明るい未来へ、一歩ずつ。
▼トラゼンタとは?
「トラゼンタ」は、いわゆる“DPP-4阻害薬”と呼ばれる血糖を下げる糖尿病の薬です。国内で4番目となる選択的DPP-4阻害薬で、当時既存の3製剤(ジャヌビア、エクア、ネシーナ)の腎排泄型とは異なり、胆汁排泄型である点が最大の特徴です。ほとんど代謝を受けないで、胆汁から未変化体で排泄されます。排泄経路が腎臓ではなく、主に便として排泄されることから、腎機能が低下している患者にも用量調節の必要がありません。腎機能の程度によらず5mgの投与量、というシンプルな薬です。
2型糖尿病患者の3人に2人が、腎機能障害を起こすリスクを有しているという米国の調査報告がありますが、こうした患者に胆汁排泄型を投与すれば、血中濃度が上昇して副作用が発現するリスクを減らせるわけです。
▼トラゼンタに向いている患者
・これから治療を開始する患者
・血糖降下薬で効果不十分な患者
・65歳以上の高齢者
・腎機能が正常または低下している患者
▼DPP-4阻害剤とは?
選択的DPP-4阻害剤は従来の糖尿病治療薬と違って、インスリンを過剰に分泌させません。低血糖のリスクがほとんどなくなるということです。DPP-4阻害剤は新しい種類の薬なので、薬価が高いのがデメリットですが、今のところ周囲に敵なし、という感じで売れ行きが増加しています。DPP-4系の糖尿病治療薬は日本では事実上、第一選択薬(ファーストチョイス)の地位を築いています。禁忌や慎重投与となる条件が少なく、幅広い層の患者をフォローしているので、いろいろと使い勝手が良いのだと思います。残された課題は、長期安全性の立証と大血管合併症の発症や予防に関するエビデンスの確立と言われています。
▼主なDPP-4治療薬の特徴
近年、DPP-4阻害薬は種類が多くなり(2015年発売のマリゼブで9番目)、どの薬剤もきちんと服用すれば24時間のDPP-4阻害率は80%をクリアしているので、医師も選択に迷うような状況です。後から発売される薬は、それなりの個性がないと生き残っていくのが難しいのかな、と思います。「トラゼンタ」は“胆汁排泄型”であることが売りでしたが、あとから「テネリア」という“胆汁・腎排泄型”のDPP-4も登場しています。
【トラゼンタ】:胆汁排泄型、腎機能に関係なく使用可
【テネリア】:胆汁・腎排泄型、半減期が24時間と長い、日本発
【スイニー】:腎排泄型、中性脂肪やLDLコレステロールを下げる効果
【オングリザ】:腎排泄型、解離半減期が長く、効果が持続する
【マリゼブ】:腎排泄型、週1回で他のDPP-4阻害剤と同等の効果
▼重大な副作用に急性膵炎が追加(追記:2018年4月)
2018年3月、厚労省は一部のDPP-4阻害薬について添付文書の改訂を指示しました。改訂の対象とされたDPP-4阻害薬は、「スイニー」、「テネリア」、「カナリア」、「トラゼンタ」で、重大な副作用に【急性膵炎】が追加されました。経口する糖尿病薬の中で、副作用に急性膵炎の記載があるのはDPP-4阻害薬だけで、注意が必要です。
2018年3月末現在で、重大な副作用に【急性膵炎】が記載されていないDPP-4阻害薬は、「マリゼブ」と「ザファテック」のみとなりました。
▼心血管の安全性を確認(追記:2018年7月)
2018年7月、ベーリンガーとイーライリリーは、心血管イベントに関する影響を調査した【CARMELINA試験】で、「トラゼンタ」がプラセボと同等の心血管イベントの安全性を示しながら、主要評価項目を達成したと発表しました。
※CARMELINA試験:2型糖尿病患者6,979名が参加した大規模試験。従来よりも、腎機能障害を持つ患者が多数参加しているのが特徴。
▼広告のキービジュアル
広告のビジュアルは、ハタオリ鳥の一種【キムネコウヨウジャク】です。どうして判ったのかというと、イーライリリーの社員に聞いたから。ずっと気になっていたので、名前が判明して嬉しかったです。キムネコウヨウジャクは、普段は地味な色の鳥ですが、繁殖期になると綺麗な黄色に変身します。ハタオリドリ(機織鳥)とはスズメ科鳥類の1種で、草などを編み、枝から垂れ下がる袋状の巣を作ることから、そう呼ばれている鳥です。
鳥類には珍しく巨大なコロニーを形成するのが特徴です。ハタオリドリが作るコロニーは、他のどの鳥の巣よりも巨大かつ壮麗な建築物と云われています(「ナショナル・ジオグラフィック」などで見ることができます)。“コツコツと糖尿病治療を続けていきましょう”というメッセージでしょうか。人の眼からビームが出ているシンボルマークが斬新です。灯台のようなイメージです。
一般名:リナグリプチン
製品名:トラゼンタ錠5mg
糖尿病用剤/胆汁排泄型選択的DPP-4阻害剤
ベーリンガーインゲルハイム
イーライリリー
新発売