用と善玉コレステロール増加作用が確認されたことで、“既存のフィブラート系薬剤の中で一番強い”と言われています。
従来のフィブラート系薬剤は、肝障害が起こりやすいことが課題でしたが、「パルモディア」は肝機能検査値を悪化させず、脂肪肝改善(ALTやγ-GTPの低下)作用が認められました。
また、今までのフィブラート系薬剤は、全て“腎排泄型”でしたが、「パルモディア」は“肝代謝型”で成分のほとんどは糞中へ排泄されます。そのため、フィブラート系薬で常に課題となっている“腎機能が低下している患者”にも使いやすいと言われています(腎障害患者でも有害事象の発現リスクは変わらない)。
「パルモディア」は、2018年6月発売の新しい薬剤ですので、安全性の確立についてはこれからです。スタチン製剤との併用による“横紋筋融解症”を起こさないように万全を期すため、慎重に扱っていく必要があります。
▼パルモディアとリピディルの違い
「パルモディア」と「リピディル」は、どちらも“フィブラート系”の高脂血症治療薬です。2017年7月に承認された「パルモディア」は、従来品に比べて副作用が少ないのが特徴です。他のフィブラート系よりもPPAAα(核内受容体のひとつ)に対する選択性が高いことが、副作用の低減に繋がっていると考えられています。2011年3月に承認された「リピディル」は、代謝酵素が関係する相互作用が少ないのが特徴の薬です。
“フィブラート系”の高脂血症治療薬は、肝機能に関係する副作用に注意が必要です。「リピディル」は、肝機能障害があるケースでは禁忌となっており、使用することができません。新しい薬の「パルモディア」は、軽度の肝機能障害であれば用量を少しずつ調節しながら使用することができます。
▼四度目でついに収載へ
「パルモディア」は、2017年7月に承認を得たのにもかかわらず、薬価収載が三度も見送られていました。2017年8月、11月、2018年4月と合計三回も収載の機会を見送った原因は、“有用性加算”の要求です。
興和側は、「パルモディア」が持つ特性を根拠に、有用性加算の適用を求めていましたが、薬価算定組織は「パルモディアは既存薬と同等の位置づけの薬剤である」として、主張を受け入れず、交渉は難航していました。結果的に、加算のない“類似薬効比較方式(II)”で算定。0.1mg 1錠で33.90円の薬価となりました。これにより、ピーク時の販売予測金額は140億円となり、興和の想定していた金額を下回ることになりそうです。
「パルモディア」の現在の適応は高脂血症のみですが、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)および非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD) と原発性胆汁性胆管炎で国内臨床試験を進めており、将来的な適応拡大を見据えています。
※2018年6月1日に発売されました。
▼フィブラート系・スタチン系との併用「原則禁忌」が解除
2018年10月「パルモディア」は、腎機能に関する臨床検査値に以上が認められる患者におけるSPPARMαおよびフィブラート系薬剤とスタチン系薬剤との併用に関する「原則禁忌」が解除されました(ただし、添付文書「重要な基本的注意」に追記あり)。
※「原則禁忌」は解除されましたが、クレアチニンの上昇や筋障害には常に注意するなど、引き続き慎重な経過観察が必要です。
▼主な高脂血症治療薬
フィブラート系 | 中性脂肪を下げる効果が強いので、中性脂肪が高い患者に使用されることが多い。善玉(HDL)コレステロールを上げる効果もあり。 |
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スタチン系 | 悪玉(LDL)コレステロールを下げる効果が強い。善玉コレステロールを上げる効果は弱い。 |
レンジ系 | 悪玉コレステロールを下げる効果あり。スタチン系と併用することが多い。 |
プロブコール | 悪玉コレステロールを下げる効果あり。 |
ニコチン酸 | 善玉コレステロールを上げる効果あり。悪玉コレステロールを下げる効果は弱い。 |
小腸吸収型 | 悪玉コレステロールを下げる効果あり。スタチン系と併用することが多い。 |
PCSK9 | 悪玉コレステロールを強力に下げる。重度の患者に使用。注射剤。 |
▼フィブラート系 高脂血症治療薬
▼広告のキービジュアル
広告のキービジュアルは、SPPARMαのシンボルマークです。パルモディアが核内(コファクター)の受容体(PPARα)を活性化させる、という意味が込められています。背景の人々の顔写真は、「TGが150mg/dL以上の高脂血症患者」「HDL-Cが50mg/dL以下の患者」を表現しています。よく見ると、顔が何度も重複しているので、ありふれた素材写真でしょう。発売1周年を過ぎ、龍を使ったキービジュアルから大幅に変更しています。
※発売当初のキービジュアル
一般的に、医薬品のライフサイクルは「導入期」→「成長期」→「成熟期」→「衰退期」という4つの段階があります。発売したばかりの「導入期」は、製品名を覚えてもらったり、少しでも印象を残す必要があるのでインパクト(パルモディアの場合、龍)が重要ですが、「成長期」へと向かうビジュアルは、製品の特徴を知ってもらったり、ブランドイメージを育てたりといったフェーズへと移行してゆきます。
【コファクターとは?】
コファクターとは、酵素の活性発現に必要な補助因子。パルモディアはPPARα受容体と結合し、核内に移行。コファクターと転写因子複合体を形成してDNAに結合します。
一般名:ペマフィブラート
製品名:パルモディア錠0.1mg
フィブラート系/高脂血症治療剤/SPPARMα
興和
興和創薬
2018年6月1日発売
発売1周年