アーチスト/高血圧、狭心症、慢性心不全、3つの適応

アーチストの3つの適応症
高血圧/狭心症/慢性心不全

【警告】慢性心不全患者に使用する場合には、慢性心不全治療の経験が十分にある医師のもとで使用すること。

▼アーチストとは?

「アーチスト」は、日本で最初に慢性心不全に対する効能を取得した降圧薬です。β遮断薬(ベータブロッカー)という種類に分類される薬です。

もともとは、高血圧や狭心症に処方されていた薬でしたが、2002年に日本で初めて慢性心不全の保険適応を取得しました。日本人の慢性心不全患者における試験(MUCHA)で、生命予後や心機能を改善することが証明されています。

また、軽症、重症を問わず、慢性心不全において豊富なエビデンスを有する薬剤です。「あらゆる心不全治療薬の中で、最も効果的な薬剤はβ遮断薬」と言われています。

▼アーチストの作用機序

「アーチスト」の有効成分“カルベジロール”には、血管拡張作用と、心拍を穏やかにして、心臓に休息を与える効果があります。作用機序は、交感神経のα受容体とβ受容体を遮断することです。αとβの両方の受容体に機能することで、降圧作用が高まり、副作用は軽減されます。主に高血圧症に処方され、狭心症や心房細動に対する適応も持っています。

もともと「アーチスト」などのβ遮断薬は、心筋の収縮力を弱めるため(心臓の活動を抑制するため)、慢性心不全の治療薬としては、否定されていました。しかし、1996年に“US Carvedilol HF study”の結果が発表され、カルベジロール(アーチスト)がβ遮断薬として初めて、慢性心不全患者の生命予後を延長させることを証明しました。また、2001年のCOPERNICUS試験では、慢性心不全患者の全死亡リスクが34〜35%低下しました。日本人に対するエビデンスがあるということも、非常に大きな特徴です。

▼β遮断薬:ベータブロッカーとは?

ストレスなどによる交感神経系の興奮は、ノルアドレナリン(神経伝達物質)がβ受容体に結合することによって、心臓や血管へ伝わります。β遮断薬は、β受容体に結合して、このノルアドレナリンの結合を防ぐことによって心臓の心拍数を減らします。その結果として、血圧が下がるという仕組みです。

β受容体にはβ1、β2、β3の3種類が存在しますが、心臓にはβ1が多く、血管にはβ2が多く存在しています。β遮断薬には、こういった微妙に異なる受容体を選択的に遮断して、効果を高める工夫が施されています。

▼心保護を目的とした降圧薬

β遮断薬(ベータブロッカー)は、長い間高血圧治療の第一選択薬のひとつとして、カルシウム(Ca)拮抗薬やARB、ACE阻害薬、利尿薬と共に活躍してきましたが、2014年からは日本高血圧学会のガイドラインにおいて、第一選択薬から外されています

β遮断薬は高血圧治療の第一選択薬ではなくなりましたが、心不全や頻脈、狭心症、心筋梗塞後の患者にとっては、主要な降圧薬と言えます。現在、β遮断薬は“心保護を目的とした降圧薬”という位置付けとなっています。

▼アーチストの副作用

「アーチスト」は身体の循環器系に作用して、心拍数の上昇を抑制する薬ですので、心臓に負担がかかって副作用を及ぼすことがあります。服用初期には、身体がだるくなったり、めまいや立ちくらみを感じることがあります。

心臓の代表的な副作用として、徐脈があります。心拍数が極端に下がり、息苦しさや胸苦しさを感じる症状です。特に高齢者は、徐脈が起こりやすいので注意が必要です。

服用初期段階では、体がだるくなったり、めまいを感じることがあります。立ちくらみも起こしやすいです。これらは徐々になくなることが多い症状です。最初から高用量にするのではなく、安全性を重視して少量から様子を見ながら、徐々に増量することが良いとされています。

β遮断薬は一度中止すると再導入に時間がかかり、中止によって心不全憎悪や突然死が誘発される危険性もあります。自己判断で安易に投与を中止しないことが重要です。

その他の副作用としては、倦怠感、めまい、ふらつき、低血圧、むくみ、手足の冷え、しびれ感、目の乾燥、眠気、不眠などが報告されています。

▼メインテートとアーチストの違い

「アーチスト」は、「メインテート(ビソプロロール)」と同じ慢性心不全などの治療に用いられている薬です。「メインテート」はβ1のみに作用するのに対し、「アーチスト」はα遮断とβ1、β2遮断の作用があります。機能する箇所が微妙に異なるため、患者の症状やその他に罹っている病気によって使い分けがされています。

メインテート ・呼吸器疾患のある場合でも使用可
・心拍数が下がりやすいので、頻脈の治療に向いている
アーチスト ・呼吸器疾患がある場合、使用は困難
・心拍数に影響を与えにくいので、徐脈の症状にも使用可

▼広告のキービジュアル

広告のキービジュアルは、本棚の前で微笑む医者。スポットライトの光がハート(心臓)を描いています。医師の後ろの沢山の書籍は、「アーチスト」の特徴である“豊富なエビデンス”の象徴かもしれません。



一般名:カルベジロール
製品名:アーチスト錠1.25mg,2.5mg,10mg,20mg
降圧剤/β遮断剤/持続性 高血圧・狭心症治療剤
第一三共

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