リンを運び出す、アイアンパワー。
▼リオナとは?
「リオナ」は、“クエン酸第二鉄”と言われる血液中のリンを減らす薬剤です。慢性腎臓病患者の高リン血症を改善する高リン血症治療薬です。
人は腎臓の機能が落ちると、リンの排泄が十分にできず、血液中にリンが蓄積されていきます。これが、高リン血症です。高リン血症の状態が長期間続くと、骨がスカスカになったり、動脈硬化が起こりやすくなったりします。結果的に、心筋梗塞などの心血管系イベントをはじめ、身体のいろいろな部位に影響が出てくる恐れがあります。
「リオナ」は、消化管内で食べ物に含まれるリンと結合し、リンの消化管吸収を阻害します。有効成分のクエン酸第二鉄(鉄分)によって、難溶性の沈殿を形成することで、リンが吸着する仕組みです。リンとカルシウムの血中濃度を正常に保つことは、骨の病気を防ぐことになり、さらに動脈硬化を抑制して、深刻な心血管系合併症の予防へと繋がっていきます。
▼リンってなに?
【リンとは?】
リンは、身体のミネラルの中で、カルシウムの次に多い栄養素です。成人の体内には最大で850gのリンが含まれています。
リンは、普通に食生活を送っていれば、基本的に不足することはありません。むしろ現代では、リンの過剰摂取が問題となっています。原因のひとつには、食品添加物が挙げられます。食品添加物にはリンを多く含む物が多く、食品やジュースなどの酸味の素として広く使用されているからです。
リンは、カルシウムの代謝と密接に繋がっていることが判っています。カルシウムの摂取量が少ない人が、リンを過剰に摂取する食事を長期間続けた場合、骨量や骨密度が減る可能性が高いと言われています。
丈夫な骨を維持するためにカルシウムを摂ることが大事なことは、多くの人が知っていますが、リン(外食や加工食品)の取り過ぎに注意する必要性はあまり知られていません。食生活を見直すとともに、日常的にカルシウムを摂取することが重要です。
▼高リン血症とは?
高リン血症は、透析患者や慢性腎臓病(CKD)の患者など、腎機能が低下していて、リン排泄が上手くいかなくなることで生じる病気です。
高リン血症状態が長期間続くと、臓器や関節の周囲に石灰沈着が生じやすくなります。血管壁での石灰沈着は、動脈硬化の原因となり、心筋梗塞や狭心症を発症するリスクが高まることが指摘されています。腎臓に障害のある人は、血清リン濃度を適切にコントロールすることが重要です。
高リン血症の治療には、食事制限や透析によるリン除去に加え、リンの吸収を抑制するリン吸着薬といった方法があります。経口リン吸着薬は、薬剤の特性から、高カルシウム血症になりやすい、胃腸障害(主に便秘)が起こるといった課題も多く、保存期の慢性腎臓病(CKD)患者に使える薬剤が限られている、という問題もありました。そういった経緯で開発された薬剤が「リオナ」です。
▼リオナの特徴
「リオナ」は、リン結合能力が高い第二鉄(3価鉄)を主成分としたリン吸着薬です。血清カルシウム値が高く、炭酸カルシウム製剤が使いにくい場合に有用です。透析期に加え、保存期慢性腎臓病における高リン血症に広く適用可能です。
「リオナ」は、比表面積を大きくすることで溶解性が改良されており、既存の高リン血症治療薬よりも溶解速度が速くなり、消化管内で効率的にリン吸着作用を発揮します(血清リン濃度の低下が約1週間で認められます)。
「リオナ」は、カルシウムを含まないため、高カルシウム血症や血管石灰化の発現リスクが低いことが特徴のひとつです。類似薬の“ポリマー性リン吸着薬”でよく見られる腸管穿孔といった胃腸障害の心配はありません。一方、便秘がない代わりに下痢を起こしやすい薬剤です。また、長期間使用する場合は、鉄の過剰症になる恐れがあります。
▼リオナの副作用、注意点
「リオナ」の主な副作用は下痢です。長期間使用する場合は、鉄の過剰症になる恐れがあるので、注意が必要です。なお、「リオナ」は食べ物のリンを吸着する薬剤であり、効果を十分に発揮させるためには、食直後の服用が必須です。
主な副作用 | 下痢、便秘、快感 |
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その他の副作用 | 腹痛、血清フェリチン増加、血中鉄増加、ヘモグロビン増加、赤血球増加症 |
▼鉄欠乏性貧血患者を対象にした試験(追記:2019年7月)
2019年7月、「リオナ」は鉄欠乏性貧血患者を対象に“効能追加”の研究を進めています。今後、
国内で実施中の第Ⅲ相臨床試験を経て、【鉄欠乏性貧血】を適応症とした“効能追加”申請を目指しています。
▼鉄欠乏性貧血の効能追加申請(追記:2020年5月)
2020年5月、製造販売元のJTが、高リン血症治療薬「リオナ」について【鉄欠乏性貧血】の効能追加を申請したと発表しました。
▼鉄欠乏性貧血の効能追加承認(追記:2021年2月)
2021年2月、高リン血症治療薬「リオナ」の【鉄欠乏性貧血】の新効能・新⽤量追加が承認されました。なお、海外では、成⼈の保存期慢性腎臓⽤患者における鉄⽋乏性貧⾎の治療に対して、既に⽶国で承認されています(2020年10⽉現在)。
【鉄欠乏性貧血とは?】
鉄欠乏性貧血は、鉄分が足りなくなって起こる貧血(ヘモグロビン産生低下が原因)のことです。鉄欠乏性貧血は、貧血の中で最も頻度の高い症状で、具体的には動悸、息切れ、異食症、易疲労性などが起こります。死に至るような病気ではありませんが、患者の生活の質を著しく下げるとして問題になっています。鉄欠乏性貧血の治療には、鉄欠乏の原因を治療すると同時に、鉄剤の投与を行います。
今回、日本で実施した鉄欠乏性貧血患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験の結果などに基づいて、追加申請されました。「リオナ」と「フェロミア」(クエン酸第一鉄ナトリウム)を比較した試験では、投与7週間後のヘモグロビン値の変化量(主要評価項目)について、リオナ群のフェロミア群に対する非劣性が確認されました。
また、安全性では、「リオナ」の良好な忍容性が確認されました。副作用の発現率で「悪心」と「嘔吐」を調査した結果、リオナ群は悪心:13.0%、嘔吐:3.2%、フェロミア群は悪心:32.7%、嘔吐:15.2%という結果でした。
▼リオナの類似薬
▼広告のキービジュアル
広告のキービジュアルは、リンを運び出すロボットRio君。ロボットは、鉄分を表しています。鉄の力でリンをがっちり掴んで、外へ運び出す、という作用機序を上手く表現したビジュアルです。映画「ショートサーキット」を彷彿とさせる楽しい広告に仕上がっています。
一般名:クエン酸第二鉄
製品名:リオナ錠250mg
高リン血症治療薬/非ポリマー性リン吸着薬
鳥居薬品
JT