2型糖尿病治療の新パートーナー
▼スーグラとは?
「スーグラ」は、2型糖尿病の治療に用いる、国内初の選択的SGLT2阻害剤です。腎臓での糖再吸収を抑制することで血糖コントロールが改善され、HbA1cの低下を促します。インスリンとは無関係に作用しますので、低血糖を起こしにくいと言われています。基本的に他の糖尿病治療薬と併用して使います。インスリン注射薬を含めて、TZD、SU、BG、α-グルコシダーゼなど、すべての糖尿病治療薬との併用が可能です。新しい薬なので、長期服用時の有効性や安全性は、まだ確立されていません。2016年の時点で、「スーグラ」は一番売れているSGLT2阻害剤です。
▼DPP-4+SGLT2阻害配合剤「スージャヌ」発売(追記:2018年5月)
2018年5月22日、MSDとアステラスの2型糖尿病治療用配合剤「スージャヌ」が発売されました。国内でそれぞれ画期的医薬品(ファースト・インクラス)とされるDPP-4阻害剤「ジャヌビア」とSGLT2阻害剤「スーグラ」を組み合わた合剤です。DPP-4+SGLT2阻害配合剤は、「カナリア」に続いて2番目となります。
薬価は、1錠263.80円。中医協の試算ではピーク時(2024年度)の予測売上高は221億円で、予測患者数は27万人となっています。
▼糖尿病とは?
糖尿病には1型と2型が存在します。1型糖尿病は、膵臓に存在するβ細胞と呼ばれるインスリンを分泌する組織が、主に自己免疫によって壊れてしまっている状態の病気です。インスリンが分泌できないため、血糖が高くなってしまいます。インスリン注射を打って、治療します。
一方で2型糖尿病は、生活習慣や肥満などによってインスリンの効きが悪くこなることで発症する病気です。「スーグラ」は、2型糖尿病に対して使用する薬です。2型糖尿病治療では、薬を使う前にまずは食事の改善や運動療法が試されます。そして、食事療法や運動療法を行っても血糖値の改善が見られない場合に、「スーグラ」のような2型糖尿病治療薬が処方されます。
糖尿病は食事療法、運動療法、薬事療法の3つが基本ですが、「スーグラ」を使うと、1日300kcalから400kcalを尿として排出すると言われており、人によっては体重がかなり減少します。そのようなケースでは、食事療法が占めていた負担は少なくなるのかもしれません。ただし、利尿作用があるため、急激に運動した後などでまれに脱水症状を起こす危険があります。
▼1型糖尿病にも適応拡大へ(追記:2019年1月)
2018年12月、アステラス製薬の「スーグラ」が1型糖尿病への適応拡大が承認されました。SGLT2阻害薬が、1型糖尿病(成人のみ)にも処方できるようになったということです(なお、2019年には、「スーグラ」に続いて「フォシーガ」も1型糖尿病の適応が承認される見込みです)。
SGLT2阻害薬は、血糖コントロールの安定と同時にインスリン投与量の減量や体重の減少など、1型糖尿病の新たな選択肢として期待されています。
1型糖尿病の患者は、若い頃からの発症者が多く、そのため罹病期間が長い傾向があります。長期間の血糖コントロールが安定しなければ、糖尿病合併症のリスクも高くなります。しかし、インスリンを増やしてきっちり血糖改善を目指せば、低血糖や体重増加といったリスクが避けられないというジレンマがありました。
この問題に対して、「スーグラ」などのSGLT2阻害薬は、インスリン分泌系に直接作用せず血糖を下げる効果があるので、1型糖尿病にも使用できるのでは? と考えられ、1型糖尿病への適応拡大を視野に開発が進められていました。
一方、メリットばかりではなく、課題も残っています。「スーグラ」の国内第3相試験では発生のなかった“糖尿病ケトアシドーシス(DKA)”が、1型糖尿病を対象とした臨床試験で報告されたのです。SGLT2阻害薬の長期的な安全性に関するデータは、まだ十分に蓄積されているとは言えません。
SGLT2阻害薬の作用機序が【尿糖排泄型】であり血糖依存的に作用することが原因のひとつと考えられていますが、SGLT2阻害薬投与患者における糖尿病ケトアシドーシス(DKA)の発症機序はまだ不明な点が多く残っています。
1型糖尿病においては、ケトアシドーシス(DKA)の進行は早く、SGLT2阻害薬はその進行を後押ししてしまいます。そのせいもあって、SGLT2阻害薬を処方する場合は、熱や下痢、食欲不振などで体調の悪いときは、すぐにSGLT2阻害薬の服用を中止する必要があります。
▼低血糖が起きやすい糖尿病治療薬
・グリニド系(シュアポストなど)
・インスリン(ランタスXRなど)
・スルホニル尿素薬(アマリールなど)
▼低血糖が起きにくい糖尿病治療薬
・DPP-4阻害薬(ジャヌビア、トラゼンタなど)
・SGLT-2阻害薬(デベルザ、フォシーガなど)
・ビグアナイド薬(メトグルコなど)
・チアゾリジン薬(アクトスなど)
・α-グリコシターゼ阻害薬(セイブルなど)
▼SGLT2阻害剤とは?
