レミケード/リウマチや潰瘍性大腸炎などに用いるバイオ医薬品

▼レミケードとは?

「レミケード」は関節リウマチ、潰瘍性大腸炎などの治療薬(生物学的製剤)です。抗TNF製剤と呼ばれる種類の注射剤です。田辺三菱製薬最大の主力製品で、年間の売上高は600億円を超えます(2016年度売上高:668億円)。

「レミケード」は、体内で異常に増えている TNFα(ティーエヌエフ・アルファ)という物質の働きを抑えることにより、症状を改善します(TNFαは、炎症や痛みの発現に起因している体内の物質)。「レミケード」は主に関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、乾癬に使われています(クローン病、ベーチェット病、強直性脊椎炎、川崎病などの適応もあり)。

「レミケード」を1回投与した月の薬剤費は約5万円と高額です。「レミケード」を2回投与した月や、点滴1回あたりの投与量を増やした月は、多くの場合、高額療養費制度が適用され、自己負担額が少なくなります。ただ、2017年8月に高額療養費の制度改正が行われましたので(70歳以上の上限額が改定)、高齢者の方はきちんと確認した方が良いと思います。

▼関節リウマチの治療目標を変えた画期的な薬

関節リウマチに対する有効な治療方法がなかった時代、リウマチ患者の関節破壊は次第に進行してゆき、約10年で半数が寝たきり状態になるという状況でした。

その状況を打破したのが「レミケード」です。それまでの関節リウマチの治療には対症療法しかなく、痛みや腫れに対して、ステロイドや非ステロイド性抗炎症薬で痛みを和らげることしか出来ませんでした。抗リウマチ薬も開発されましたが、関節破壊の進行を抑制出来たのは一部の患者だけという結果でした。

そんな中、既にクローン病の治療薬として使用されていた「レミケード」が2003年に関節リウマチの適応を取得しました。既存の抗リウマチ薬が効かなかった患者に対して、寛解あるいは低疾患活動性の達成まで可能になったのです。

症状を抑えるだけでなく、関節破壊の抑制を実現したことは、患者が将来寝たきりになるリスクを低減したことを意味します。つまり、「レミケード」は関節炎と関節破壊と身体機能障害の3つの抑制を達成したことになるのです。

▼レミケードの特徴

投与間隔の長さ、速効性、高い関節破壊抑制降下

「レミケード」は約2時間かけて点滴注射でゆっくりと身体へ投与します。初回、2週後、6週後に点滴注射した後は、通常8週間(約2ヵ月)ごとの投与となります。“2ヵ月に1度”という投与間隔の長さは、生物学的製剤の中で最長で「レミケード」の特徴です(2009年には投与量を増やしたり、投与間隔を短縮することも可能となりました)。

「レミケード」には速効性という特徴もあります。投与開始6週後には高確率で症状の改善が確認できます。場合によっては初回投与直後から効果を実感出来る場合もあり、関節の腫れや痛みで歩けなかった患者が、病院で「レミケード」を点滴注射したあと、自分の脚で帰宅するという症例も報告されています。

また、「レミケード」には高い関節破壊抑制効果も認められています。「レミケード」によって寛解を持続できた患者の約50%で、「レミケード」を中断しても寛解状態を維持できたという報告もあり、治療を止められる可能性が示唆されている生物学的製剤です。

▼レミケードBS

特許が切れているため、2014年に日本化薬がバイオシミラー(BS:バイオ後続品)を発売していますが、シェアは2%程度とまだまだ普及していません。2016年8月時点で、日本の「レミケードBS」の使用率は世界的に見ても0.3%と、最下位から2番目の低い普及率です(トップはポーランドの99.8%)。日本ではいまのところ、国としてのバイオシミラー使用促進策がないため、バイオシミラーに対する医療関係者への理解がなかなか進んでいかない、というのが現状です。

▼リウマチの治療

リウマチの治療方法は大きくふたつに分類できます。
【1】:痛みをとりのぞく薬(非ステロイド性鎮痛薬、ステロイド)
【2】:炎症をブロックしてリウマチ自体を抑える薬(抗リウマチ薬)

抗リウマチ薬は大きく3つに分類できます。
【1】免疫調整薬:リマチル、アザルフィジン、シオゾール他
【2】免疫抑制薬:ブレディニン、リウマトレックス他
【3】生物学的製剤:レミケード、エンブレル、ヒュミラ、アクテムラ他

関節リウマチ治療薬は、売上の伸長が著しく、特に「ヒュミラ」、「アクテムラ」、「シンポニー」、「オレンシア皮下注」は二桁成長しています(2016年現在)。なお「ヒュミラ」は、世界での売上が5年連続の1位で、年商160億ドルを超えている驚異的なブロックバスターです。

▼リウマチに関連する薬




▼アクテムラとの違い

「アクテムラ」は、最先端のバイオテクノロジー技術によって開発された国産の生物学的製剤です(「レミケード」よりも新しい薬です)。2008年に新たに“既存治療で効果不十分な、関節リウマチ”への適応が追加承認されました。

炎症に関連するサイトカインは何種類もあるのですが、その中でも関節リウマチの要因となるのが“TNFα”と“IL6”というサイトカインです。「レミケード」はTNFαをブロックするのに対し、「アクテムラ」はIL6の働きをブロックします。

つまり、ターゲットが異なります。「レミケード」を使っていて、効果が出ない場合や副作用がひどい場合は、「アクテムラ」へ切り替えることで改善が期待できるかもしれません。

▼その他の潰瘍性大腸炎治療薬の使い分け

レミケード 寛解時は8週間隔の投与。点滴静注で炎症性サイトカインを直接抑制するため、重症患者など早急に炎症を抑えたい時に用いる傾向。潰瘍性大腸炎への使用実績が多い。
ヒュミラ 寛解時は2週間に1回、自己注射でOK。自己注射に抵抗のない患者向け。潰瘍性大腸炎への使用実績が多い。
シンポニー 寛解時は4週間に1回、病院で皮下注射。自己注射に抵抗のある患者向け。潰瘍性大腸炎への使用実績が多い。
ゼルヤンツ 抗体医薬ではなく低分子製剤(JAK阻害薬)。注射薬ではなく経口薬というのが特徴。潰瘍性大腸炎の使用実績は少ない。
エンタイビオ 寛解時は8週間隔投与。海外では潰瘍性大腸炎に使用されており、比較的安全とされているが、日本での使用実績は少ない。

▼広告のキービジュアル

広告のビジュアルは、痛みから解放された女性。女性ホルモンの関係で、自己免疫疾患の患者は女性が圧倒的に多いと言われています。広げた手は、痛みからの解放とアルファベットの“Y”のかたちを表しています。“Y”のかたちは、モノクローナル抗体(レミケード)のイメージです。QOL(生活の質)向上を感じさせるビジュアルです。

ちなみに「レミケード」という名称は、レミ(remedy:治療)とケード(aid:支援)という言葉に由来して名付けられました。

製品名:レミケード点滴静注用100
一般名:インフリキシマブ(遺伝子組換え)
抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤
田辺三菱製薬

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