医薬品のバイラルマーケティングとは?

あなたのその症状、「胸やけ」「呑酸」ではありませんか?

画像は「逆流性食道炎」の疾患啓発広告です。TVコマーシャルも放映されていたので、目にした方も多いかと思います。一見、製品の広告には見えませんが、見る人が見ればキーカラーや社名でピンとくるでしょう。そうです、プロトンポンプ阻害薬「ネキシウム」の広告です。医薬品業界では、このような啓発広告を打つことが多いのです。いままで具合が悪くても病院へ行かなかった人が、「これって病気なんだ」と気がついて来院する、というケースも多いようです。

広告のキービジュアルは、俳優の筧 利夫さん。探偵風の衣装で、広告を目にした人へ「胸やけ」「呑酸」について問いかけています。
疾患自体の認知度を上げながら需要の掘り起こしを経て、結果的に自分たちの薬を売っていこう、というプロモーションです。製薬会社は、病気の種類が増えるほどマーケットが拡大しますので、病気を新たに“発見”することは金脈を掘り当てるようなものです。

医療用医薬品は、患者が自分で自分の薬を選ぶことが出来ない、という特殊な業界で成り立っています。つまり、一般的な製品のマーケティングは、医薬品にはそのまま通用しないということです。そこで、“疾患啓発広告”というものが誕生しました。

自社の薬の広告ではなく、“疾患の啓発”という客観的な内容だと、ニュースとしてメディアに取り上げられたり、信頼感が上がります。また、純粋な医薬品の製品広告では、キャッチコピーや表現方法に制限(薬事法やプロモーションコード)があるのですが、あくまでも“疾患啓発”なので(製品名を出していないので)自由に出来るわけです。

この広告の仕組みを最初に考えた人は、本当に頭が良いなあと感心します。TVなどのメディアで直接消費者に医療用医薬品の宣伝を出来るのは、世界中で米国とニュージーランドだけです。アメリカではお菓子でも売るみたいに医療用医薬品のコマーシャルを流しているので、日本人からすると驚きです。

疾患啓発広告は、一般ユーザーの“口コミ”も期待されています。いわゆる“バズ(buzz)”です。バズとは蜂がブーンと唸るようなざわついた状態のことから名付けられました。

それまで、処方箋医薬品広告のターゲットは医師や薬剤師に限られていたわけですが、製薬会社も“一般ユーザーを含めたマーケティングの重要性”にようやく気づき始めました。

インターネット全盛の世の中では、企業のサイトが一般ユーザーのblogなどに検索順位が負けることがあるからです。このような口コミを利用した戦略を【バイラル・マーケティング】と呼びます。

医療用医薬品業界も、単なる販売志向からマーケティング志向へと転換しつつあるのかもしれません。

※バイラル・マーケティング:製品やサービスを最終消費者に口コミで宣伝してもらい、需要を拡大するマーケティング戦略。“バイラル”とは“感染”という意味から名付けられました。

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