喘息疾患啓発活動 チェンジ喘息!
アステラス製薬とアストラゼネカは、喘息疾患啓発活動“チェンジ喘息!”を展開しております。この活動の目的は、喘息の基本的な治療である抗炎症治療を継続することの大切さを伝えることで患者さんのQOL向上に寄与することを目指しております。「知ろう、もっと喘息のこと。変えよう、あなたの毎日。」を活動コンセプトに患者さんの喘息に対する誤解を解消し、症状に苦しむ日々をチェンジ!してもらえるよう活動して参ります。
画像は「喘息疾患」の疾患啓発広告です。一見、製品の広告には見えませんが、気管支拡張剤とステロイド性抗炎症剤の合剤「シムビコート」へと展開する広告です。医薬品業界では、このような啓発広告を打つことが多いです。
▼疾患啓発広告とは?
疾患自体の認知度を上げながら需要の掘り起こしを経て、結果的に自分たちの薬を売っていこう、というプロモーションです。製薬会社は、病気の種類が増えるほどマーケットが拡大しますので、病気を新たに“発見”することは金脈を掘り当てるようなものです。
自社の薬の広告ではなく、“疾患の啓発”という客観的な内容だと、ニュースとしてメディアに取り上げられたり、信頼感が上がります。また、純粋な医薬品の製品広告では、キャッチコピーや表現方法に制限(薬事法やプロモーションコード)があるのですが、あくまでも“疾患啓発”なので(製品名を出していないので)自由に出来るわけです。この広告の仕組みを最初に考えた人は、本当に頭が良いなあと感心します。TVなどのメディアで直接消費者に医療用医薬品の宣伝を出来るのは、世界中で米国とニュージーランドだけです。アメリカではお菓子でも売るみたいに医療用医薬品のコマーシャルを流しているので、日本人からすると驚きです。
疾患啓発広告は、一般ユーザーの“口コミ”も期待されています。いわゆる“バズ(buzz)”です。バズとは蜂がブーンと唸るようなざわついた状態のことから名付けられました。それまで、処方箋医薬品広告のターゲットは医師や薬剤師に限られていたわけですが、製薬会社も“一般ユーザーを含めたマーケティングの重要性”にようやく気づき始めました。インターネット全盛の世の中では、企業のサイトが一般ユーザーのblogなどに検索順位が負けることがあるからです。このような口コミを利用した戦略を【バイラル・マーケティング】と呼びます。医療用医薬品業界も、単なる販売志向からマーケティング志向へと転換しつつあるのかもしれません。
※バイラル・マーケティング:製品やサービスを最終消費者に口コミで宣伝してもらい、需要を拡大するマーケティング戦略。“バイラル”とは“感染”という意味から名付けられました。
▼吸入式喘息治療薬のジェネリックが出ない理由(2018年1月:追記)
2018年の後発医薬品薬価追補収載が、吸入型喘息治療薬のジェネリック参入の障壁となっています。原因は、先発品の吸入器の特許が残っていることです。
後発品の場合、吸入器の開発は後発メーカー各社が独自に行わなくてはならないため、吸入型喘息治療薬は内用薬とは違って開発費が余計にかかります。新規後発品の薬価算定ルールで内用薬と同じように“先発医薬品薬価の5掛け”となると、採算が合わず、後発医薬品が出せなくなるというわけです。
▼気管支喘息の原因解明、新治療薬に期待(2018年3月:追記)
2018年3月、東北大学の研究グループが気管支喘息の原因が“2型自然リンパ球”というリンパ球の活性化であることを発表しました(Journal of Allergy and Clinical Immunology 電子版:2018.2.7.)。気管支喘息を含むアレルギー疾患の新たな治療法開発につながると期待されています。
・気管支喘息(アレルギー性喘息)が起きる新たなメカニズムを発見。
・GITRタンパク質がリンパ球の活性化を介して、気管支喘息を引き起こすことを解明。
・GITRタンパク質を阻害する物質が気管支喘息の新しい治療薬となる
従来のアレルギー疾患の治療で注目されていたのは、アレルギー反応の制御や他の免疫細胞の活性化に関係する免疫細胞【T細胞】でしたが、東北大学はこの免疫細胞の表面に出現する“GITR”というタンパク質が、2型自然リンパ球を活性化することをマウスを使った実験で実証しました。
2型自然リンパ球は、気管支喘息が発生する時に最初に活性化する免疫細胞なので、この細胞が活性化しなければアレルギー反応は起こらないという理論です。
気管支喘息のメカニズムが解明されたことで、気管支喘息を含むアレルギー疾患の新しい治療薬誕生の可能性が高まっています。