Dual Actionで完全自発排便へ
※Dual Action:水分分泌と大腸運動促進
※完全自発排便:残便感がなく、下剤/浣腸あるいは摘便なしで発現する排便
▼グーフィスとは?
「グーフィス」は、スウェーデンから導入した新しい作用機序を持つ、1日1回経口投与の慢性便秘治療薬(器質的疾患による便秘を除く)です。胆汁酸の再吸収にかかわっているトランスポーターを阻害し、水分分泌と大腸運動促進のふたつの作用で、自発的で自然な排便を促します。
“器質的疾患による便秘”というのは、直腸瘤、直腸重積、巨大直腸症、小腸瘤といった腸が変形・損傷されたというような眼に見える原因があることを指し、「モビコール」は具体的な原因がない便秘に対する治療薬に分類されます。
【器質的疾患とは】
身体の組織である筋肉や骨などが変形・損傷されてしまっている状態や、著しい内臓の機能低下などを指す。▼疾患例:腸の変形や損傷、骨折、変形性関節症、五十肩、癌、生活習慣病などで内臓機能が低下した病気
▼女性や高齢者を苦しめる便秘症
便秘症は、世間で多く認められる疾患(全人口の約10%)で、特に女性と高齢者に多いと言われています。便秘症という病気は、排便回数が少なくなることに加えて、残便感や硬い便などの不快感を伴うもので、慢性化すると患者のQOL(生活の質)を著しく低下させることになります。
便秘症の治療は、患者が便秘で悩んでいても、医師がそれを診断できないことがあり、治療に不満を抱く患者が非常に多いことが特徴です。日常で何気なく行っている排便ですが、そのメカニズムは複雑で、一度慢性便秘に罹ると完治することが困難と言われています。高齢化社会で患者数が増加の一途をたどっており、慢性便秘の新しい選択肢が待ち望まれていました。
慢性便秘症の治療薬は、長い間新しい薬が出てこなかったのですが、2012年に「アミティーゼ」、2017年に「スインプロイク」、2018年に「グーフィス」と近年続々に新薬が誕生しています。
「グーフィス」のような、既存の便秘症治療薬にはない“新しい作用機序”を持った薬剤が登場することで、慢性便秘症治療の選択肢が広がると期待されています。
▼グーフィスの作用機序
「グーフィス」は、胆汁酸トランスポーターを阻害する世界初の作用機序を持つ薬です。
胆汁酸とは、食物脂肪の吸収に必要不可欠な物質で、肝臓でコレステロールから合成され、胆汁の主成分として、胆嚢〜胆管を経て十二指腸へ分泌されます。分泌された胆汁酸の95%は小腸で吸収され、肝臓に再び戻って胆汁中に分泌されます(腸肝循環)。
再吸収されなかった胆汁酸は大腸内において水分を分泌させ、さらに大腸運動(消化管の活動)を促進させます。それらが要因となって、軟便や下痢を引き起こすことが知られています。
「グーフィス」は、この再吸収に関与する胆汁酸トランスポーター(IBAT)を回腸で阻害する低分子化合物です。胆汁酸の再吸収を抑制することで、大腸内の胆汁酸濃度が上昇し、結果的に大腸内で便の形成が進み、自発的で自然な排便が促されるというわけです。
▼グーフィス、いつ飲むの? 飲み忘れたら?
