▼ベバシズマブとは?
「ベバシズマブBS」は、2007年4月に承認された世界初の血管新生阻害薬「アバスチン」のバイオ後続品(バイオシミラー)で、他の抗がん剤と併用することでよい治療効果を発揮する薬です。効能・効果は【治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がん】。
がんは癌細胞の増殖に伴って、栄養を供給するための血管を新しく作ります(血管新生)。「ベバシズマブ」は、この血管新生を促すためにがん細胞が分泌するVEGFというタンパク質に結合して、血管の新生を防ぎ、栄養をゆき渡らせないようにして、がん増殖の速度を低下させる働きがあります。
▼抗悪性腫瘍薬の市場規模
「ベバシズマブ」の先発品である「アバスチン」は、2017年度の売上が1142億円で、国内医療用医薬品全体で売上1位でした(前年1位は「ハーボニー」)。抗悪性腫瘍薬の市場規模は、「アバスチン」やがん免疫療法薬「キイトルーダ」などが牽引し、2017年度に初めて1兆円を超えています。
2018年12月度の単月のデータ速報では、「アバスチン(ベバシズマブ)」の売上高(薬価ベース)は101億円。疼痛治療剤「リリカ」が90億円、プロトンポンプ阻害剤「ネキシウム」が86億円と続いています。
なお、2019年1~3月の「アバスチン(ベバシズマブ)」の売上高(薬価ベース)は274億円で首位。2位はMSDの抗PD-1抗体「キイトルーダ」の249億円(前年同期比60.0%増)で、3位はファイザーの疼痛治療剤「リリカ」の234億円(前年同期比9.9%増)でした。
▼バイオ後続品(BS:バイオシミラー)とは?
バイオ後続品とは、遺伝子組み換え技術で創られるバイオ医薬品のことです。2009年3月、厚生労働省は“後発医薬品”いわゆるジェネリックとは区別して“バイオ後続品(BS:バイオシミラー)”という新たな分類を定めました。分かりやすく言うと、バイオ医薬品のジェネリックということです。日本国内では、2009年に成長ホルモンの「ソマトロピン」(先発品はファイザーの「ジェノトロピン」)が、初めて承認されたバイオ後続品となります。
バイオ後続品は、先発品とは別の製薬会社によって開発されるため、宿主や培養方法に違いがあり、完全に一致した製品は造れません。その複雑な分子構造と特殊な製造過程ゆえに、先発品と異なる部分が出る可能性が高くなります。一般的な後発品医薬品(ジェネリック)に較べて、かなりハードルが高い製剤です。そういうこともあって、一般的なジェネリックとは区別して“バイオシミラー”と呼んでいます。シミラーとは英語で“Similar:類似した”という意味で、やはり構造上の相違が懸念されているからだと思います。
▼バイオシミラーの課題
バイオ医薬品は低分子医薬品に比べて高価なため、医療費が国の財政に与える影響が大きいことが問題となっています。しかし、安価なバイオ後続品(バイオシミラー)への切り替えはなかなか上手く運んでいません。主な原因は、一般人の認知度が低い点。それから高額療養費制度によって先発品とバイオシミラーで患者の費用負担が変わらないことが挙げられます。症状が安定している患者にとっては、先発品からバイオシミラーへ切り替えるメリットがないのです。高額療養費制度の見直しが当分見込めない現状では、医療保険制度と薬剤に精通している薬剤師の活躍が不可欠です。バイオシミラーの普及へは、薬剤師が中心となって、切り替えの良例を築き上げていく必要がありそうです。
▼抗体医薬とは?
抗体医薬とは、免疫反応が起こるタンパク質(抗体)を人為的に造ったもので、抗体を利用して標的を攻撃する医薬品のことです。遺伝子組換え技術などを応用して、病気に関連する分子だけに結合する抗体を作製します。
抗体医薬はがん細胞にある標的(抗原)にくっつき、攻撃担当の免疫細胞を呼び寄せて標的を殺傷します。標的が限定されるので副作用が軽い(他の細胞に影響を与えにくい)という特徴があります。しかし、効力が充分とは言えず、効果を高めるために様々な工夫が試みられています。
▼遺伝子組換え技術とは
遺伝子組換え技術は、遺伝子を細胞に導入し、その特性を発現させる技術のことです。ヒントになったのは、自然界で起こるウイルス感染です。ウイルスが細胞に感染すると、“自分の遺伝子を宿主の細胞に注入する”という現象が起こります。この現象を参考に、その生物が持っていない特性を持たせるため、別の生物から取り出した遺伝子を組み込むことに成功しました。現在、遺伝子組換え技術は有益な物質を大量に生産したり、作物や家畜の改良などにも用いられています。
最初の遺伝子組み換え技術による医薬品は、ヒトのインスリンで、米国で1982年に承認されました。1986年には最初のワクチンである「B型肝炎ワクチン」が発売されていますが、それ以降、たくさんの遺伝子組み換え製剤が導入されています。糖尿病の治療に必要なインスリンは、これまで豚から取り出したインスリンを使うか、化学反応を駆使して異なる部分のアミノ酸をヒト型へ変換して作っていました。現在では、遺伝子工学によって、ヒトの遺伝子を大腸菌に組み込んで、人間本来のインスリンを安く大量に生産することが可能となっています。
▼広告のキービジュアル
広告のキービジュアルは、趣味の木工を愉しむ男性とバイオ医薬品に携わる男性。がんを患った男性の予後を、バイオテクノロジーが陰で支えている、というイメージでしょうか。レタッチの精度が高く、ふたつの空間がシームレスに繋がっていることで、違和感なく1枚の画(ビジュアル)として感じることが出来ます。
バイオ後続品は、その複雑な分子構造と特殊な製造過程ゆえに、その品質が注目される製品です。バイオ医薬品の品質をチェックする姿を描くことで、この製品の質の高さを連想させる効果を狙っています。
がんの薬というのは、深刻な要素をはらんだデリケートな薬です。明る過ぎても、製品のイメージにマッチしません。“明るい”ではなく、“暗くない”というぎりぎりのラインを狙った誠実で上品なキービジュアルに仕上がっています。
なお、このビジュアルは、同じ第一三共の「トラスツズマブ」の姉妹編(シリーズ)となっています。
一般名:ベバシズマブ(遺伝子組換え)[ベバシズマブ後続2]注
製品名:ベバシズマブBS点滴静注100mg「第一三共」・400mg「第一三共」
抗悪性腫瘍剤/抗VEGFヒト化モノクローナル抗体
第一三共