Smile Again
2012年8月1日より投薬期間制限が解除されました。
▼トラムセットとは?
「トラムセット」は、国内で初めて1錠中にトラマドール塩酸塩(「トラマール」など)とアセトアミノフェン(「カロナール」など)を配合した経口鎮痛薬です。非オピオイド鎮痛剤(一般的な鎮痛剤)では治療困難な非がん性慢性疼痛、抜歯後の疼痛の治療に使われています。トラマドール塩酸塩の単独投与に比べて、速やかな効果発現を示すとともに、アセトアミノフェンに比べて持続的な鎮痛作用を発揮すると言われています。合剤ならではの相乗効果ですね。主に、整形外科やペインクリニックなどで使用されています。
Tramadol とAcetaminophenを合わせて「Tramcet」。
「トラムセット」の有効成分トラマドールは医療用麻薬とよく似た理屈で作用する成分(中毒性格はありません)で、アセトアミノフェンは皮膚の血管を広げて熱を放散させる成分です。個人差はありますが、副作用として吐き気や便秘、めまいや眠気などが現れやすいと言われています。中枢神経系に作用するので、炎症を伴わない慢性の痛みに有効です。
▼痛みの10年
2001年、米国連邦議会がバイオメディカル振興政策として、2001年からの10年間を“痛みの10年”とする宣言を行いました。背景には、痛みによって甚大な社会経済の損失がある、ということが挙げられます。1991年~2000年までの“脳の10年”政策が輝かしい成果を上げていたので、“痛みの10年”も国家戦略として大々的にスタートしました。米国のこの宣言が発端となり、世界中で痛み(特に慢性疼痛)に関するさまざまな調査と研究が開始されました。日本でも2009年から厚生労働省が「慢性の痛みに関する検討会」を設置し、慢性疼痛に対して現状の課題や今後について検討する取り組みが始まりました。その後、痛みに関連する医薬品が数種類承認され、「トラムセット」もそのひとつとして2011年11月に発売されました。
基本的に痛みは、急性疼痛と慢性疼痛に分類されます。通常、急性疼痛は組織の損傷による痛みで、慢性疼痛は組織が治癒しても更に継続する痛みとされています。国内では、2,200万人が痛みによる生活の質(QOL)の低下に悩まされており、社会生活に支障をきたしていると考えられています。日本の疼痛治療では長年、NSAIDsという種類の薬が汎用されてきましたが、「トラムセット」は従来品とは異なる作用機序によって、腰痛症、変形性関節症、関節リウマチ、帯状疱疹後神経痛などのさまざまな非がん性慢性疼痛症状に対して、改善効果があると期待されています。
▼リリカとの違い
「リリカ」は神経痛をやわらげる薬で、主に神経障害性疼痛に用います。痛みを伝える神経が傷ついていることで起こる痛みや、中枢性疼痛という脳や脊髄が要因となっている痛みに効果を発揮します。もともとは、けいれんを改善する薬でした。「トラムセット」とは作用の仕組みが異なります。
「トラムセット」は痛み止めのアソトアミノフェンと、トラマドールという麻薬のモルヒネに似た薬の配合剤で、切った・ぶつけたといった怪我や炎症、それからヘルニアなど、痛み全般に効きますが、神経因性疼痛にはあまり効果がありません。
「トラムセット」が適応となるのは、一般的な鎮痛薬では十分な効果が得られない痛み(リウマチや長年の腰痛、変形性関節症、帯状疱疹後の痛み、糖尿病性神経障害性疼痛)、または大掛かりな手術で抜歯した後の痛みなどです。なお、「リリカ」と「トラムセット」を併用することも可能です。
▼共同販売から共同販促へ
「トラムセット」は、以前はヤンセンファーマと持田製薬で個装箱も別、広告や販促も別でそれぞれ販売していたのですが、2017年1月から共同販売から共同販促へ変更となりました。流通は持田製薬へ一本化することとなり、薬局としては混乱がなくなって良かったと思います。ヤンセンファーマは引き続き製造販売元として、持田製薬へ製品を供給しています。
▼トラムセットのジェネリック発売へ
「トラムセット」の薬価ベースでの年間売上高は約280億円(2018年3月期)。その大きな市場を巡って、2018年12月には約25社の後発品が薬価収載される予定です。「トラムセット」の後発品は、2018年12月に追補収載されるジェネリックの中で、最も申請数が多い薬剤となりました。なお、「トラムセット」のジェネリック(後発品)の統一名は、「トアラセット配合錠」となります。
・オルトラム(トラマドールジェネリック)200mg
・ウルトラセット(トラマドール+パラセタモール)
▼疼痛薬市場の縮小続く(追記:2019年2月)
慢性疼痛治療薬の市場は、2019年に1500億円を超えると言われていますが、富士経済によれば2026年には成長率は鈍化するという報告がなされています。
超高齢化社会によって、患者数は増加傾向ですが、2018年12月に「トラムセット」の後発品が発売され、2026年までに「リリカ」、「サインバルタ」といった慢性疼痛薬の主力製品にも後発品が登場することで、市場の伸びは限定されるという予測です。
▼広告のキービジュアル
この広告は、販促を一本化する前のヤンセンファーマの広告です。持田製薬の名前がありません。
広告のキービジュアルは、セントラルパーク(新宿御苑?)のような広い公園で散歩を愉しむ夫婦です。犬を連れた夫婦は「Smile Again」という看板を穏やかな表情で眺めています。遠くの青空にはアドバルーンの“Tramcet号”が確認できます。痛みから解放された人々のQOLを表現したビジュアルです。運動をしている姿が多いのは、腰痛や関節痛を意識しているからだと思います。
慢性疼痛/抜歯後疼痛治療剤
トラムセット配合錠
トラマドール塩酸塩/アセトアミノフェン配合錠
ヤンセンファーマ