Life is Beautiful
ありふれた、かけがえのない毎日へ。
ギリアド・サイエンシス社の企業広告です。こちらの公式サイトからPDFをダウンロード出来ます(2017年7月現在)。
以前の企業広告では“「治したい」にこたえたい”というスローガンを掲げていました。革新的な治療法を開発することで、患者さんの願いを叶えていこう、という企業理念です。
▼ギリアドとは?
ギリアドは、米国を拠点とする世界第2位の大手バイオ製薬会社であり、バイオテクノロジーを使って、新しい治療薬の開発と商品化を行っています。1987年の創業以来、HIV、B型肝炎、C型肝炎、インフルエンザといった感染症領域が中心事業です。
一番有名な薬は抗インフルエンザ薬「タミフル」でしょうか。大変効果がある薬ですが、異常行動との関連が疑われて話題になりました。また、抗レトロウイルス薬「ツルバダ(Truvada)」が世界で初めてHIV(エイズウイルス)の感染を予防する薬として承認されたことも大きなニュースになりました。
C型肝炎の領域では、経口治療薬「ソバルディ」とその合剤「ハーボニー」を開発し、世界的に支持を広げており、日本でもその存在感は高まっています。
主力領域である肝炎領域である程度の手応えを掴んだギリアドは、次の目標として、「治したい=治癒」の先にある「未来」を作るために――というコンセプトで「患者さんの日常を取り戻し、ありふれた、かけがえのない毎日へ」という新しい企業理念を描きました。青空が美しい、映画のポスターのような綺麗な広告です。
ギリアド・サイエンシズの社名は、古代より治す力があると知られていた木「ギリアドバーム(Balm of Gilead)」に由来したもので、ロゴマークもその木の葉を表現しています。現代のバイオサイエンスによる治す力を駆使して、世界中の患者さんとその家族に笑顔をもたらそうとするギリアド・サイエンシズの企業姿勢を象徴しています。
▼癌や血液疾患、炎症疾患へ参入(2018年3月:追記)
ギリアドの主力製品は“肝疾患領域”ですが、2020年以降は、ガンや血液疾患、炎症性疾患などの領域に新規参入する方針です。世界的な開発力を活用し、日本市場のニーズをマーケティングしながら、3〜5年をかけて年間1製品の上市を狙っていく予定です。
▼企業広告のメリット
実は、こうした企業広告は、社会貢献活動、文化活動、経営理念などを外へPRしていくことによって“社会的信用を高める”という効果があります。つまり親密度や信頼度を高めて“自分の会社のファンになってもらう”ということです。いわゆるブランディングです。たとえば、人が同じ性能で同じ価格の製品を選ぶ場合、「環境に配慮している」とか「誠実で信頼できる」といった“自分が付き合える企業かどうか”で差をつけるからです。
企業広告は企業のイメージアップを図ることで、結果として自社製品の売上拡大に寄与することを狙っていますが、メリットはそれだけではありません。企業広告の効果は、例えば「あの会社だったら、働いてもいいな」といった優秀な人材の確保や「世間から立派な会社だと思われているし、自分も見合うように頑張らなくちゃ」といった従業員の意識にも充分な効果を発揮すると言われています。機械メーカーの村田製作所が、盆と正月に実家へ帰省する社員が家族に認められるためにTVコマーシャルを流した、というのはあまりにも有名な逸話です。
企業広告はイメージの向上に繋がるほかに、【参入障壁】を築くことができるので、大きな組織ほど優先的に取り組みたい施策となります。資本力がないメーカーは、企業広告のコストを敬遠して対応が遅れがちになります。例えば、“社会貢献活動には興味のない金儲け主義のメーカー”というレッテルを貼られてしまい、競争力が大きく低下する可能性があります。
体力のあるリーダー企業は、こういった企業理念を真っ先に表明することで、“社会貢献活動に前向きなメーカー”という評価を得て、ライバルメーカーのイメージを相対的に低下させることができます。つまり、企業広告というものは費用がかかっても、長い目で見た場合には得策となるのです。
いままでは、製品広告と企業広告は完全に分離して存在していましたが、最近では、製品広告と企業広告を一体としてとらえる発想が強まっています。医薬広告で言うと“C型肝炎”“疼痛”などの領域ごとで、企業広告を打ってくるケースです。これらは、企業広告を一歩推し進めて、製品の売上に繋げることを想定しています。製薬企業も商売ですから、やはりいろいろなことを考えて、仕掛けを練っているのです。
▼HIV検査はどこで受けられる?
HIVの検査は全国の保健所や自治体の特設検査施設(東京都南新宿検査・相談室)で、無料・匿名で受けることができます。有料になりますが、医療機関でもHIV検査を希望すれば受けることができます(約5,000円〜10,000円)。ちなみに献血された血液はHIV検査を行っていますが、HIV検査の結果は献血者本人には伝えないという決まりがあります。理由は、厳格なHIV検査を行っても、どうしてもHIVウイルスを見つけにくい期間(通常感染から数週間)があるので、HIV検査が目的の献血をなくすためです。
▼健康診断でHIV検査
厚生労働省は、健康診断を受ける際にHIV検査(エイズウイルス検査)が無料で受けられるモデル事業を2018年度から始めると発表しました。早期に感染が発見できて治療を行えば、エイズウイルスの発症を抑えることが可能で、パートナーへの感染リスクも減らせます。HIV検査を受けやすくして、早期発見・早期治療でエイズ発症防止につなげる考えです。試験的に数カ所で始め、実施施設を増やしていくということです。
▼HIV自己検査キット
アメリカなどでは、HIV自己検査キットが薬局で普通に手に入りますが、日本の薬局では入手困難です。日本でのHIV検査は、病院か保健所での検査が基本です。家庭で使用する自己検査キットとして日本で承認されたものはなく、海外からの輸入品となります。HIV自己検査キットはインターネットで購入可能ですが、偽造品や粗悪品が混入している場合もあります。アメリカでは、従来よりも簡単に検査できる“唾液による家庭用HIV検査キット(OraQuick In-Home)”が承認されていて、薬局などの店頭で購入が可能になっています。日本でも、HIV検査が簡単に出来る環境が早く整うと良いなと思います。