モビコール/高齢者や小児に使いやすい慢性便秘症

▼モビコールとは?

「モビコール」は、国内初のポリエチレングリコール製剤(PEG製剤)で、2歳以上の子供から高齢者まで幅広く使える慢性便秘症治療薬(器質的疾患による便秘を除く)です。従来の便秘症治療薬とは作用の仕組みが異なる新しいタイプの浸透圧性下剤として発売されました。「モビコール」は、粉末を水に溶解して経口摂取する薬なので、適応薬が少ない小児や腎機能が低下している高齢者、経管栄養の患者でも飲めるので、使いやすいと期待されています。

主成分のポリエチレングリコール(PEG製剤:高分子化合物)の浸透圧効果によって、腸管内の水分量を増加させることで便を軟化し、大腸の蠕動(ぜんどう)運動が活発化して、自然な排便が促される薬剤(浸透圧下剤)です。簡単に言えば、下痢になる仕組みを使って排便を促します(便の水分を増やすことで、便が出やすくなる)。「モビコール」は水に溶解して服用するため、適切な硬さの便になるまで薬を適宜増減して使用します。

「モビコール」は日本初のポリエチレングリコール製剤として、EAファーマ(当時は味の素製薬)がオランダのNorgine社からライセンスを受けて、販売する製品です。1日の薬価は167.8円(1包83.9円)となりました。

もともとはオランダの薬剤で、欧州を中心に慢性便秘症の第一選択薬として使用されており、20年以上前から多くの慢性便秘症の患者に支持されています。慢性便秘症治療には、日本では安価で安全性の高い“酸化マグネシウム”を使う場合が多いのですが、欧米では酸化マグネシウム製剤がなく、浸透圧性下剤のポリエチレングリコール(PEG製剤)が約50%のシェアを占めています。

酸化マグネシウムで症状が改善できていれば治療薬を変更する必要はありませんが、腎機能が低下している患者は、酸化マグネシウムを長期間服用していると高マグネシウム血症を起こす場合があります(高齢者や長期服用患者は、定期的に血清マグネシウム濃度を測定する必要あり)。また、酸化マグネシウムは、小児への適応がありません。こういった患者の場合、「モビコール」(PEG製剤)への切り替えがメリットを発揮します。

▼浸透圧性下剤とは?

浸透圧性下剤は、慢性便秘症患者に推奨されている慢性便秘症治療薬のひとつです。慢性便秘症の治療薬として、米国では50%近いシェアを誇っています。既存の浸透圧性下剤としては、塩類下剤の酸化マグネシウム、糖類下剤のラクツロース、浸潤性下剤のジオクチルソジウムスルホサクシネートなどがあります。

塩類下剤 酸化マグネシウム、クエン酸マグネシウムなど
糖類下剤 ラクツロースなど
浸潤性下剤 ジオクチルソジウムスルホサクシネート
高分子化合物 ポリエチレングリコール製剤(モビコール

▼女性や高齢者、小児を苦しめる便秘症

便秘症は、世間で多く認められる疾患(全人口の約10%)で、特に女性と高齢者に多いと言われています。また、小児の場合は特に重症化しやすいといわれています。便秘症という病気は、排便回数が少なくなることに加えて、残便感や硬い便などの不快感を伴うもので、慢性化すると患者のQOL(生活の質)を著しく低下させることになります。

日本においては、便秘は発症経過から【急性便秘】【慢性便秘】に区別され、さらに原因や症状によって【機能性便秘】【器質性便秘】などに分類されています(「モビコール」は、器質性便秘を除く慢性便秘症の治療薬です)。

“器質的疾患による便秘”というのは、直腸瘤、直腸重積、巨大直腸症、小腸瘤といった腸が変形・損傷されたというような眼に見える原因があることを指し、「モビコール」は具体的な原因がない便秘に対する治療薬に分類されます。

【器質的疾患とは】
身体の組織である筋肉や骨などが変形・損傷されてしまっている状態や、著しい内臓の機能低下などを指す。

▼疾患例:腸の変形や損傷、骨折、変形性関節症、五十肩、癌、生活習慣病などで内臓機能が低下した病気

便秘症の治療は、患者が便秘で悩んでいても、医師がそれを診断できないことがあり、治療に不満を抱く患者が非常に多いことが特徴です。日常で何気なく行っている排便ですが、そのメカニズムは複雑で、一度慢性便秘に罹ると完治することが困難と言われています。高齢化社会で患者数が増加の一途をたどっており、慢性便秘の新しい選択肢が待ち望まれていました。

慢性便秘症の治療薬は、長い間新しい薬が出てこなかったのですが、2012年に「アミティーゼ」、2017年に「スインプロイク」、2018年に「グーフィス」、「モビコール」と近年続々に新薬が誕生しています。多種多様な症状を抱える慢性便秘症の治療選択肢が広がることで、便秘で悩む患者のアンメットメディカルニーズが少しずつ満たされ始めています。

▼モビコール発売の背景

「モビコール」は、浸透圧性下剤ポリエチレングリコール(PEG製剤)に塩化ナトリウムなどの電解質を含有した薬です。小児(2歳以上)にも使用可能な慢性便秘症治療薬というのが特徴です。PEG製剤のマクロゴール4000が、浸透圧によって腸管内への水分貯留を促進し、便中水分量と便容積を増加させることで便秘症状を改善する効果があります。

海外のガイドラインで慢性便秘症の第一選択薬となっているPEG製剤ですが、日本では慢性便秘症の薬としては適応がないのが現状でした。便秘症は、小児の場合で特に重症化しやすいことが知られており、日本小児栄養消化器肝臓学会からの要請を受けて、日本でも開発が進みました。このような背景から、医療上の必要性が高い未承認薬剤として評価され、2018年11月に国内での承認・発売に至りました。

