ミネブロ/投薬期間制限解除

その先に、手が届く。
2020年3月1日より、投薬期間制限が解除されました

▼ミネブロとは?

「ミネブロ」は、“アルドステロン”というホルモンに選択的に結合し、降圧作用を発揮する高血圧治療薬です。血圧を上げる原因となるアルドステロンの動きを抑える効果があります。

「ミネブロ」をはじめとする第3世代のミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬は、“高血圧治療の新時代を築いていく薬剤”と期待されていますが、単独で処方されるケースは少なく、今のところはあくまで第一選択薬だけではうまく血圧がコントロールできない患者に併用して使われる薬剤です。

血中ナトリウム量とレニン・アンジオテンシン系(RA系)は均衡を取るため、食塩摂取量が多い日本人ではレニン活性の抑制された高血圧患者が多いと言われています。このような高血圧症患者では、RA系抑制を機序とする降圧剤の効き目が弱くなる傾向があり、血圧コントロールが不十分となります。また、食塩過剰摂取や身体にナトリウム貯めやすいアルドステロンは、循環血漿量を増大させ、降圧療法における治療抵抗性の原因となる場合があります。

「ミネブロ」は、血圧上昇や心血管系の臓器障害を引き起こす原因となる“アルドステロン”の働きを阻害するため、ACE阻害薬やアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)で充分な効果が得られない患者の降圧に処方されます。日本人は食塩摂取量が多いので、低レニン型の高血圧患者が海外に比べて多いのが特徴です。

降圧作用や利尿作用はあまり強くないので、単独で処方されることは多くありません。アルドステロンが抑制されると、水分と塩分が尿となって大量に排出されるので、カリウム排泄性のループ系利尿薬やサイアザイド系利尿薬と相性が良いとされています。

▼高血圧とは?

高血圧症は世界で最も患者数が多い疾患であり、国内では約4300万人いると言われています。高血圧治療のガイドラインでは食生活の改善(非薬物療法)とともに薬物治療がメインとなっています。

主な降圧薬は、カルシウム拮抗薬、レニン・アンジオテンシン系阻害薬(ARB拮抗薬、ACE阻害薬)、利尿薬、β遮断薬などで、最近は作用機序の異なる薬剤を組み合わせた(高血圧の原因が複数存在するので)併用療法が推奨されていて、年々使用頻度が高まっています。

日常的に血圧をコントロールすることは、将来的なリスク(脳卒中、心臓病、腎臓病など)を減らすことへ繋がります。高血圧症治療の最終目的は、血圧を安定させることで心血管病の発症・進展・再発を抑制し、死亡率を減少させることなのです。

「ミネブロ」といったミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬と呼ばれる薬は、降圧薬の中でも、ミネラルコルチコイドが関係しているタイプの高血圧症(低レニン性高血圧症、治療抵抗性高血圧症、心疾患合併高血圧症など)に対する有用性が、日本の高血圧治療ガイドラインで認められています。

▼ミネブロの特徴

第1世代〜第2世代のMR拮抗薬(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬)は、副作用や投薬禁忌のせいで、基本的にあまり使われていなかった薬剤でした。今回新しく開発された第3世代の「ミネブロ」は、これまでMR拮抗薬を使いたくても使えなかった患者に処方することができると期待されています。

中等度腎機能障害の患者や慢性腎臓病(CKD)患者、アルブミン尿を有する2型糖尿病合併患者にも使用できるのが最大の特徴です。1日1回投与で済む、というメリットもあります。

【1】既存MR拮抗薬よりも、さらに高い選択性
【2】禁忌が少ない(糖尿病患者や腎障害患者にも慎重投与可能※)
【3】性ホルモン関連の副作用が少ない(女性化乳房、月経異常、勃起不全など)

※微量アルブミン尿又は蛋白尿を伴う糖尿病患者、中等度以上の腎機能障害患者

▼ミネブロの副作用・注意点

「ミネブロ」の主な副作用は、血清カリウム値上昇、血中尿酸増加、高尿酸血症などです。「アルダクトンA」と「セララ」と同じように、重大な副作用としては【高カリウム血症】が挙げられます。

基本的に身体のミネラル(電解質)はバランスが保たれていますが、ミネラルのひとつであるカリウム値が血液中で高い状態になることがあります。それが【高カリウム血症】です。高カリウム血症は、重症化すると致死性不整脈を起こす可能性があるため、早期の発見と治療が必要です。

手や唇のしびれや、脈拍の低下、筋力の低下、吐き気などを感じたら、すぐに医師に相談してください。心配な方は、医師の指導に従って、定期的に血中カリウム値を測定(血液検査)しましょう。

