▼リクシアナとは?
「リクシアナ」とは、FXa(活性化血液凝固第Ⅹ因子)を選択的、可逆的かつ直接的に阻害する日本初の経口抗凝固剤のことです。血管の中で血液が固まり、血の流れを止めてしまう状態を“血栓”といいます。放っておくと血管が詰まってしまうので、その先の組織が障害を受けて機能を失ってしまいます。血栓がきっかけとなって起こる深刻な症状として、心筋梗塞や脳卒中(脳梗塞)が挙げられます。
動脈の血栓の予防には、血液が固まるのを抑える必要があります。方法として、血小板の機能を抑制するというやり方と、血管内の状態を改善する(いわゆる血液サラサラ)というやり方の2種類があります。「リクシアナ」は静脈血栓塞栓症に有効な“血液凝固阻止剤”です。血液を固まりにくくし、血栓の形成を防ぐことで、静脈血栓塞栓症の再発リスクを予防します。
▼ワーファリンとの違い
同じ抗凝固薬の「ワーファリン」はとても有用な薬で、これがないと困る患者もたくさんいました。課題として、相互作用が多いという欠点があり、禁忌の食品(納豆・青物野菜など)も多いので、使い勝手が悪い薬でした。
「リクシアナ」は「ワーファリン」とは作用のメカニズムが異なり、定期検査も不要(というか検査不可)で、食べ物の制限がほとんどない薬です。また、「リクシアナ」は経口薬なので、毎日注射する手間が必要ありません。同じFXa阻害薬の注射剤と比較して、1日あたりの薬価が約3分の1と安価なこともメリットのひとつです。
もちろん注意点もあります。副作用として消化管出血と月経過多による腟出血の発現率が、「ワーファリン」に比べて多いことです。それから「ワーファリン」よりも、出血の予測が難しいことです。現時点では、「プラザキサ」に対する「プリズバインド」ような抗凝固活性を中和する薬剤もありません。従来の血液凝固阻止剤に較べて使いやすいとはいえ、効きすぎによる出血過多には充分な注意が必要です。
▼リクシアナと納豆
従来の抗凝固薬(ワルファリンカリウム)には、ビタミンK含有食品(納豆や青物野菜など)を摂ることによって、薬の効き目が弱まるという欠点がありました。しかし、「リクシアナ」はFXa(活性化血液凝固第Ⅹ因子)に直接作用する薬なので、ビタミンKには依存しません。
「リクシアナ」には承認時までの調査で、納豆や青汁、クロレラ食品といったビタミンK含有食品との相互作用の報告はありません。
▼その他の血液凝固阻止剤
同系のFXa阻害剤としては、他にも「イグザレルト」「エリキュース」などが出ています。同種の血液凝固阻止剤としては「プラザキサ」などが出ています。なお、「プラザキサ」「エリキュース」は1日2回の服用で、「イグザレルト」「リクシアナ」が1日1回の服用です。「リクシアナ」は、各疾患への用量調節が簡単で、低用量を視野に入れられます。また半量であれば、最も安いDOACとなっています。
▼重大な副作用の追加(追記:2018年1月)
2018年1月、厚生労働省が抗精神病薬「リクシアナ」に対して、添付文書の改訂を指示しました。具体的には、「リクシアナ」の【重大な副作用】に“間質性肺疾患”を追加するという内容です。間質性肺疾患は、主に肺胞や細気管支の間質に病変が認められる病気で、喘息や一般的な細菌性肺炎などに比べると、あまり見られない部類の疾患です。
▼抗凝固薬のシェア(DOAC売上比較)
「リクシアナ」は経口抗凝固薬(DOAC)市場全体では第3位の売上で、競合品の後を追うポジションですが、初めて抗凝固療法を試す患者や他社競合品から切り替える患者では、DOAC市場でシェア30〜40%と第1位の座を獲得しています(2018年現在)。2018年度は国内だけで694億円の売上を記録し、前年比43.2%増と急成長しています。
第一三共では、他社ではあまり触れない“DOACの高齢者に対するリスク&ベネフィット”を積極的に現場へ報告しており、情報提供の質の高さにも好感が持たれています。今後も市場規模が大きい“心房細動(AF)”の新規患者層を拡げて、シェアを伸長していく計画です。
抗凝固薬(DOAC)市場は拡大傾向で、全世界では2兆円規模に膨らんでいます。「リクシアナ」は世界で販売しているグローバル製品ですが、いまだ国内での売上が50%以上と、日本市場に依存している状態です。しかし近年好調な欧州市場など、着実に海外での売上を伸ばしてきています。2020年度は、全世界の売上高1200億円を目標にするということです。
製品名(会社名) | 2015年度売上 | 2016年度売上 | 2017年度売上 |
---|---|---|---|
イグザレルト(バイエル薬品) | 517億円 | 641億円 | 715億円 |
エリキュース(ブリストルマイヤーズ) | 364億円 | 531億円 | 未公開 |
リクシアナ(第一三共) | 130億円 | 250億円 | 453億円 | プラザキサ(ベーリンガー) | 310億円 | 285億円 | 259億円 |
▼心房細動とは?