▼モビコールの特徴

【1】小児に適応あり(2歳以上から高齢者まで幅広く使用可)
【2】水に溶かすので、適切な硬さの便になるまで適宜増減可能
【3】国内初のポリエチレングリコール製剤(PEG製剤)
【4】慢性便秘症の第一選択薬として、海外のガイドラインで推奨

▼モビコールの用法・用量

※年齢によって、用量に違いがあります。

2~7歳
未満の幼児
初回投与量として1日1回1包。以降、症状に応じて適宜増減し、1日1~3回経口投与、最大投与量は1日量として4包まで(1回2包まで)。ただし、増量は2日以上の間隔をあけて行い、増量幅は1日量として1包まで。
7歳以上12歳
未満の小児
初回用量として1回2包。以降、症状に応じて適宜増減し、1日1~3回経口投与、最大投与量は1日量として4包まで(1回2包まで)。ただし、増量は2日以上の間隔をあけて行い、増量幅は1日量として1包まで。
成人および
12歳以上の小児
初回用量として1回2包。以降、症状に応じて適宜増減し、1日1~3回経口投与、最大投与量は1日量として6包まで(1回4包まで)とする。ただし、増量は2日以上の間隔をあけて行い、増量幅は1日量として2包まで。

▼モビコールは水以外に溶かしても大丈夫?

「モビコール」は、ナトリウムを含んでいるという特性上どうしても強めの塩水になるので、水以外に溶かして服用したいというニーズが常にあります。特に小児は、塩水で服用を続けるのはつらいことでしょう。現場では、ジュースで溶かすなど工夫して飲ませるように指導がなされています。

「モビコール」のインタビューフォームで【各種飲料との配合変化試験結果】という資料が公開されています。そこには、市販の飲料に溶解しても、水に溶解した場合と同程度かそれより少し高い浸透圧上昇を示したとの報告があります。公式な発表はまだありませんが、今後も試験が行われ、患者指導箋などで水以外での飲み方が紹介されていくと考えられています。

・リンゴジュース(なっちゃん)・オレンジジュース(なっちゃん)
・スポーツ飲料(ポカリスエット)・烏龍茶(烏龍茶)
・緑茶(おーいお茶) ・麦茶(ミネラル麦茶)・紅茶(午後の紅茶)

▼モビコールの注意点と副作用

副作用は既存の下剤に比べて少なく、主な副作用は下痢(3.6%)、腹痛(3.6%)です。承認時までの国内の臨床試験において、192例中33例(17.2%)に副作用が認められています。なお、重大な副作用としてショック、アナフィラキシー(頻度不明)が発現することがあります。

「モビコール」は安全性が高い反面、作用発現までに時間がかかるというデメリットがあります。初回自発排便までの日数は、およそ2~3日。腸管から水分を腸内に引き込むまでに時間を要するためです。

「モビコール」の効果は“用量依存”であり、基本的に服用量を増やすと効き目も副作用発現率も上がります。そのため、便秘の症状に合わせて薬を増減し、下痢や腹痛を起こさない適切な量に調節して使います。

日本国内ガイドラインでは、小児に対しては「モビコール」のような非刺激性の浸透圧性下剤から治療を始めることが基本とされており、それでも十分な効果が得られない場合に、大腸刺激性下剤を併用することとなっています。

▼グーフィスとモビコールの違い

「グーフィス」も「モビコール」も、どちらもEAファーマと持田製薬が手がけている製品です。ふたつの製品はライバルというよりは、作用機序の異なる2製品の相乗効果で疾患啓発を進め、慢性便秘症治療薬市場の拡大を画策しています。

中医協によると、「グーフィス」はピーク時(9年目)の予想販売額を120億円、「モビコール」はピーク時(6年目)の予想販売額を15億円と見込んでいます。

グーフィス
【胆汁酸トランスポーター阻害薬】
食前に服用(食後は効きにくい)。胆汁酸製剤との併用注意。薬価:246.0円(単価105.8円)
モビコール
【高浸透圧薬】
国内で唯一の小児適応。水に溶かして服用。食事の影響なし。副作用比較的少ない。薬価:167.8円(単価83.9円)
酸化マグネシウム
【塩類下剤】
小児適応なし。腎機能低下患者は高マグネシウム血症に注意。薬価安い(単価5.6円)

※【参考薬価】酸化マグネシウム「マグミット」250mg:単価5.6円(2019年1月現在)

▼広告のキービジュアル

広告のキービジュアルは、水で出来た美しい球体(地球)。水の力で腸にうるおいを与えるという薬理作用から、全体的に水(水滴、液体)のイメージが使われています(水に溶かして飲むという意味もあります)。

地球(世界地図)には、世界で広く使用されている、という意味が込められています。水の玉には、主に高齢者の笑顔が描かれています。ブランドイメージにふさわしい、人に寄り添った優しい雰囲気のビジュアルです。

「モビコール」は、慢性便秘症治療薬として国内で唯一小児適応を持つことから、ビジュアルにひとりくらい子供が登場しても良さそうですが、そこまでメインターゲットとしては考えられていないのかもしれません。やはり慢性便秘症は、女性と高齢者がメインとなります。

シンボルマークは「モビコール」の頭文字“M”を模した可愛らしいマークです。上が小児で下が高齢者を表現しています。

一般名:マクロゴール4000/塩化ナトリウム/炭酸水素ナトリウム/塩化カリウム
製品名:モビコール配合内用剤
ポリエチレングリコール製剤/慢性便秘症治療薬/浸透圧下剤/PEG製剤
2018年11月29日発売
持田製薬
EAファーマ

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