ジャディアンス/新規患者が17ヵ月連続増加

2型糖尿病治療の、頼もしいガーディアン

▼ジャディアンスとは?

「ジャディアンス」は、血糖を下げる糖尿病の薬です。腎臓の尿細管で糖の再吸収を抑制(SGLT2というトランスポーターを邪魔する)することで、余計な糖分を尿として排出させる効果があります。過剰な糖が尿として排泄されることによって、血糖値を下げる薬です。単独では効果が弱いので、他の糖尿病治療薬と併用する場合が多いようです。

「ジャディアンス」は、SGLT2阻害剤の中で最も後に発売された薬ですが(2015年2月発売)、2015年9月に心血管イベントリスクの低下を示す“エンパレグアウトカム試験”の結果が公表されたことで、医療関係者の評価が高まっています。2017年の売上高としては、前年比2.7倍の110億円を突破し、シェアを18.7%まで高めてきました。特に新規患者によるシェアが17ヵ月連続トップ(2016年7月〜2017年11月)を更新中で、市場全体を底上げすると期待されています。

▼世界同時開発で好調維持(追記:2018年3月)

日本イーライリリーはの2017年度(1〜12月)の売上高は、前年比7%増の2601億円でした。抗がん剤や抗うつ薬「サインバルタ」などの大型製品の成長が売上に貢献し、主軸のインスリン製剤では、糖尿病領域でシェアトップとなりました。

SGLT2阻害薬「ジャディアンス」の売上は、2.7倍増の110億円まで増加しています。新規処方患者の割合が多く、20ヵ月連続1位を記録していると報告されています。

▼糖尿病とは?

糖尿病には1型と2型が存在します。1型糖尿病は、膵臓に存在するβ細胞と呼ばれるインスリンを分泌する組織が、主に自己免疫によって壊れてしまっている状態の病気です。インスリンが分泌できないため、血糖が高くなってしまいます。1型糖尿病の患者には、基本的にインスリン注射を打って、治療します。

一方で2型糖尿病(インスリン非依存型糖尿病)は、生活習慣や肥満などによってインスリンの効きが悪くこなることで発症する病気です。「ジャディアンス」は、2型糖尿病に対して使用する選択的SGLT2阻害剤です。

2型糖尿病治療では、薬を使う前にまずは食事の改善や運動療法が試されます。そして、食事療法や運動療法を行っても血糖値の改善が見られない場合に、「ジャディアンス」のような薬を併用して、血糖をコントロールします。糖尿病は食事療法、運動療法、薬事療法の3つが基本ですが、ひとつでも手を抜くと血糖値が悪くなってしまいます。日々の血糖値を適切に保つことは、将来起こるかもしれないさまざまな合併症の予防につながります。

▼ジャディアンスが向いている患者

・高血圧などの生活習慣病を治療中の患者
・食事・運動療法では、なかなか目標の血糖値に届かない患者
・既存の治療にもうひと押しして血糖値を下げたい患者
・老年症候群(※)のない高齢者でもう少し血糖値を下げたい患者

※75歳以上の高齢者あるいは、65〜74歳で老年症候群(サルコペニア、認知機能低下、ADL低下など)のある場合には慎重に投与

▼広告のキービジュアル

中年男性の影がガーディアンになっているという絵柄。昭和っぽいレトロさを感じます。ガーディアン (guardian) とは、守護者、保護者という意味の言葉です。ジャディアンス → ジャーディアン → ガーディアンという駄洒落でしょうか?
「ジャディアンス」の名称の由来は、Ja(ドイツ語の”Yes”)と Radiance(輝き)から、“2型糖尿病の患者さんに未来へのポジティブな輝きを与える”薬剤という意味が込められています。

▼SGLT2阻害剤とは?

SGLT2阻害剤は、比較的安全で質の高い血糖コントロールが期待できる薬剤です。体重の減少効果が特徴で、日本よりも肥満の多い欧米で注目度が高い薬です。HbA1cを下げるレベルはDPP-4阻害剤と同じようなレベルと言われ、食後血糖値も空腹時血糖も全体的に下げるため、血糖値はインスリンを使った時に近い挙動になります。低血糖を発症するリスクが少ないのもDPP-4阻害剤と同様です。最も適する糖尿病患者のタイプは“肥満でインスリンの分泌が比較的保たれている患者”ということになります。逆に、痩せている人や高齢者には注意が必要です。

副作用で気をつけなければいけないのは、尿路・生殖器感染症です。排泄される尿が糖分を多く含むようになるので、細菌が繁殖しやすくなります。膀胱炎、尿路感染症、膣カンジダ症といった副作用が現れることがあります。その他の副作用としては、発熱、頻尿、排尿痛、陰部の腫れやかゆみ、脇腹や背中の痛みなどが報告されています。

▼あらためて脚光が当たるSGLT2阻害剤

SGLT2阻害剤については、血糖降下作用や体重減少効果だけでなく、心血管イベントのリスク減少といった複合的な効果が明らかになりつつあります。2015年9月、ストックホルムで行われた「欧州糖尿病学会」において、エンパグリフロジン(ジャディアンスの有効成分)で心血管死亡率は38%も減少したという大規模試験の結果が発表されました。いま、欧米ではあらためてSGLT2阻害剤に脚光が当たっています。

大規模試験の結果でエビデンスが出てきたこともあり、日本糖尿病学会は2016年5月に「SGLT2阻害薬の適正使用に関するレコメンデーション」の改訂を行いました。改訂の結果、高齢者でも適応可能と考えられる対象患者数が拡大しています。

SGLT2阻害薬は、直接的なインスリン分泌促進作用を持たず、体重減少やインスリン抵抗性の改善も期待できることが特徴です。肥満度が高い欧米では、病態に適しているということで高評価ですが、日本では“DPP-4阻害薬”に押されています。2016年の資料によれば、国内のSGLT2阻害薬の処方率は処方箋ベースで2〜3%程度だということです。日本では、圧倒的なDPP-4阻害薬の勢力に立ちすくんでいる状態ですが、臨床試験結果からの逆転はあるのでしょうか。

▼SGLT2阻害剤3強時代

SGLT2阻害剤市場のシェア争いは、「スーグラ」「フォシーガ」「ジャディアンス」の3製品に絞られてきました。現在首位の「スーグラ」を「フォシーガ」が猛追。「ジャディアンス」も新規糖尿病患者を増やして、迫っています。市場全体としても拡大傾向で、2018年度は1000億円が視野に入っています。

製品名 スーグラ フォシーガ ジャディアンス
2016年売上 95億円 78億円 41億円
2017年予測売上 117億円 110億円 110億円

▼主なSGLT2阻害剤








一般名:エンパグリフロジン
製品名:ジャディアンス錠10mg,25mg
糖尿病用剤/SGLT2阻害剤/選択的SGLT2阻害剤
イーライリリー
ベーリンガーインゲルハイム

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