フィルグラスチム/G-CSFバイオシミラー

導く存在 持田発G-CSFバイオシミラー

▼フィルグラスチムとは?

『フィルグラスチム「モチダ」』は、G-CSF製剤として日本初のバイオ後続品(バイオシミラー)です。がん治療(化学療法)によって減少した白血球を増やす薬です。がん化学療法は、薬の副作用で白血球が減少してしまうケースが多い治療法です。白血球が減少してしまうと免疫力が落ち、感染症にかかるリスクが高くなります。「フィルグラスチム」は、白血球を増やすことで癌の治療をサポートする注射液です。

▼G-CSFとは?

G-CSFは、好中球(白血球の1種)の増殖を促進する蛋白質のことです。フィルグラスチム(先発品:グラン)は代表的なG-CSF製剤で、好中球が減少する様々な治療に広く使用されています。

▼遺伝子組換え技術とは

遺伝子組換え技術は、遺伝子を細胞に導入し、その特性を発現させる技術のことです。ヒントになったのは、自然界で起こるウイルス感染です。ウイルスが細胞に感染すると、“自分の遺伝子を宿主の細胞に注入する”という現象が起こります。この現象を参考に、その生物が持っていない特性を持たせるため、別の生物から取り出した遺伝子を組み込むことに成功しました。現在、遺伝子組換え技術は有益な物質を大量に生産したり、作物や家畜の改良などにも用いられています。

増える遺伝子組換え医薬品(バイオ医薬品)

最初の遺伝子組み換え技術による医薬品は、ヒトのインスリンで、米国で1982年に承認されました。1986年には最初のワクチンである「B型肝炎ワクチン」が発売されていますが、それ以降、たくさんの遺伝子組み換え製剤が導入されています。糖尿病の治療に必要なインスリンは、これまで豚から取り出したインスリンを使うか、化学反応を駆使して異なる部分のアミノ酸をヒト型へ変換して作っていました。現在では、遺伝子工学によって、ヒトの遺伝子を大腸菌に組み込んで、人間本来のインスリンを安く大量に生産することが可能となっています。

▼バイオ後続品(BS:バイオシミラー)とは?

バイオ後続品とは、遺伝子組み換え技術で創られるバイオ医薬品のことです。2009年3月、厚生労働省は“後発医薬品”いわゆるジェネリックとは区別して“バイオ後続品(BS:バイオシミラー)”という新たな分類を定めました。分かりやすく言うと、バイオ医薬品のジェネリックということです。日本国内では、2009年に成長ホルモンの「ソマトロピン」(先発品はファイザーの「ジェノトロピン」)が、初めて承認されたバイオ後続品となります。

バイオ後続品は、先発品とは別の製薬会社によって開発されるため、宿主や培養方法に違いがあり、完全に一致した製品は造れません。その複雑な分子構造と特殊な製造過程ゆえに、先発品と異なる部分が出る可能性が高くなります。一般的な後発品医薬品(ジェネリック)に較べて、かなりハードルが高い製剤です。そういうこともあって、一般的なジェネリックとは区別して“バイオシミラー”と呼んでいます。シミラーとは英語で“Similar:類似した”という意味で、やはり構造上の相違が懸念されているからだと思います。

▼バイオシミラーの課題

バイオ医薬品は低分子医薬品に比べて高価なため、医療費が国の財政に与える影響が大きいことが問題となっています。しかし、安価なバイオ後続品(バイオシミラー)への切り替えはなかなか上手く運んでいません。主な原因は、一般人の認知度が低い点。それから高額療養費制度によって先発品とバイオシミラーで患者の費用負担が変わらないことが挙げられます。症状が安定している患者にとっては、先発品からバイオシミラーへ切り替えるメリットがないのです。高額療養費制度の見直しが当分見込めない現状では、医療保険制度と薬剤に精通している薬剤師の活躍が不可欠です。バイオシミラーの普及へは、薬剤師が中心となって、切り替えの良例を築き上げていく必要がありそうです。

▼その他の造血薬


製品名:フィルグラスチムBS注75μg,150μg,300μgシリンジ「モチダ」
一般名:フィルグラスチム(遺伝子組換え)注射液
G-CSF製剤
持田製薬

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