バフセオ/保存期にも適応した腎性貧血治療剤

▼バフセオとは?

「バフセオ」は、低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素(HIF-PH)阻害剤と言われる腎性貧血治療剤です。

腎性貧血の患者は、透析前の保存期や、血液透析・腹膜透析を実施中の時期にも、疲労、息切れ、不眠、頭痛、活力の低下などの症状が現れることがあります。

人は腎臓の機能が落ちると、結果的に、心筋梗塞などの心血管系イベントをはじめ、身体のいろいろな部位に影響が出てくる恐れがあります。

「バフセオ」は、高地での緩やかな酸素濃度の低下時に、人が自然に適応する際に用いられる低酸素状態の改善と同じメカニズムで作用します。高地では、人体は低酸素誘導因子(HIF)の安定化によって低酸素状態に反応し、これにより赤血球の産生を高め、組織への酸素運搬を改善します。つまり、HIFの量が増加することで、赤血球産生を亢進させ、鉄の吸収や取り込みを促すというわけです。

▼バフセオの製品情報

製品名 バフセオ錠150mg,300mg
一般名 バダデュスタット
特徴 1日1回服用の経口剤。保存期・透析期で使用可能
効能・効果 腎性貧血
用法・用量 通常、バダデュスタットとして、1回300mgを開始用量とし、1日1回経口投与する。
以後は、患者の状態に応じて投与量を適宜増減するが、最高用量は1日1回600mgとする。

▼腎性貧血とは?

腎性貧血とは、腎障害によってエリスロポエチンの産生が低下することによって起こる貧血のことです。

腎性貧血は慢性腎臓病(CKD)の早期ステージから発現し、CKDの進展に伴って、その頻度が上昇することが報告されています。慢性腎臓病(CKD)患者は、国内で約1,330万人と言われています。

貧血に伴う症状には、疲労、息切れ、不眠、頭痛、活力の低下などがあり、著しい生活の質の低下につながります。腎性貧血は、【透析前の保存期】【血液透析】【腹膜透析】を実施中のいずれの時期にも症状が現れることがあります。

いままでは、腎性貧血に対する治療薬としては、タンパク同化ホルモン薬が使用されていましたが、ホルモンによる男性化などの副作用が問題となり、近年は“エリスロポエチン ベータ”と呼ばれる赤血球造血刺激因子製剤(ESA)が第一選択薬として使用されています(注射薬のミルセラなど)。

ESAは、腎臓で造り出されるエリスロポエチン(アミノ酸で出来たペプチドホルモン)と良く似た構造のペプチド製剤です。骨髄中の赤芽球系前駆細胞に働き、赤血球への分化と増殖を促すことで、貧血を改善することが臨床試験で認められています。しかし、ESAは、貧血が改善した後も、週2~3回の投与を継続する必要が課題でした。

2020年6月、新たな選択肢として、1日1回服用の経口剤「バフセオ」の承認が発表されました。腎性貧血治療薬は注射薬が主流でしたが、2019年末に経口薬が登場し、注目を集めています。

HIF阻害薬としては、先行して2019年11月に「エベレンゾ」が【透析施行中の腎性貧血】の適応で発売されていますが、「バフセオ」は【透析期】に加え、【透析前の保存期】の適応も承認されています。

腎性貧血市場は、「エベレンゾ」「バフセオ」「ダーブロック」などが立て続けに上市され、競争の激化が予想されています。

エベレンゾのキービジュアル

▼赤血球造血刺激因子製剤(ESA)

▼HIF-PH阻害薬とは?

山に登ると、呼吸がしづらくなります。酸素濃度は低い所でも高い所でも同じですが、気圧の関係で、大気中の酸素分圧が低くなるために息苦しくなるのです。

山などの高地で、息が苦しくなったとき、人体で活躍するのが低酸素誘導因子(HIF)です。HIFは造血ホルモンであるエリスロポエチン(EPO)の分泌を促し、EPOが骨髄などの造血細胞を刺激して赤血球を増産します。そして、赤血球が身体中へ酸素を運んでくれるわけです。なお、この「低酸素応答」の仕組みを解明した3人の研究者は、2019年にノーベル医学生理学賞を受賞しました。

「低酸素応答」の研究は、HIF-PH阻害薬という治療薬の開発につながっていきます。2019年9月に「エベレンゾ」が、透析期の腎性貧血を適応として承認され、2020年6月に「バフセオ」が透析期に加え、透析前の保存期の腎性貧血を適応として承認されました。

腎性貧血の治療としては、従来、“エリスロポエチン ベータ”と呼ばれる赤血球造血刺激因子製剤(ESA)が用いられていますが、ESA製剤は、貧血が改善した後も、週2~3回の投与を継続する必要があり、なかにはESA製剤に抵抗性を示す場合もあり、課題が残されていました。

そういった経緯で開発されたのが、HIF-PH阻害薬です。HIF-PH阻害薬は、低酸素誘導因子(HIF)の分解に関わるプロリン水酸化酵素(PH)を阻害して、腎性貧血を改善します。

▼バフセオの副作用

「バフセオ」の主な副作用は高血圧、下痢、悪心などが報告されています。

主な副作用 高血圧、下痢、悪心
重大な副作用 血栓塞栓症、肝機能障害

▼広告のキービジュアル

広告のキービジュアルは、階段を登る中年男性。マントのような三色の布地が印象的です。マントは「バフセオ」の象徴で、男性に希望や自信、前向きな姿勢を与えています。

階段で高い所へ登ってゆく姿は、「バフセオ」のメカニズムと同じ“高地での緩やかな酸素濃度の低下”を表現しています(通常人体は、低酸素誘導因子(HIF)の安定化によって、高地では自然に低酸素状態を改善します)。

新しいライフスタイル(注射剤→1日1回の経口剤)を提案しているような、美しいデザインです。

一般名:バダデュスタット
製品名:バフセオ錠150mg、300mg
腎性貧血治療剤/HIF-PH阻害剤
田辺三菱製薬

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