便秘薬は作用機序が多種多様なので、服用するタイミングが薬剤によって異なります。「グーフィス」は、食事によって胆汁酸が分泌される前に服用すると効果が発揮されやすい薬です。そのため、食事の前に1日1回2錠服用するのが効果的です。まれに、空腹時ならいつ飲んでも構わないと勘違いして「就寝前に飲む」と処方されるケースもありますが、誤りです。飲み忘れた場合は、翌日まで待たず、次の食事の前に飲めば問題ありません。
▼グーフィスの概要
2018年収載時の薬価は、5mg 1錠 105.80円。ピーク時(2027年)の予想売上げは120億円を見込んでいます。
●新しい慢性便秘症治療薬で、食前に投与
●胆汁酸の再吸収に関係するトランスポーターを阻害
●胆汁酸製剤やダビガトラン、ジゴキシンとの相互作用に注意
効能又は効果 | 慢性便秘症(器質的疾患による便秘を除く) |
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用法及び用量 | 通常、成人にはエロビキシバットとして10mgを1日1回食前に経口投与する。なお、症状により適宜増減するが、最高用量は1日15mgとする。 |
▼グーフィスの注意点と副作用
重篤な肝疾患がある患者に対しては、重度の肝機能低下や胆道系の障害によって、胆汁酸の小腸への分泌が低下している可能性があります。その場合、「グーフィス」の効果が減少するおそれがあり、特に胆道閉塞などによって“小腸への胆汁酸の分泌がほとんどない”患者には効果が期待出来ません。
「グーフィス」の主な副作用は腹痛や下痢、下腹部痛や腹部膨満です。高齢者は生理機能が低下しているため注意が必要で、場合によっては薬の量を調整します。
その他の副作用としては、肝機能検査異常、悪心、上腹部痛、腹部不快感、軟便などが認められています。
まれ(1%未満)にですが、頭痛、浮動性めまい、ほてり、鼓腸、口渇、便意切迫、嘔吐、胃腸音異常、便秘、口内炎、蕁麻疹、発疹、好酸球数増加、貧血、ビタミンE増加、月経困難症といった副作用が報告されています(承認時までの国内臨床試験:631例中)。
「グーフィス」は、胆汁酸製剤の「ウルソ」や「チノ」との併用が注意となっています。「グーフィス」の胆汁酸トランスポーター(IBAT)阻害作用によって、胆汁酸製剤の再吸収が阻害されて、「ウルソ」や「チノ」の効き目が減弱するためです。
また「グーフィス」は、薬物排出トランスポーターのP糖蛋白も阻害します。そのため、「プラザキサ」と併用した場合、「プラザキサ」の主成分のダビガトランが増強する可能性が指摘されています。「プラザキサ」や「ジゴシン」といったP糖蛋白の基質薬物と「グーフィス」は、併用注意となっています。
▼「Lancet」姉妹誌に有効性が掲載(追記:2018年7月)
2018年7月、国際的な医学雑誌「Lancet」の姉妹誌「Lancet Gastroenterology&Hepatology」に、「グーフィス」の臨床試験(フェーズ3)の結果がふたつ掲載されました。
ひとつは、日本人133名を対象とした14日間の二重盲検試験で、プラセボ群との比較で、自発排便回数、完全自発排便回数、初回自発排便発現までの所要時間、便の硬さなどで、統計学的に優位な改善を示しました。
もうひとつは、日本人患者341名を対象とした52週間の非盲検試験で、投与前と投与後の比較で、投与期間中の自発排便回数、完全自発排便回数、便の硬さなどで第一週から改善が認められ、それが52週まで維持されました。
▼類似作用機序:小腸吸収阻害薬
▼グーフィスとモビコールの違い
「グーフィス」も「モビコール」も、どちらもEAファーマと持田製薬が手がけている製品です。ふたつの製品はライバルというよりは、作用機序の異なる2製品の相乗効果で疾患啓発を進め、慢性便秘症治療薬市場の拡大を画策しています。
中医協によると、「グーフィス」はピーク時(9年目)の予想販売額を120億円、「モビコール」はピーク時(6年目)の予想販売額を15億円と見込んでいます。
グーフィス 【胆汁酸トランスポーター阻害薬】 |
食前に服用(食後は効きにくい)。胆汁酸製剤との併用注意。薬価:246.0円(単価105.8円) |
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モビコール 【高浸透圧薬】 |
国内で唯一の小児適応。水に溶かして服用。食事の影響なし。副作用比較的少ない。薬価:167.8円(単価83.9円) |
▼広告のキービジュアル
広告のキービジュアルは、「グーフィス」の効果によって便が流れ出てくる様子をイラストで表現した作品。NHKのTV番組「ピタゴラスイッチ」に登場するからくり装置のようで、見ていて愉しい絵に仕上がっています。
胃や腸といった個々のセクションでは自動的な運動が行われており、それが組み合わさることで次の動きを引き出しています。その連続する連鎖の結果として、最後に便が出てくる、というのが分かりやすくて面白いです。
このようなビジュアルは、プレゼンテーションの段階で相当完成度の高いイラストを用意しないと採用されないと思うのですが、便という汚物が排泄される行程を、イラストの細部まで工夫することによって、見事にセンス良く表現しています。
一般名:エロビキシバット水和物
製品名:グーフィス錠5mg
胆汁酸トランスポーター阻害剤/慢性便秘症治療薬
新発売(2018年4月19日発売)
持田製薬
EAファーマ