その効果、日本発グローバル。
▼カナグルとは?
「カナグル」は、2型糖尿病の薬です。腎臓で糖を再吸収する役割を持つたんぱく質(SGLT2)を阻害し、血中に過剰に存在する糖を尿中へ排せつすることで血糖値を下げます。
SGLT2阻害剤と呼ばれる種類の薬で、体重低減の効果もあり、肥満度の高い欧米では注目されている薬です。欧米での処方率は全体の20%を超えているそうですが、日本でのSGLT2阻害剤の処方率は、処方箋ベースで2〜3%程度だということです。日本では、圧倒的にDPP-4阻害剤が売れています。
▼糖尿病とは?
糖尿病には1型と2型が存在します。1型糖尿病は、膵臓に存在するβ細胞と呼ばれるインスリンを分泌する組織が、主に自己免疫によって壊れてしまっている状態の病気です。インスリンが分泌できないため、血糖が高くなってしまいます。1型糖尿病の患者には、基本的にインスリン注射を打って、治療します。
一方で2型糖尿病(インスリン非依存型糖尿病)は、生活習慣や肥満などによってインスリンの効きが悪くこなることで発症する病気です。「カナグル」は、2型糖尿病に対して使用する選択的SGLT2阻害剤です。
2型糖尿病治療では、薬を使う前にまずは食事の改善や運動療法が試されます。そして、食事療法や運動療法を行っても血糖値の改善が見られない場合に、「カナグル」のような薬を併用して、血糖をコントロールします。糖尿病は食事療法、運動療法、薬事療法の3つが基本ですが、ひとつでも手を抜くと血糖値が悪くなってしまいます。日々の血糖値を適切に保つことは、将来起こるかもしれないさまざまな合併症の予防につながります。
▼広告のキービジュアル
広告は、「グローバル」と「CANAGLU」の【G】と矢印を組合せたビジュアルです。血糖値を下げるというイメージです。下部のチェックの帯はどういう意味でしょうか? チェックが入ると、可愛らしさや優しい印象を受けますね。
▼配合剤の登場
2016年8月に田辺三菱は、選択的DPP-4阻害剤の「テネリア錠(一般名・テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物)」と、SGLT2阻害剤の「カナグル錠(一般名・カナグリフロジン水和物)」の配合剤について、2型糖尿病を適応症とした製造販売承認申請を行いました。2型糖尿病治療の新たな選択肢の登場に期待したいです。
▼SGLT2阻害剤とは?
SGLT2阻害剤は、比較的安全で質の高い血糖コントロールが期待できる薬剤です。体重の減少効果が特徴で、日本よりも肥満の多い欧米で注目度が高い薬です。HbA1cを下げるレベルはDPP-4阻害剤と同じようなレベルと言われ、食後血糖値も空腹時血糖も全体的に下げるため、血糖値はインスリンを使った時に近い挙動になります。低血糖を発症するリスクが少ないのもDPP-4阻害剤と同様です。最も適する糖尿病患者のタイプは“肥満でインスリンの分泌が比較的保たれている患者”ということになります。逆に、痩せている人や高齢者には注意が必要です。
副作用で気をつけなければいけないのは、尿路・生殖器感染症です。排泄される尿が糖分を多く含むようになるので、細菌が繁殖しやすくなります。膀胱炎、尿路感染症、膣カンジダ症といった副作用が現れることがあります。その他の副作用としては、発熱、頻尿、排尿痛、陰部の腫れやかゆみ、脇腹や背中の痛みなどが報告されています。
▼あらためて脚光が当たるSGLT2阻害剤
SGLT2阻害剤については、血糖降下作用や体重減少効果だけでなく、心血管イベントのリスク減少といった複合的な効果が明らかになりつつあります。2015年9月、ストックホルムで行われた「欧州糖尿病学会」において、エンパグリフロジン(ジャディアンスの有効成分)で心血管死亡率は38%も減少したという大規模試験の結果が発表されました。いま、欧米ではあらためてSGLT2阻害剤に脚光が当たっています。
大規模試験の結果でエビデンスが出てきたこともあり、日本糖尿病学会は2016年5月に「SGLT2阻害薬の適正使用に関するレコメンデーション」の改訂を行いました。改訂の結果、高齢者でも適応可能と考えられる対象患者数が拡大しています。
SGLT2阻害薬は、直接的なインスリン分泌促進作用を持たず、体重減少やインスリン抵抗性の改善も期待できることが特徴です。肥満度が高い欧米では、病態に適しているということで高評価ですが、日本では圧倒的な“DPP-4阻害薬”の勢力に押されています。2016年の資料によれば、国内のSGLT2阻害薬の処方率は処方箋ベースで2〜3%程度だということです。日本では、圧倒的なDPP-4阻害薬の勢力に立ちすくんでいる状態ですが、臨床試験結果からの逆転はあるのでしょうか。
▼主なSGLT2阻害剤
一般名:カナグリフロジン水和物
製品名:カナグル錠100mg
SGLT2阻害剤/2型糖尿病治療剤
第一三共
田辺三菱