ベージニオ/閉経後ホルモン療法の乳がん治療薬

▼ベージニオとは?

「ベージニオ」は、CDK4/6阻害剤と呼ばれる種類の乳がん治療薬です。ファイザーから発売されている「イブランス」に続く、国内2番目のCDK4/6阻害剤です。基本的に内分泌療法剤と併用する薬で、主に閉経後のホルモン療法として使用されています。閉経後で、女性ホルモン受容体(エストロゲン受容体)が【陽性】の場合に優先される標準的な乳がん治療薬です。

「ベージニオ」は、細胞周期に深く関係すると考えられている“サイクリン依存症キナーゼ(CKD)4および6”の阻害薬(分子標的薬)です。CKD4および6に対して選択的な阻害作用を有し、細胞周期の進行を止めて、がん細胞の増殖を抑制します(腫瘍増殖抑制作用)。

「ベージニオ」は抗エストロゲン剤「フェソロデックス」との併用療法で、ホルモン受容体陽性の進行乳がん患者に対して有効な治療方法であることが、承認時の試験によって認められています。

「イブランス」と同じCDK4/6阻害剤ですが、副作用がかなり異なるので、患者の副作用の状態に合わせて使い分けられることが予想されます。既存薬の「イブランス」は【1日1回休薬期間あり】ですが、「ベージニオ」は連日投与が可能ということで、【1日2回休薬なし】という特徴があります。製造販売元のイーライリリーは、「連日投与によって、がんの増悪を効率よく抑制することが可能」とメリットを説明しています。

【効能・効果】 ホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳がん
【薬価(1錠)】 50mg:3258.70円、100mg:5949.20円、150mg:8460.10円

▼乳がんとは?

乳がんは、乳房にある乳腺にできる悪性の腫瘍のことです。非浸潤がんと呼ばれる癌の場合は多くが治るといわれていますが、早期の乳がんでは自覚症状がほとんどないため、発見が遅くなるケースが多々あります。

日本において乳がんは、癌のなかでも罹患率がトップクラスであり、その割合は年々増加を続けています。乳がんを発症する女性の割合は、50年前は50人に1人でしたが、21世紀では14人に1人と言われています(年間約6万人以上)。乳がんで死亡する例は年間約1万3千人で、これは乳がんに罹った患者の30%に相当します。

乳がんの原因ははっきりと解明されていませんが、日本人に乳がんが増えた要因としては、食生活の変化や、女性の社会進出が関係していると考えられています。戦後の食生活の変化に伴って、高たんぱくで高脂肪の食事が増えたことによって、初潮が早く訪れ、閉経が遅くなる女性が増えました。そして、女性の社会進出の増加によって、妊娠出産が減少し、女性が一生のうちに経験する月経の回数が多くなりました。

乳がんの癌細胞は、女性ホルモンのエストロゲン(卵胞ホルモン)によって増殖することが知られています。つまり、月経回数が増えた(月経中はエストロゲンが多量に分泌される)ことが、乳がんの発症と進行に影響を与えていると考えられるのです。

▼乳がんのホルモン療法(内分泌療法)

乳がんは、女性ホルモン“エストロゲン”の影響を受けて大きくなる傾向があります。エストロゲンは、閉経前は卵巣で多く作られますが、閉経後は腎臓のそばにある副腎から出てきます。このエストロゲンを低減させることによって、乳がんが大きくなるのを防ぐ治療法が【ホルモン療法(内分泌療法)】です。

▼ベージニオの特徴

乳がんが進行している患者の約70%は、女性ホルモン受容体が【陽性】を示しているため、「フェソロデックス」や「リュープリン」などの内分泌療法が効果を示します。しかし、人によっては内分泌療法が充分な効果を示さなかったり、一旦は効いたものの、次第に病状が悪化してしまうケースがありました。

内分泌療法が効かない原因のひとつとして、蛋白質複合体である“サイクリンD”が関係していると考えられています。サイクリンDは乳癌患者の半数以上に発現することが確認されており、サイクリンDが過剰に発現した患者の大半は女性ホルモン受容体が【陽性】であることが判明しています。

つまり、ホルモン受容体が【陽性】の場合の進行再発乳がん患者に対しては、サイクリンDを標的とする分子標的薬が有効ということです。そのような経緯で開発された新薬が「ベージニオ」です。

【サイクリンDとは?】
サイクリンDは、サイクリン依存性キナーゼ4と6(CDK4/6)が活性化された蛋白質複合体です。細胞周期を促進させることで、細胞を増殖(腫瘍を増殖)させる働きを持っています。

▼ベージニオの副作用

「ベージニオ」は主にCYP3Aにより代謝されるため、グレープフルーツやグレープフルーツジュースとの併用、CYP3A阻害剤やCYP3A誘導剤との併用により、血中濃度を上昇又は低下させるおそれがあります。

「ベージニオ」の主な副作用は、下痢(86.4%)、好中球減少症(46.0%)、悪心(45.1%)、感染症(42.6%)、疲労(39.9%)などが報告されています。

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▼広告のキービジュアル

広告のビジュアルは、母、娘、孫の三世代の女性。孫の誕生日を祝う日常を描いています。男性不在で、女性のための薬ということがひと目で分かるように工夫されています。インパクトはありませんが、家族の一員になって寄り添うような身近な広告に仕上がっています。

がんの薬というのは、深刻な要素をはらんだデリケートな薬です。明る過ぎても、製品のイメージにマッチしません。“明るい”ではなく、“暗くない”というぎりぎりのラインが抗悪性腫瘍剤にとってのベターな方向性だと思います。

一般名:アベマシクリブ
製品名:ベージニオ錠50mg,100mg,150mg
抗悪性腫瘍剤/CDK4/6阻害剤(サイクリン依存性キナーゼ阻害剤)/分子標的薬
日本イーライリリー
2018年11月30日発売

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