【主な副作用】 血清カリウム値上昇、血中尿酸増加、高尿酸血症
【重大な副作用】 高カリウム血症
【その他】 貧血、肝機能異常、腎機能生障害、めまい、痛風、頭痛、低血圧 ※1%未満

「セララ」と比較して腎機能や肝機能に対する禁忌が少ないといっても、アルドステロン系の性質上注意は欠かせません。ミネラルコルチコイド受容体(MR)により選択性が高いということは、カリウムについての注意はさらに必要となってきます。

【禁忌(次の患者には投与しないこと)】
高カリウム血症の患者もしくは本剤投与開始時に血清カリウム値が5.0mEq/Lを超えている患者[高カリウム血症を増悪させるおそれがある。]
重度の腎機能障害(eGFR 30mL/min/1.73m2未満)のある患者[高カリウム血症を誘発させるおそれがある。臨床試験における投与経験はない。]
カリウム保持性利尿剤(スピロノラクトン、トリアムテレン、カンレノ酸カリウム)、アルドステロン拮抗剤(エプレレノン)又はカリウム製剤(塩化カリウム、グルコン酸カリウム、アスパラギン酸カリウム、ヨウ化カリウム、酢酸カリウム)を投与中の患者

▼ミネラルバランスを保つには

日々の暮らしの中で、ミネラルバランスを保つには以下のポイントに気を配って過ごしましょう。

【1】 こまめに水分補給する(脱水に注意)
【2】 適度に運動してお通じを良くする(便秘に注意)
【3】 カリウムを摂りすぎない(青菜類、芋類、豆類にはカリウムが多い)
【4】 他の薬の併用に注意(カリウム値が上がりやすい薬があります)

▼関連情報


▼広告のキービジュアル

「ミネブロ」の広告は、“発売準備中”から含めて1年以上連続の広告登場となっており、年間を通して広告を目にしない月はありません。それだけの期待を背負った製品ということです。

広告のキービジュアルは、オリンピックの正式種目にもなったクライミングです。使い古されたコンセプトでも、切り口が新しければ新鮮なビジュアルになるという良いお手本ですね。ミネラルコルチコイド受容体ブロッカーで「ミネブロ」という製品名も、分かりやすくて好感が持てます。

従来のミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬の課題を克服した、その先に手が届く降圧薬、というイメージです。ブロックの壁は、ミネラルコルチコイド・ブロックを掛けているのかもしれません。高血圧の薬は、だいたい下がるビジュアル(血圧を下げるイメージ)が多いのですが、こちらは珍しく上がっていくビジュアルです。

作用機序や薬の特長を視覚的に説明する、というタイプのキービジュアルではなく、どちらかというと降圧薬の中での“ポジショニング”に重点を置いたビジュアルです。

ポジショニングとは、例えば缶コーヒー市場で、豆の品質やドリップ製法などで競争していたとします。そこへ、【朝専用】という新しい切り口で勝負する、という手法です。いままで空席だったポジションに製品を上手く当てはめて、地位を確立していきます。

「ミネブロ」は、既存のアルドステロン阻害薬の“その先”、ARBやACE阻害剤で下がった血圧の“その先”ということを訴えて、その地位を獲得しながら製品を売っていくんだというコンセプトです。つまり、高血圧治療薬は「どれだけ下げるか」から「どのように下げるか」という“量から質”の時代に突入しているということです。

▼“その先”を使ったキービジュアル

キャッチコピーである【その先に、手が届く】というフレーズは、「その先の日本へ:JR東日本」「おいしさのその先へ:日清」「その先へ、挑む:NEC」「その先の道へ:北海道」「向きあって、その先へ:伊勢丹」とちょっと思い出しただけでも枚挙にいとまがない、一時期大変流行したコピーです。

便利なフレーズだからか、最近また頻繁に見かけるようになりました。困った時は「その先〜」という言葉に伝えたい言葉をくっつけると、未来感や希望感を感じる前向きなキャッチコピーに仕上がります。

この言葉が医療業界で重宝されているのは、「医療用医薬品製品情報概要等に関する作成要領」という自主規制があるからでしょう。医療用医薬品には不適切な宣伝が行われないように「事実誤認の恐れのある表現」や「誇大な表現」は広告に使用できません。そのために、知恵を絞ってひねり出した言葉が“その先へ”や“次のステージへ”といった抽象的なフレーズなのです。




一般名:エサキセレノン
製品名:ミネブロ錠1.25mg,2.5mg.5mg
高血圧治療剤/降圧薬/アルドステロン阻害薬/
選択的ミネラルコルチコイド受容体ブロッカー
2019年5月13日 新発売
第一三共

関連記事

カテゴリー

スポンサードリンク