エクフィナ/非ドパミン作動性作用を併せ持つMAO-B阻害薬

▼エクフィナとは?

「エクフィナ」は、パーキンソン病(PD)の治療薬です。海外では、米国やヨーロッパなど17ヵ国で発売されています(2019年時点)。

【適応】:レボドパ含有製剤で治療中のパーキンソン病におけるwearing off現象の改善
【薬価】:50mg、1錠 963.90円(1日薬価:963.90円) ※2020年4月現在

「エクフィナ」は、可逆的かつ選択的なモノアミン酸化酵素B型(MAO-B)阻害薬と呼ばれる薬剤です。中枢においてMAO-Bによるドパミン分解を抑え、シナプス間のドパミン濃度を高めることによって、ドパミンの作用を補強し、パーキンソン病の症状を改善します。基本的に、レボドパ含有製剤と併用して用いる薬です。

パーキンソン病治療薬は、まだ根本治療薬がなく、症状を軽減させる対症療法薬しかありません。現在も大手製薬会社がパーキンソン病の新薬を開発し続けています。

▼エクフィナの特徴

【1】 非ドパミン作動性作用を併せ持つMAO-B阻害薬
【2】 1日1回投与の薬剤(レボドパ含有製剤と併用)
【3】 食事の影響を受けないので、時間に左右されない

現在、パーキンソン病の薬物治療としては、脳内に不足したドパミンを補充するドパミン補充薬(レボドパ:L-dopa含有製剤)、麦角系・非麦角系のドパミンD2受容体作動薬(ドパミンアゴニスト)、モノアミン酸化酵素B(MAO-B)阻害薬カテコール-O-メチル基転移酵素(COMT)阻害薬などが使用されています。

ドパミン補充薬 ドパストン、ドパール、ドパゾール、マドパー、メネシットなど
ドパミンD2受容体作動薬 ペルマックス、ベセラール、カバサール、パルキゾン、エレナントなど
MAO-B阻害薬 エフピー、アジレクト、エクフィナなど
COMT阻害薬 コムタンなど

「エクフィナ」は、既存の「エフピー」(セレギリン)、「アジレクト」(ラサギリン)に続く、MAO-B阻害薬で、α-アミノアミドに分類される新しい化学構造を持つ薬剤です。

MAO-B阻害薬は、ドパミンやセロトニンの分解酵素であるMAO-Bを阻害することで脳内のドパミン濃度を上げる薬で、「エクフィナ」の特徴としては、MAO-B阻害作用に加えて、非ドパミン作動性作用(電位依存性ナトリウムチャネル阻害作用を介するグルタミン酸放出抑制作用)を併せ持つことが挙げられます。

「エフピー」や「アジレクト」などの既存のMAO-B阻害薬が非可逆的であることに対して、「エクフィナ」は可逆的なMAO-B阻害作用を有することが確認されています。

▼エクフィナの副作用

「エクフィナ」の主な副作用は、ジスキネジア(12.4%)、不眠症、頭痛、浮動性めまい、悪心、便秘、転倒、ALT増加(各1~5%未満)などが報告されています。

重大な副作用としては、幻視(3.2%)や幻覚(1.1%)などの神経症状、傾眠(1.9%)、突発性睡眠(0.4%)、衝動制御障害(0.2%)が認められているほか、稀にですが、セロトニン症候群、悪性症候群を生じる可能性もあります。

主な副作用 ジスキネジア、不眠症、頭痛、浮動性めまい、悪心、便秘、転倒、ALT増加
重大な副作用 幻視、幻覚、傾眠、突発性睡眠、衝動制御障害、セロトニン症候群、悪性症候群

薬剤使用に際しては、既存のMAO-B阻害薬「エフピー」や「アジレクト」と異なり、「エクフィナ」の適応症は【パーキンソン病におけるwearing off】に限定されています。また、“レボドパ含有製剤との併用が必須”であることに留意して下さい。

▼ウェアリング・オフ(wearing-off)とは

パーキンソン病の一番基礎となる薬は、ドパミン補充薬(レボドパ:L-dopa)です。ドパミン補充薬には長期服用によって効果が落ちてしまう、という欠点があります。効果的な時間がだんだん短くなり、次第に服薬する前にパーキンソン病の症状があらわれてしまうという問題です。専門用語で“ウェアリング・オフ(wearing-off)”と言います。意訳すると、徐々に消えるというような意味です。減衰効果とも呼ばれます。

▼パーキンソン病とは

パーキンソン病というのは、脳幹に属する中脳の黒質と、大脳の大脳基底核にある線条体という部分に異常が起こる神経疾患です。病理学的には、中脳の黒質線条体ドパミン神経の不可逆的な変性・脱落を特徴としています。

簡単に説明すると、パーキンソン病とは、脳内の神経伝達物質“ドパミン”が不足して情報伝達経路が上手く働かない状態のことを指します。“ドパミン”が不足した結果、手足の震えや身体の動きが上手くいかない、といった症状が発症するわけです。

パーキンソン病は、静止時振戦、強剛、無動、姿勢反射障害の【4大運動症状】を特徴とする原因不明の進行性変性疾患です。自律神経障害、うつ、睡眠障害、認知症などの非運動症状も高頻度で合併します。

▼パーキンソン病の種類

パーキンソン病には孤発性パーキンソン病、家族性パーキンソン病、若年性パーキンソン病と多くの種類があり、治療薬も豊富に出ているので、患者の症状や年齢によって服用量や併用薬が異なってきます。特に服用初期の患者は、薬の効果よりも副作用の方が先に出てしまったりすることもあります。症状に合わせた服用量の調整が非常に難しいと言われていますので、専門医とよく相談しながら、1/2、1/3と分けて服用するなど、食後何分後に飲むなど、その人に合ったオーダーメイドの服用量・併用薬の組み合わせを考えることが重要とされています。


▼次世代のパーキンソン病薬

次世代のパーキンソン病治療薬の開発も始まっています。日本とカナダとフランスのグループが中心となり、αシヌクレインというタンパク質をターゲットした抗体医薬を研究しています。αシヌクレインは、パーキンソン病の進行を阻止する鍵と考えられており、上手くいけば病気の進行を更に遅くできる可能性があると言われています。2022年頃を目標に、実用化を目指しています。

▼広告のキービジュアル

広告のキービジュアルは、笑顔で歩く女性。パーキンソン病の特徴である静止時振戦、強剛、無動、姿勢反射障害の【4大運動症状】を抑えた様子を描いています。

風のようになびいているのは、黄色と紫の花。おそらく黄色の花がMAO-Bで、紫の花がドパミン。光り輝く粒子が「エクフィナ」のイメージです。脳内のドパミン分解を抑え、シナプス間のドパミン濃度が高まっている様子を表現しています。

エクフィナHPより

一般名:サフィナミドメシル酸塩
製品名:エクフィナ錠50mg
パーキンソン病治療剤/モノアミン酸化酵素B型(MAO-B)阻害薬
エーザイ
2020年1月6日発売発売

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