デュピクセント/つながる道、その先へ

つながる道、その先へ

▼デュピクセントとは?

「デュピクセント」は、既存の治療薬でも治すことのできない患者に対して使用される自己免疫疾患の薬です。モノクローナル抗体と呼ばれる種類に分類されます。

もともとは、アトピー性皮膚炎の治療薬として2018年4月に発売されましたが、2019年3月、気管支喘息薬として追加承認された薬です。アトピー性皮膚炎の治療薬としては10年振りの新薬で、初めての生物学的製剤となります。

国内では【成人の既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎】および【12歳以上の既存治療によっても症状をコントロールできない重症または難治の気管支喘息】に対する治療薬として承認されています。

免疫系の過剰反応の一種である過剰なType2炎症は、アトピー性皮膚炎や喘息をはじめとするアトピー性疾患やアレルギー性疾患に深くかかわっていると考えられています。

「デュピクセント」は、Type2炎症で中心的役割を果たす蛋白質であるインターロイキン4(IL-4)と、IL-13によるシグナル伝達を阻害するヒトモノクローナル抗体で、病気の原因となる抗体に先にくっつくことで、その働きを阻害してしまうという薬です。

モノクローナル抗体を用いた治療薬は大変高価なため、通常はガンやリウマチなどの難病に用いられることが一般的です。つまり、基本的には高額療養費制度を使って使用する治療薬です。

▼デュピクセントの薬価

「デュピクセント」1本の薬価は81,640円。初回は必ず2本打つので、3割自己負担の場合でも治療費は約5万円。2回目以降は2週ごとに1本打つので約25,000円。高額療養費制度が適用されない場合は、年間で約60万円の自己負担となります。

高額医療制度を利用することである程度戻ってきますが、それでもかなり高額です(自己負担の上限額は、年齢や世帯の所得により異なります)。住んでいる場所によっては、治療費に対する補助を行っている市町村もあります。

▼在宅自己注射が可能に

「デュピクセント」は通常、初回に600mg(2本)を皮下注射し、その後は1回300mgを2週間隔で皮下注射して治療を続けます。しかし、2週間隔で通院するのは、患者にかなりの負担がかかります。

そのため、「デュピクセント」を在宅自己注射指導管理料の対象とするための要望書が、日本皮膚科学会と日本アレルギー学会から厚生労働省へ提出され、2019年4月に算定対象として追加されることが決まりました。

そして、在宅自己注射対象薬剤への追加を受けて、隔週での通院以外に、さらに2週間隔で在宅自己注射が可能となりました。患者にとっては選択肢が増えたことになり、QOLの向上が期待できます。

▼気管支喘息の原因解明、新治療薬に期待(2018年3月:追記)

2018年3月、東北大学の研究グループが気管支喘息の原因が“2型自然リンパ球”というリンパ球の活性化であることを発表しました(Journal of Allergy and Clinical Immunology 電子版:2018.2.7.)。気管支喘息を含むアレルギー疾患の新たな治療法開発につながると期待されています。

・気管支喘息(アレルギー性喘息)が起きる新たなメカニズムを発見。
・GITRタンパク質がリンパ球の活性化を介して、気管支喘息を引き起こすことを解明。
・GITRタンパク質を阻害する物質が気管支喘息の新しい治療薬となる

従来のアレルギー疾患の治療で注目されていたのは、アレルギー反応の制御や他の免疫細胞の活性化に関係する免疫細胞【T細胞】でしたが、東北大学はこの免疫細胞の表面に出現する“GITR”というタンパク質が、2型自然リンパ球を活性化することをマウスを使った実験で実証しました。

2型自然リンパ球は、気管支喘息が発生する時に最初に活性化する免疫細胞なので、この細胞が活性化しなければアレルギー反応は起こらないという理論です。

気管支喘息のメカニズムが解明されたことで、気管支喘息を含むアレルギー疾患の新しい治療薬誕生の可能性が高まっています。

▼その他の気管支拡張剤

喘息治療は基本的に、アレルギー炎症を抑える吸入ステロイド薬を使うのが主流ですが、重症の喘息患者の場合、標準治療ではコントロールできないような咳や呼吸困難などの症状が持続することが多く、吸入ステロイド薬で改善できない患者には「デュピクセント」のような生物学的製剤治療が適しているとされています。

喘息治療のバイオ医薬品としては、「ゾレア」「ヌーカラ」「ファセンラ」「デュピクセント」などがあります。「ゾレア」は、唯一の抗IgE抗体製剤というのが特徴です。「ファセンラ」は好酸球をゼロに洗い流すというのが特徴で、「ヌーカラ」は逆に好酸球をゼロにしてはいけない、という切り口でプロモーションしています。

吸入型の気管支拡張剤としては、「スピリーバ」「オンブレス」「ウルティブロ」「シーブリ」などがありますが、処方数では外用剤の気管支拡張薬「ホクナリンテープ」(ツロブテロール)がトップです(2014年度)。1日1回貼るだけで済む手軽さと、小児の気管支炎にも使えるというメリットで処方が増えています。





▼広告のキービジュアル

広告のキービジュアルは、美しい緑に囲まれたあぜ道。ナップザックを背負った女性が、ハイキングを愉しんでいる姿を描いています。標識の「DUPIXENT」が患者の道しるべとなっている、というシチュエーションです。

アトピー性皮膚炎と気管支喘息という“2つの疾患”を1枚のビジュアルで表現することは難しいので、症状が改善した後の晴れ晴れとした雰囲気を可視化するというアプローチです。

キャッチコピーの「その先〜」は、「初めの一歩も、その先も:ヒューマログ」「しかと見つめるその先へ:シュアポスト」「その先に、手が届く:ミネブロ」とちょっと思い出しただけでも枚挙にいとまがない、頻繁に使われている鉄板ワードです。「その先〜」という言葉に伝えたい言葉をくっつけると、未来感や希望感を感じる前向きなキャッチコピーに仕上がります。

この言葉が医療業界で重宝されているのは、「医療用医薬品製品情報概要等に関する作成要領」という自主規制があるからでしょう。医療用医薬品には不適切な宣伝が行われないように「事実誤認の恐れのある表現」や「誇大な表現」は広告に使用できないのです(ちなみに、Drug Informationの記載がなければ、キャッチコピーすら掲載することができません)。そのために、知恵を絞ってひねり出した言葉が“その先へ”や“次のステージへ”といった抽象的なフレーズなのです。

一般名:デュピルマブ(遺伝子組換え)
製品名:デュピクセント皮下注300mgシリンジ
気管支喘息治療剤/ヒト型抗ヒトIL-4/13受容体モノクローナル抗体製剤
サノフィ

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