オブリーン/幻の肥満症治療薬

▼オブリーンとは

「オブリーン(セチリスタット)」は、リパーゼ阻害剤と呼ばれる肥満症治療剤です(未発売)。日本では、2003年に武田薬品工業が英国Alizyme社から開発および販売に関する権利を取得し、日本で初めての脂質吸収を抑制するリパーゼ阻害剤として承認され、話題となっていました。

抗肥満薬の「オブリーン」は、消化管や膵臓から分泌されるリパーゼ(脂肪分解酵素)を阻害し、脂質の吸収を抑制することで体重を落とし、さらに内臓脂肪を減少させ、生活習慣病に関する数値を改善する、とされています。治療の対象は、肥満(BMI25以上)で糖尿病を合併している患者と条件が付きますが、当初「販売後十年で売上市場140億円」と云われ、“出せば売れるだろう”と盛り上がっていたのを良く憶えています。

▼保険適用拒否の経緯

しかし、まさかの保険適用拒否。製造販売の承認は受けたものの、土壇場の2013年11月中央社会保険医療協議会(中医協)の総会で、【収載保留】という異例の事態が起こりました。あまり効果が期待できないというのが、大きな理由です・・・。脂質減少効果が対プラセボ比で2%という治験結果で、たしかに効果てきめんという感じではありませんが、開発が困難な肥満症の領域で、ようやく承認にこぎ着けた新薬だっただけに、武田薬品のダメージもかなり大きかったのではないでしょうか。

いままで我が国では薬事承認を経て製造販売承認を得たものは、オートマティックに保険収載されてきましたので、このニュースは業界を驚かせました。しかし、調べてみると例外もあります。1999年に登場したファイザーの勃起不全治療薬「バイアグラ」です。医療用医薬品として承認されましたが、中医協に「病気というよりも、生活の改善」と判断されて、薬価収載が見送られ、保険適用外となりました。

「オブリーン」も中医協の総会で拒絶され、最終的に保険適用拒否(保険適用外)という悲劇を招きました。武田薬品工業は医薬品医療機器総合機構(PMDA)による事前評価相談制度を活用していますし、ある程度の自信を持っていたと思います。それにしても、“あまり効果がない”というのが判っているのなら、厚生労働省は承認しなければ良いのに、と思ってしまいます。穿った見方をすれば、保険適用によって医療費の増加を恐れた国が保険適用を回避した、と見えなくもありません。その辺は、偉い人たちの間で相談というか、調整は行われないのでしょうか・・・。

▼購入方法は?

2017年8月現在、未発売のままで購入できません。武田薬品のwebサイトでもその後何の続報もありません。保険適用がなくても爆発的に売れた「バイアグラ」のような例もありますし、条件付きでも肥満改善のニーズは充分あると思うのですが、保険適用外だとビジネスとして旨味がない、という経営判断なのでしょう。

▼広告のキービジュアル

広告のキービジュアルは、ボーリング。OBLEANEの球が「内臓脂肪」や「血糖」「脂質」「血圧」「体重」を蹴散らしています。非常に分かりやすく、かつ爽快感のあるビジュアルです。未発売なのが残念なくらい、良いデザインだと思います。「発売準備中」で終ってしまったこの広告は、資料として結構レアな存在となりました。


一般名:セチリスタット
製品名:オブリーン錠120mg
肥満症治療剤
武田薬品工業

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