今、再び開かれる
アルドステロンブロックの可能性を求めて。
▼アルダクトンとは?
「アルダクトンA」は、身体の余計な水分を尿として排出し、浮腫(むくみ)を取って血圧を下げる利尿・降圧剤です。利尿作用も降圧作用もそれほど強くないので、実際は他の利尿薬のカリウムの調整役として投与されることが多いようです。標準的な心不全の処方+「アルダクトンA」を併用することで、重度の慢性心不全の患者に非常に有効なことが臨床試験で証明されています(死亡率が30%低下)。
アルドステロンと呼ばれる種類の利尿薬で、体内のカリウムを維持する特徴から“カリウム保持性利尿薬”とも呼ばれています。作用機序は、身体の水分を増やしながら、血圧を上げる原因となるアルドステロンというホルモンの動きを抑える効果があります。アルドステロンが抑制されると、水分と塩分が尿となって大量に排出されます。他の利尿薬と違い、カリウムの排泄が抑えられるのがメリットです。カリウム排泄性のループ系利尿薬やサイアザイド系利尿薬と相性がよく、併用する場合が多いです。
▼肝硬変に伴う腹水の治療に
肝硬変に伴う腹水の治療にもよく使われています。腹水という状態は、腸管がむくんでいる状態のことです。肝臓が硬くなると、腸管から肝臓に血液が入りにくくなり、うっ血がおこります。うっ血を起こした場所は浮腫が出ます。これがむくみと呼ばれる症状で、腸管が腫れたり、腹水が溜まってしまう状態です。腹水が溜まると、薬の吸収が悪くなります。特に、効果が強力なループ利尿薬は吸収が落ちて効きづらくなります。そこで、肝硬変では「アルダクトンA」を併用します。肝硬変は、体内でアルドステロンというホルモンが増えている状態なので「アルダクトンA」が非常に効果的です。
▼拡がりゆくアルダクトンAへの期待
50年前の発売当初(1963年)、心不全の治療において「アルダクトンA」に期待された役割は利尿作用による浮腫の改善でした。しかしそれが大規模臨床試験「RALES」(1999年)によって、“生命予後の改善”という役割が「アルダクトンA」に対して期待されるようになりました。
RALES試験では、中等症〜重症心不全患者に対し、ACE阻害薬およびループ系利尿薬に「アルダクトンA」を追加することで3年間の死亡率が約3割も減少することが示されたのです。さらに、2010年にはJCARE-CARDという国内の観察研究で、軽症心不全患者においても「アルダクトンA」が投与されている患者で死亡率がより低いことが報告されました。
海外では、軽症心不全悪者さんを対象とした大規模臨床試験「EMPHASISHF」においてアルドステロン受容体拮抗薬の追加投与が生命予後に対して好影階を与えることが認められました。その結果を受け「ESC心不全ガイドライン2012」では、その推奨範囲が軽症の心不全患者にまで拡大されました。
今後、日本の「慢性心不全治療ガイドライン」においても、アルドステロン受容体拮抗薬が軽症心不全患者に対して推奨される可能性は大いに考えられます。
▼アルダクトンに期待される多面的な有用性
【1】利尿作用による体液の減少
【2】アルドステロンの直接的なブロックによる心血管保護作用
【3】低カリウム血症のリスク軽減
▼セララとアルダクトンAとの違い
「セララ」(エプレレノン)も「アルダクトンA」(スピロノラクト)も、アルドステロン阻害薬(抗アルドステロン薬)に分類される降圧剤です。「セララ」は「アルダクトンA」の誘導体であり、作用機序的にはほとんど同じ薬です。
アルドステロンというホルモンは、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系の最終産物として産生され、腎臓に存在するアルドステロン受容体を介して、ナトリウムや水分を体内に保持し、昇圧作用を示します。
「アルダクトンA」との違いは、アルドステロン受容体への選択性が「セララ」の方が非常に高いという点です。「セララ」は、ミネラルコルチコイドという受容体にだけ選択的に作用(選択的アルドステロンブロッカー)するので、他への影響が少なく、内分泌系や性腺系の副作用(女性化乳房、月経異常、勃起不全)がほとんど現れません。
「セララ」や「アルダクトンA」といった“アルドステロン阻害薬”は、慢性心不全に対する有効性が大規模試験で証明されており、軽症から重症の慢性心不全に広く使用されています。「セララ」に関してはEPHESUS試験(N Engl J Med.2003;348:1309-21)、「アルダクトンA」に関してはRALES試験(N Engl J Med.1999;341:709-17)で有効性が報告されています。基本的に、ACE阻害薬といった通常の標準治療薬との併用が推奨されています。
「セララ」と「アルダクトンA」は、どちらかと言えば降圧剤としてではなく、慢性心不全や心不全の予防といったオプション的な効果を期待して処方されることが多い薬と言えます。
▼関連情報
▼広告のキービジュアル
2010年に一新された広告のキービジュアルは、黄金の宝箱です。発売から30年以上経った今でも期待されているアルダクトンAの新しい“可能性”を宝箱に見立て、その可能性が開かれていく様子をビジュアルとして表現しています。
以前のビジュアルは、ペプシマンのようなCGキャラクター“アルダクトンマン”でしたが、このキャラクターは「アルダクトンA」の誘導体である「セララ」のキャラクター“セララマン”として、引き継がれていくことになります。
一般名:スピロノラクトン
製品名:アルダクトンA錠25mg,50mg、細粒10%
抗アルドステロン薬/抗アルドステロン性利尿・降圧剤
ファイザー