アバスチン、タルセバ/非小細胞肺がんの維持療法として

▼アバスチンとは?

「アバスチン」は、2007年4月に承認された世界初の血管新生阻害薬で、他の抗がん剤と併用することでよい治療効果を発揮しています。「アバスチン」は、化学療法の単剤、2剤・3剤との併用療法において、多くの臨床試験によりエビデンスが示されている薬です(OLIVIA試験、TRIBE試験、CAIRO3試験、BEBYP試験、ML18147試験、BIX試験、MAX試験、AVEX試験など)。

がん増殖に伴って、がんは栄養を供給するための血管を新しく作ります(血管新生)。「アバスチン」は、この血管新生を促すためにがん細胞が分泌するVEGFというタンパク質に結合して、血管の新生を防ぎ、栄養をゆき渡らせないようにして、がん増殖の速度を低下させる働きがあります。

▼タルセバとは?

「タルセバ」は、肺がんや膵がんを治療する薬です。EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)です。普通の抗がん剤とは違う“分子標的薬”で、がん細胞の増殖過程における指令塔を分子レベルでブロックします。この分子標的薬の標的は、上皮成長因子受容体(EGFR)のチロシンキナーゼ(TK)です。

▼分子標的薬とは?

分子標的薬とは、細胞の表面にある物質や遺伝子を標的として攻撃する薬のことです。

ほとんどの抗がん剤は、投与すると癌細胞だけでなく、同時に正常な細胞も攻撃してしまうので、重い副作用を発現させてしまいます。

近年、癌治療の研究が進み、がん細胞が増殖したり転移したりするのは、遺伝子の異常で出来た物質が原因であることが判明しました。そして、身体にとって悪い働きをする物質の活動だけを抑えることができるなら、がん細胞の増殖や転移が抑えられると考えました。こうして開発されたのが【分子標的薬】と呼ばれる薬です。

分子標的薬は、分子レベルでがん細胞の特徴を認識し、悪さをする特定の分子だけを狙い撃ちにするので、正常な細胞へのダメージが少ないことが特徴です。従来の抗がん剤に比べると、副作用がずっと少なく、患者の負担が軽減されています。

▼抗悪性腫瘍薬の市場規模(追記:2019年4月)

「アバスチン」は、2017年度の売上が1142億円と大幅に売上を伸ばし、国内医療用医薬品全体で売上1位でした(前年1位は「ハーボニー」)。抗悪性腫瘍薬の市場規模は、「アバスチン」やがん免疫療法薬「キイトルーダ」などが牽引し、2017年度に初めて1兆円を超えました。

2018年12月度の単月のデータ速報では、「アバスチン」の売上高(薬価ベース)は101億円。疼痛治療剤「リリカ」が90億円、プロトンポンプ阻害剤「ネキシウム」が86億円と続いています。

2019年1~3月の「アバスチン」の売上高(薬価ベース)は274億円で首位。2位はMSDの抗PD-1抗体「キイトルーダ」の249億円(前年同期比60.0%増)で、3位はファイザーの疼痛治療剤「リリカ」の234億円(前年同期比9.9%増)でした。

▼広告のキービジュアル

どちらも中外製薬オンコロジー領域の主力製品です。「アバスチン」の広告ビジュアルは、血管で表現した男女のシルエット。血管新生を妨げて、がん増殖から解放している様子を描いています。
「タルセバ」の広告ビジュアルは、砂時計。海辺の砂浜で、親子のゆったりとした時間が流れています。QOLっぽい広告です。シンボルマークで「分子標的薬」ということを表現しています。

製薬会社としては、進行中の非小細胞肺がんに対する化学療法として、ベバシズマブ(アバスチン)とエルロチニブ(タルセバ)の併用療法をアピールしていきたいということでしょう。

非小細胞肺がんの維持療法として、ベバシズマブ(アバスチン)とエルロチニブ(タルセバ)の併用療法が期待されていますが、まだ根拠としてのデータが足りないようです。

アバスチン エビデンスブック

一般名:ベバシズマブ(遺伝子組換え)注
製品名:アバスチン
抗悪性腫瘍剤/抗VEGFヒト化モノクローナル抗体/血管新生阻害薬

一般名:エルロチニブ塩酸塩
製品名:タルセバ錠25mg,100mg,150m
抗悪性腫瘍剤/キナゾリン系/EGFRチロシンキナーゼ阻害薬/分子標的薬

中外製薬

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