心房細動は、不整脈の一種です。心臓は4つの部屋に分かれています。そのうちの「心房」と呼ばれる上部2つの部屋で生じた異常によって起こる不整脈です。
心房細動が起こると、どきどきしたり胸が苦しくなったり、心臓が痙攣のように不規則に震え、結果として、脈が不規則(速くなったり遅くなったり)になってしまいます。心房細動は高齢になるほど発生率が高くなり、女性よりも男性の割合が多いのが特徴です。国内では約70万人が心房細動を抱えていると推測されています。
心房細動自体が命に関わることはほとんどありませんが、心拍数が高い状態が続くと、心臓の機能が低下し、心不全を引き起こす可能性もあります。また、心房細動が起こると、心房の中の血液の流れるスピードが低下し、血液が上手く流れなくなってしまいます(血液が心房の中で固まりやすく血栓ができやすい状態になる)。
そこで形成された血栓が流れて、脳の血管に達して脳で詰まってしまうと、脳梗塞を引き起こします。ちなみに、脳梗塞の15%が心房細動による血栓が原因と言われています。
▼OD錠発売で売上伸長(追記:2018年2月)
2018年1月末、第一三共は2017年4月〜12月期の売上げが、前年同期比0.9%増の7,410億4,700万円だったと発表しました。欧米を中心に降圧剤の「オルメテック」の特許切れの影響で大きな売上げ減(71.5%、約101億円の減少)となりましたが、一方で「リクシアナ」が93.8%増の約347億円と好調でした。
要因として、「リクシアナ」のOD錠(2017年11月発売)の存在が挙げられます。“リクシアナOD錠”は経口抗凝固薬(DOAC)市場で唯一のOD錠ということで、高齢者の服薬負担の軽減という要素が医療機関に受け入れられている、と第一三共は分析しています。競合他社の抗凝固薬(DOAC)はほとんどが海外品で、OD錠を出して対抗するには時間がかかるため、第一三共が一歩リードしているという状況です。
▼DOAC4剤、新薬創出加算で明暗(追記:2018年3月)
経口抗凝固薬(DOAC)市場で、しのぎを削っている「リクシアナ」「プラザキサ」「イグザレルト」「エリキュース」ですが、「イグザレルト」と「エリキュース」が、新薬創出・適応外薬解消等促進加算の対象から外れることになりました。つまり、DOAC市場の売上トップ2製品が加算の対象外になったということです。
今回の見直しによって、「リクシアナ」と「プラザキサ」は、ジェネリック参入や収載後15年経過で資格を失わない限り、改定の都度、加算を受け続けることになります。一方、「イグザレルト」と「エリキュース」は、希少疾病の効能追加や有用性など、新たに条件を満たさない限り、加算を受けることが出来なくなりました。
▼広告のキービジュアル
広告のビジュアルは、写実的なイラストで、様々な人々の明るい暮らしが描かれています。血管が道になっているところがユニークです。“OD錠発売準備中”のマークにも工夫が見られます。錠剤が溶けてゆく様子を上手く描いています。なお2017年8月に承認された「リクシアナOD錠」は、11月29日に発売されました(2017年12月追記)。
この水彩画風のイラストは、患者説明用の動画やパンフレットと連動しているビジュアルです(武田あかねさんというモデルを起用しています)。
一般名:エドキサバン トシル酸塩
製品名:リクシアナ錠15mg,30mg,60mg、リクシアナOD錠15mg,30mg,60mg
血液凝固阻止剤/Fxa阻害薬/経口FXa阻害剤
第一三共
リクシアナOD錠、2017年11月29日発売