SGLT2阻害剤は、比較的安全で質の高い血糖コントロールが期待できる薬剤です。体重の減少効果が特徴で、日本よりも肥満の多い欧米で注目度が高い薬です。HbA1cを下げるレベルはDPP-4阻害剤と同じようなレベルと言われ、食後血糖値も空腹時血糖も全体的に下げるため、血糖値はインスリンを使った時に近い挙動になります。低血糖を発症するリスクが少ないのもDPP-4阻害剤と同様です。最も適する糖尿病患者のタイプは“肥満でインスリンの分泌が比較的保たれている患者”ということになります。逆に、痩せている人や高齢者には注意が必要です。
副作用で気をつけなければいけないのは、尿路・生殖器感染症です。排泄される尿が糖分を多く含むようになるので、細菌が繁殖しやすくなります。膀胱炎、尿路感染症、膣カンジダ症といった副作用が現れることがあります。その他の副作用としては、発熱、頻尿、排尿痛、陰部の腫れやかゆみ、脇腹や背中の痛みなどが報告されています。
▼あらためて脚光が当たるSGLT2阻害剤
SGLT2阻害剤については、血糖降下作用や体重減少効果だけでなく、心血管イベントのリスク減少といった複合的な効果が明らかになりつつあります。2015年9月、ストックホルムで行われた「欧州糖尿病学会」において、エンパグリフロジン(ジャディアンスの有効成分)で心血管死亡率は38%も減少したという大規模試験の結果が発表されました。いま、欧米ではあらためてSGLT2阻害剤に脚光が当たっています。
大規模試験の結果でエビデンスが出てきたこともあり、日本糖尿病学会は2016年5月に「SGLT2阻害薬の適正使用に関するレコメンデーション」の改訂を行いました。改訂の結果、高齢者でも適応可能と考えられる対象患者数が拡大しています。
SGLT2阻害薬は、直接的なインスリン分泌促進作用を持たず、体重減少やインスリン抵抗性の改善も期待できることが特徴です。肥満度が高い欧米では、病態に適しているということで高評価ですが、日本では“DPP-4阻害薬”に押されています。2016年の資料によれば、国内のSGLT2阻害薬の処方率は処方箋ベースで2〜3%程度だということです。日本では、圧倒的なDPP-4阻害薬の勢力に立ちすくんでいる状態ですが、臨床試験結果からの逆転はあるのでしょうか。
▼スーグラとフォシーガ
SGLT2阻害剤「スーグラ」のライバルは「フォシーガ」で、売上ではこのふたつがツートップです。2016年の時点では、一位の「スーグラ」と2位の「フォシーガ」の間には約5億円の差がありましたが、2017年第1四半期の段階で29億円vs26億円、その差3億円と拮抗しています。近いうちに「フォシーガ」の逆転があるのかもしれません。
▼SGLT2阻害剤3強時代
SGLT2阻害剤市場のシェア争いは、「スーグラ」「フォシーガ」「ジャディアンス」の3製品に絞られてきました。現在首位の「スーグラ」を「フォシーガ」が猛追。「ジャディアンス」も新規糖尿病患者を増やして、迫っています。市場全体としても拡大傾向で、2018年度は1000億円が視野に入っています。
製品名 | スーグラ | フォシーガ | ジャディアンス |
---|---|---|---|
2016年売上 | 95億円 | 78億円 | 41億円 |
2017年予測売上 | 117億円 | 110億円 | 110億円 |
▼主なSGLT2阻害剤
▼SGLT2阻害剤として、初の1型糖尿病の適応を取得(追記:2018年12月)
2018年12月、SGLT2阻害剤「スーグラ」に【1型糖尿病】の適応が追加されました。国内のSGLT2阻害剤としては、初めての適応取得です。
1型糖尿病は、膵臓にあるβ細胞と呼ばれるインスリンを分泌する組織が、壊れてしまっている状態の疾患です。インスリンが不足するため、血糖が高くなってしまうので、基本的にインスリン注射を打って治療します。しかし、インスリン治療は、長期的に体重増加が懸念されることや、インスリンの投与によって低血糖を起こすリスクがあることから、血糖コントロールが上手くいかない患者が少なからず存在していました。
SGLT2阻害剤の「スーグラ」はインスリン非依存的に血糖を下げるので、低血糖が起こりにくく、インスリンとの併用で総合的な血糖降下作用が期待できます。
1型糖尿病患者で「スーグラ」を使用出来るのは、インスリン治療を行っていても充分な血糖コントロールが得られない患者(成人)のみです。インスリン製剤と併用することで、両薬剤の相加効果によって、血糖降下作用の増強と体重減少が期待できます。「スーグラ」は、あくまでもインスリンの代替品ではなく、インスリンを減量して(1日15%の減量が推奨値)、血糖降下作用を相加的に補うための薬となります。1型糖尿病患者に「スーグラ」投与する場合は、インスリンを中止しないように、患者にしっかりと説明する必要があります。また、SGLT2阻害薬の特徴として、尿量が増えて脱水することがあるため、水分摂取を心がけることが大切です。
【1型糖尿病患者の用法用量】
インスリンとの併用で、成人1日1回50mgを朝食前又は朝食後に投与。なお、効果不十分な場合は、経過を十分に観察しながら1日1回100mgまで増量可
▼広告のキービジュアル
広告のビジュアルに登場するのは、鷹匠の大塚紀子さんと鷹。非常に面白い起用です。
以前、TVで大塚紀子さんのドキュメンタリーを観たのですが、過酷な鷹の世界で奮闘する彼女が印象に残っています。「人と鷹はパートナーであり相棒です。鷹は自分を映す鏡のような存在」と語っていましたが、長く治療を続けていかなくてはいけない糖尿病治療薬にぴったりのキャッチコピーですね。鷹もカッコイイ。ただ単に動物をマスコット的に使っただけの広告とはひと味違う、印象に残る広告です。
一般名:イプラグリフロジン L-プロリン
製品名:スーグラ錠25mg,50mg
SGLT2阻害剤/選択的SGLT2阻害剤(2型糖尿病治療剤)
アステラス
MSD